小鳥遊リョウ 十五歳
その日は不意にやって来た。
「リョウくん!リョウくん!」
俺を手招きする悠の横には、自転車を押したショウが立っていた。
ショウは当然、高校生になっていた。自転車で通うそこは、俺たちの通う中学の先にある。
「わたしたち、付き合うことになりましたっ」
苦節二年。想い続けて実った恋。悠はとても晴れやかで、可愛かった。
「へぇ、おめでとう」
ポカリ、脇腹をまた殴られる。
「反応薄い〜」
他になんて言葉をかけたら良いのか、俺は分からなかった。
「兄貴、気をつけろよ。すぐ殴ってくるから」
「やめてよ、ショウ先輩にそんなことしないよ」
「怒らせないように気をつけるよ」
ショウは焦る悠を見てくすくす笑った。弟の俺が言うのも変だけど、爽やかで完璧だった。
次の日。
学校に向かう途中で悠と一緒になった。
道中、ショウの話ばかりしていた。
悠の恋物語の中に、俺はいつでも居ない。その認識が俺を傷めつけてくる。
「そうだ、噂で聞いたよ〜三組の楓ちゃんを振ったって」
悠とはクラスが別れた。悠が自分のクラスの教室に入る直前、そう言って来た。
「リョウくんに、お似合いなのに。勿体無い」
他に好きな人がいるんだよ、とは勿論言わない。
「少しは、振られる側の気持ちも考えろよなっ!じゃあまたね〜」
脇腹を一際強く殴って、言いたいだけ言って悠は去ってゆく。
振られることすらできないまま、終わってゆく恋を抱えた俺を残して。




