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小鳥遊リョウ 二十六歳
その日俺は、駅である人と待ち合わせしていた。
精神科病棟入院中に出逢った仲畑美代。
こちらに近づいてくる彼女を見ても、俺は一瞬気づかなかった。
入院中は腰まで届く長さの茶髪だったのが、黒髪のショートカットに変わっていたからだ。
「雰囲気、変わり過ぎやろ」
俺はそれが誰のオマージュなのかまでわかったが、敢えてツッコミはしない。
「意外と似合うでしょ?」
サラッと髪を流して見せて、美代は微笑む。
俺は喪服、美代は高校の制服でブレザーを着ていた。この日は入院時の友人の告別式だった。
笑顔で退院していった彼女を今も覚えてる。名前は凪志摩子。
俺たちはどちらからともなく手を握って歩き出した。誰かと繋がっていないと、自分も消えてしまいそうな恐怖。
「三坂さんとは……」
「音信不通。そっちは?」
「俺もだ」
三坂凛は、美代の想い人。ショートカットのよく似合う、溌剌とした女性だった。
三坂のことを思い出したからか、美代の手に力がこもる。俺は健気にそれを支えたくて、いや、逃したくなくて、指を絡めた。
目の前には、あの日と同じ壮大な夕焼けが広がっていた。何度同じ景色に縋れば、気が済むんだろうなと、他人事みたいに思った。




