第2話 闘争の先に
2019/5/21 編集&追記
世界が終焉を迎えてからどのくらい時間が経ったのだろうか…
おそらく一瞬の出来事なのだろう。
僕は白い世界でいつかどこかの夢を見ていた。楽しいような嬉しいような、そしてとても心が苦しい。春の新鮮さ、夏の瑞々しさ、秋の哀愁、冬の孤独感全てが混ざったような、そんな気持ちだった。
「君はこの世界で何を見る?」
ん、誰だろう…僕に語りかける声が聞こえる。
(君は誰だい?)
まるで存在自体にモヤがかかったかのような、本当は存在していない虚構のもののように思える。
でもこの声、どこかで聞いたことがある気がする。この声を聴くと安心するような、何か大切なことを忘れてる気がした。
声に魅入られているうちに気づくとだんだんと白い世界の中で僕は手足の感覚を取り戻していく。
「はっ…ここは…?」
目覚めるとそこは白い、いや、真っ赤な世界だった。
あたりは灼熱の炎で燃えている。
熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。
それはそうだ。大爆発によってこの町は、いや、世界が終わったんだから目の前に地獄が広がっているのは当たり前だった。
グシャ…グシャ…
物が燃える音はあまりにも不快で吐き気を催す。
辺りは火の海だった。もう一度僕はあたりの状況を確認する。
「そうか、僕はあの爆発に巻き込まれたんだ…」
と言葉に出してやっと現実感が戻ってくる。
というより僕はなんであの爆発に巻き込まれて生きているんだ…?
たまたま運が良かったにしては運が良すぎる。そういえば榊原は…?僕の周りには人の気配がないし悪臭による不快感が増してきている。
この悪臭はモノが燃えているというよりもっと危険のものだと本能が告げる。
「榊原…!!いるか!?おーい!!」
っていないか…。
少し頭が回ってきたからか、自分がたっている場所の異変に気づき始める。
「なんかすごい弾力がある…?土じゃない…?」
次の瞬間僕は全てを理解する。この悪臭の招待もわかった。
これは全部人が燃えた臭いだ。
僕は正気を失いそうになった。
「ヒッ…人だ…人だ人だ人だ人だ人だヒトダヒトダヒトダヒトダ人人人人」
辺り一面火の海で気づかなかったが地面には人がたくさん倒れていた。まるで人の海のようになっている。
ついに僕は発狂した。
「あっあっ…ああああああああああぁぁぁ…!!」
そこから先の記憶はない。走って走って走りまくった。火のない方へ、火のない方へ。
僕はまだ走る。
息なんてもうしてないかもしれない。いや、してる余裕なんてなかった。
ここはそう、やはり地獄とたとえるのが一番あっていたしここは地獄そのものだった。
爆発のせいか人が以前までここに住んでいたという気配が全くない。
人も建物も人類の文明社会を示すものも何一つ消え去ってしまったのだった。
この世が地獄であるならば僕は生者ではないのか?
いっそのことこんなに辛いなら死人であったほうがマシかもしれない…そんなことすら思ってしまうほど僕の精神は参っていた。
「!?!?」
バサアアアアア。
「痛い、痛い痛い…」
ついに足が言うことをきかなくなったか、僕は何かに躓いて倒れた。
(うぅぅ…うぅぅ…)
「くっ、なんの音だ…もうこれ以上は動けない」
次の瞬間僕の行く手を阻んだ正体をこの目で見る。
それは何と倒れ込んだ僕の足を掴んだのだ。
「は…?」
信じられなかった。限界を迎えていた精神が限界を突破した。
こんなことあってはならないはずだから。
なんと僕の足を地面から生えてきた無数の手が僕を地面に引き摺りこようとしていた。
「うわああああああああ、やめて…助けて…!!!」
今のこの状況がホラー映画だったらまだどれだけ良かっただろうか。
そんなことを考えるくらい僕はもうこの生を完全に諦めていた。
肉塊で敷き詰められた炎の海の地面へ僕は引きずり込まれる。
地面から生えた無数の手が僕を地獄の底へといざなう。
「さよなら」
僕は今生別れを告げる。
と、その時
「おぼんくん手を伸ばして!はやく!」
(へ…?)
僕はもう生を諦めているというのに死に抗いたくなるような、夢でも見ているかのような声を聞いた。
「榊原…!?」
僕は手を伸ばしていた。
僕は榊原の手を掴む。
次の瞬間には僕は地面からの手から逃れ地上に座り込んでいた。
「よかったー!おぼんくん、ほんと危機一髪だったね。ギリギリ間に合ったよ」
「榊原なのか?ほんとに榊原か…?僕は誰もいなくなった火の海からただひすらに逃げててそれから…」
「おぼんくん落ち着いて!今はもう大丈夫だから。」
本当に榊原はここにいて僕を助けてくれたらしい。榊原が目の前にいること自体嘘のようだ。
「これは一体何がどうなってるんだ…?いきなり爆発が起きてあたりが火の海になって誰もいなくなって挙句の果てに無数の手が生えた地面に飲み込まれそうになって…そういえば爆発する前に何か言ってたよな?何か知ってるのか?」
「ううん…私も細かいことはよく分からない…というかまだ完全に思い出せないんだ。もう少しで思い出せそうなんだけど。でも私たちが生き残ったことは確かだし、あの球体は爆発させちゃいけなかったことも確かなの。あの球体の中に入っていたのは…」
「入っていたのは?」
その時榊原の顔が恐怖に変わり僕の手を引いて走り出した。
「榊原どうした…!?」
「早く逃げて!走るよ…!」
「まて…!どうしたんだ…!」
気になって後ろを見る。
するとそこにはこの世のものとは思えない異形がニヤリと笑みを浮かべながら僕達を全速力で追いかけていた。
逃げ惑う僕たちを見て楽しそうに追いかけてくる異形。
こんなものから逃げられるわけがない。
「ヒッ…」
「うわああああああああ……!!」
絶体絶命のこのピンチを乗り越えなくては今ここで僕らは死ぬ。




