第1話 いつか誰かのために残す
2019/5/13 編集追記
2019/5/17 編集追記
2019/5/20 編集追記
長い冬が終わって心も暖かくなってきたこの春、生き物は活発になり始めた。
僕ら人間もその枠から外れず自然と元気になってくる。
春という出会いの季節を迎えた僕は今学生をやっている。
そして学校のグラウンドで部活をやっている部員たちを見ながら一人で日記を書いていた。
何と平和なんだろうか。そう思いながら僕は日記に徒然と文章を書き始めた。
僕は普通過ぎて普通が特徴といわれているthe普通高校生、通称「凡才」だ。
周りからは「おぼん」って呼ばれている。
「凡才」の「凡」にちなんだあだ名らしい。
もしかしたらこれをいじめなのではないか?と思う人もいるかもしれない。
でも僕はこのあだ名が気に入っている。
なぜかって?
『当たり前のことを当たり前にできる』
これはとても難しい。でもそれは僕の得意分野だ。だからこのあだ名を僕は喜んで受け入れている。
ここで日記を閉じる。
僕の文章執筆能力は低いが日記を書くのが好きだ。理由は自分の考えやそのときに思ったことを書くことができるからだ。
今じゃSNSで自分の考えをつらつらかけるけど僕はこっちのほうが好きだ。
日記は他人に見られる心配がないし筆者も読者も僕しかいない。
僕の唯一普通じゃないところはこんな風に日記を常日頃書いている、ということかもしれない。
ちなみにこの日記はもともと家の押し入れの中からたまたま出てきたものだがなんとなく使い始めて暫く経つ。
「さて、書き終わったしそろそろいくか」
僕は今まで通っていた教室とは違う教室へ向かう。
今日から新学期、謎の「球体」が現れてから初めての春だ。
その「球体」はいきなり現れた。現れただけで特に何も変化はなくずっと空に居座り続けた。こんな不気味なものが浮かんでいるんだから当然人々の不安は募るわけだ。中には球体を神としてあがめる人や、球体の出現を地球滅亡の警告だという人も現れた。こうした混乱が膨れ上がるにつれて地球上の文明的な経済社会は着々と崩壊していった。
どこか引っかかる話だとは思うけれど事実そうなってしまったのだ。
ご都合主義にも程がないか?それとも運がいいのか。
異常のなかの普通。この世界は狂ってる。
新しい教室に着き、新しい席に座り一人静かに本を読み始めた。
これが平凡といわれる僕の静かな、いつも通りの生活だ。
朝の読書の時間は至福だし僕はとても気に入っている。
「おっはよー!!」
その至福の時間を邪魔する人物さえ現れなければの話だが…。
「おっ、おぼんくんじゃん!また朝から読書?おすすめの本なにかある?というかおぼんくん、君は私の隣の席だったっけ?」
と朝のテンションとは思えないほど機関銃のように喋る元気な少女が僕の隣に座る。
「やれやれ…朝から元気だね…
おはよう榊原。今日から新学期で教室も席も変わっただろ?
どうやら今年度最初の席は僕と榊原さんはお隣らしいね。
あー、それとおすすめの本ね…『風の歌を聴け』とかどうかな」
そう、彼女の名前は榊原舞。成績優秀、容姿端麗の完璧美少女だ。まだ付き合いは浅いけれどその完璧さは伝わってくる。たまに抜けてるな、と思うこともあるけど。
「おぼん君のおすすめなら面白い本に違いないね。
それにしても今回の新学期はなーんか起きそうな予感がする。それもすごい大きな出来事。そうだっていうのになんか最近頭が回らなくて…なんか色々忘れてる気がするんだよね。」
榊原でもそういうことはあるんだな。しかし何か起こりそうってなんだろうか…
ちらっと外を見る。
教室の窓から見える風景は平和そのものだ。
(ジリッ…)
何か起きそうな雰囲気は微塵もない。物騒な球体は相変わらず見えるけれど、それ以外はいたって平和だ。
(ジリッ…ジリッ)
「うっ、なんか今日は頭が痛いな…」
突然の頭痛に驚きつつもよくあることだと流した。
「おぼんくん大丈夫!?手を貸そうか?」
「いや大丈夫。それよりもそろそろ講堂にかなきゃ行けない時間だ。」
朝の読書をしていたら意外と時間が経っていたようだった。
新学期特有の学園長の言葉や生徒会長の話を聞きに講堂へと向かう。
なぜこんなにもめんどくさいイベントをやるのだろうか…と毎年思っているがこの風習がなくなる兆しは一向に見えてこない。やれやれだ。
「おぼんくん、そんな怖そうな顔してどうしたの?春特有の杞憂とか?それともやっぱり体の調子が悪いの?」
「なんでもないよ。うーんそうだな、新学期早々朝から長々と話を聞かされると思うと少しは気分が悪くなるものさ。」
春の杞憂か…
冒頭にも書いたが春といえば出会いと別れの季節だ。
僕も昔は普通に春を心地よく感じられていたはずなのに今はなぜか恐怖と不安しか感じない。
美しい満点の星空を見ると恐怖を感じる感情と似ていると言えばわかってくれる人は多いだろうか?
