35話ダン
35話ダン
「っぷはぁ!」
温泉が鼻に入ってむせ返り目が覚める、とりあえず服を脱いで温泉に再び浸かりながら周りを見渡す。
湯気でよく見えないが風呂は相当大きくて、のびのびと泳げるくらいだ。 なんだか騒がしい喋り声が聞こえてくる。 湯気の向こうから姿を現したのはさっきの隊員達だ。 全裸でこちらに向かってきて桶で体を1度流すと次々と湯船に浸かってきた。
温泉は一気に騒がしくなり、隊員達の大きい声が飛び交っている。
「よお、大丈夫か?」
俺を温泉まで投げ飛ばした頭に1本の髪の毛も生えてないムキムキの男が声を掛けてきた。
「さっきはありがとうございます。 あのまま地面にぶつかってたら死んでました」
「良いってことよ、隊員を守るのは俺の仕事だからな、改めて俺が大地の団隊長のダンだよろしくな」
「よろしくって事は合格って事ですか?」
「合格? ああ、入団は基本入りたい奴は全員入れるようにしてるけど」
は? まさかあいつ! すぐにマイトを探し睨みつけると手を合わせて顔を上下に揺らしている。 絶対騙した償いはさせるからな命懸けだったんだぞ。
「どうしたぼーっとしてのぼせたか?」
「いえ、全然です。 むしろこの温泉入ってると力が漲ってきますよ」
「それはガイア山の魔力がこの温泉に濃く出ているからな、大体の傷はここに入れば治るさ」
「すごいですね、じゃあこれから毎日入ろうかな」
「おう! 仕事と訓練の後の風呂は格別だぞ」
「そういえば大地の団は普段はどんな事をしてるんですか?」
「大地の団は主に建設関係の仕事をしているな、温泉を他の地域に引いたり、家を作ったりだな、他にも青空の団は船を使った貿易、光の団は街での商品の売買、影の団と太陽の団は例外だがな、もちろん、それぞれ街の警備はするけどな」
「なんかもう、1つの大きな会社みたいな感じですね」
「確かに、そうかも知れないなじゃあそろそろあれ行くか!」
「あれってなんですか?」
「まぁ見てな!」
ダンは立ち上がりさすが団長といわんばかりの立派な物をぶら下げながら団員達に向かって叫んだ。
「大地の歌行くぞ!」
「おう!」
隊員達は一斉に拳を突き上げた。
「大地の心! 魂に響かせろ〜〜このう〜た〜勝利を信じ! 共に行こう仲間と共に〜〜」
隊員達の盛り上がりは最高潮に達し、何度も大地の歌を繰り返し歌い、次第に桶の中に肉やら魚やら豪華な料理が風呂に運びこまれ宴が始まり、夜通し宴は続いた。
「1日目から災難だったな疲れた、マイトさんいつもこんな感じ何ですか?」
「基本は、仕事が終わった奴も訓練が終わった奴も夜にはこの温泉に集まって毎日宴をしながら食事を取って寝たい奴は部屋に戻って寝て騒ぎたい奴は騒ぐって感じかな」
「そうなんですか、今すぐ寝たいですよ俺は」
「顔に寝たいって出てるよ、塔の中のお前の部屋に案内するから付いて来い」
「あ!!」
「どうした!!」
「俺の刀! 森の中に置いてきたままだ! マイトさんちょっと待っててください! すぐ取ってきますから」
「おう、気おつけろよ、迷わないようにな」
俺は森の中に走り出した、それは空が白んで来た頃だった。