そんなことを考えているといつのまにか集会が始まっている。
「おぼん君、みて!生徒会長だよ…!相変わらず美人だなあ、私もああなりたいよ」
榊原は当然のように僕の隣にいる。まぁ気にしないでおこう…。
生徒会長佐々木綾香。
いかにも賢そうな鋭い目つきで学園の生徒たちを従える人物でありこの学園の生徒会長をしている。噂では佐々木はどこか大金持ちの社長令嬢らしく、その噂に負けないオーラを醸し出している。
(でも榊原も佐々木に負けないくらいの美人なんだけどなあ…)
とは言わず静かに生徒会長の話を聞いた。
ここから衝撃の展開が始まる。読者の皆さん心して読んでほしい。
「皆さんこんにちは。これから始業式を始めたいと思います。今日の予定をお話ししますね」
颯爽と語る佐々木を全校生徒が見守る。佐々木はそのまま話し続ける。
「突然ですが皆さん今ここで死んでください」
は?今会長はなんて言った?とんでもないフレーズが聞こえてきた気がするんだが…
突然の生徒会長からの殺害予告に周りの生徒たちもざわめき混乱状態に陥っている。
生徒会長でも頭がおかしくなることはあるんだな。でもさすがに全校生徒殺害予告は良くないと思う。当然だけど。生徒会って仕事が大変そうだし少しは休んでも頭を冷やしてほしいな。
なんてのんきなことを考えていると、隣の榊原は今にも泣きだしそうな苦しそうな顔をしていた。
「榊原大丈夫か…?」
「おぼん君、私とても嫌な予感がする。何か起きそうな予感はしていたけどまさかこんな形で予想が的中するなんて…」
「榊原…?何か知っているのか?全校生徒殺害なんてさすがに無理だよ」
「ううん、全校生徒殺害どころの話じゃないんだよ。私、忘れてたことを少し思い出したの。
これはそんな生易しいものじゃない。」
「世界が終わるんだよ」
「えっ」
世界が終わる?ついに榊原まで頭がおかしくなったか。でもこんな必死な顔をする榊原は初めて見た。
佐々木の言葉、榊原の言葉を考える。
正直何が起こっているのかわからなくて頭が真っ白になる。だって今日はただの始業式だぞ?
そう思った瞬間会長は懐からボタンのようなものを出していた。
「皆さん、準備はよろしいかしら?それでは永遠にさよなら」
ボタンが押され、今までに聞いたこともないような爆発音がした。
あれ、これ僕今ここで死ぬんじゃないか?
いまさら僕はとんでもないことが起こったことに気づいた。
「遅かったか…おぼん君、ごめん失敗した」
「失敗?榊原何を言ってい…」
こういいかけたところで世界は終焉を迎えた。全校生徒殺害どころの話じゃない。
なんなんだこれ、何が何だかさっぱりわからない…
目の前が白い光に包まれる。
世界が終焉を迎えるということは当然、僕も死ぬってことだ。
僕は物語の主人公でもなんでもない。周りで起こる出来事にただ従うのみの「凡人村人A」なのだ。
今の僕には何がなんだかさっぱりわからない。
僕は今日も一日徒然なるままにこの記録を残す。
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