ep.24 グッド!モーニング
ここは……。
日が覚める。
白い天井に、モダンな照明器具。
どうやら私、眠っていたみたい。
……そうだ。
三間峡のジジババに頂戴した暴走船がようやく港に着いて、奇跡的にパパとも合流できたんだ。
でも、パパが両手をぶんぶん振って、全力疾走で出迎えてくれた姿が目に入った途端、張りつめていたものが一気にほどけて。
安心感で、ガっと疲労が襲いかかってきて、私、失神するように倒れてしまっ――。
――ここどこっ!
私はバッと体を起こす。
その瞬間跳ね上がった掛け布団からはお線香の香り……おばあちゃん家みたい。
私は部屋中を見渡す。
なんだか、すごく違和感。
なんだろう、至って見慣れた普通の部屋なんだけど。
……わかった、この部屋の雰囲気!
めっちゃ和! わ! WAなの!
六畳ほどの部屋いっぱいに畳が敷かれ、私はその上に敷かれた布団で寝かされていたらしい。
それに、壁際にはお仏壇。
反対側は窓になっていて、お庭の様子が見られるようになっている。
砂利、植栽、竹垣、枯山水。
赤く色づいた紅葉が何とも綺麗なこと。
カタン
静寂の中に響く、鹿威しの音。
……ここ、アルメシア王国ですよね、
なんたるもののあはれ、
わびさびなのっ!
三間峡といい、この部屋といい、日本の要素が取り入れられすぎなのでは……!?
それと、もうひとつの違和感は服装だ。
薄汚れたマントと黒い上下の衣装、それから泥まみれの靴は脱がされていて、代わりに薄い浴衣を着せられてる。
久しぶりの裸足、サイコー!
誰が着替えさせてくれたんだろう。
パパじゃないことを祈って、と。
私はふと隣をみて、もう一組、布団が敷かれてあるのを見つけた。
ただ、抜け殻になってる。
きっと、レオンだ。
私もレオンも昨日は一睡もしていなかったから、疲れと睡魔には勝てなかったんだろうな。
私はグッと伸びをして、立ち上がる。
障子で仕切られた戸を引くと、そこには薄暗い廊下か続いていた。
私はそろりと廊下に足を置く。
ひゃい、床が冷たいや。
「おぉい、パパぁ、レオン~」
口に手を当て、そっと呼びかけてみる、けどぉ。
人っ子一人、見当たりませんがな!
もうレオンもタチ悪いなぁ、置いていかないでよ。
廊下にはいくつか、同じように障子戸がいくつも並んでいる。
でも、博士の家を訪れて以降、この世界で部屋を覗く行為が怖くなってしまって。
だって、何が待ち構えているか分かったもんじゃないでしょ?
私は恐る恐る、廊下を進んでいく。
ウィーーーーーン
……ん?
何この、さっきまでの風流とは打って変わった機械音は。
――Personal Morning Assist… Activated.
「へ?」
一歩踏み出した足元が、ガコンッと音を立てた、
かと思うと――
「うわぁぁぁぁっ!?」
きゅ、急に床が動き始めたんですけどぉぉぉっ。
廊下そのものがエスカレーターのような、あの、都会の大きな駅とかで見かける、なんだっけ、あれ。
そうだ、歩く歩道!
無機質なグレーのアルミニウムの素材へと姿を変え、私はあたふたしたまま前へ前へと運ばれていく。
「ちょっ、待っ――」
ブンッと勢いよく角を曲がり、私はもはや、されるがまま。
まさかの九十度、誰の仕業か知りませんが、改善の余地がありそうですねぇっ!
さらに進み、階段へ差しかかった、その瞬間。
ガコンっ
急にストップする。
一体、なんなのよ、もう。
階段は完全なるエスカレーターだ。
なにこれもうっ、勝手に進んでいいやつぅ?
ガシャコンッ!
……どうやら違う模様。
でも、なかなか床はさっきみたく作動することはなく、ただ、ここで壁の中からロボットアームが左右に飛び出した。
「何っ!?」
なになになになにっっっっ!?
何が始まるってい――モゴッ
なんと、右のアームが顔をゴシゴシと洗い始める。
雑ゥっ!
痛いし、冷たいし、最悪!
払いのけようとするとお次は、左のアームは歯ブラシを口へ突っ込み、
「んがっ、んんんっ!?」
容赦なくシャカシャカシャカシャカ。
やるなら、もっと丁寧に磨いてよぉぉぉっ。
口をゆすぐ暇もなく、今度は浴衣をシュルルッと脱がされ、
「ちょっ、ちょっとぉぉ!?」
エッチぃぃぃっ
次の瞬間には、ふわっと乾いた洗濯済みの黒い上下の服が飛んできて、ものすごい速さで着せ替えられる。
続いてブラシが現れ、髪をとかされ。
はい、二つ結び完成~。
私の存在忘れてませんよね、とでも言いたげな感じで剣がニョッコリと姿を現し、腰ベルトへ結ばれる。
はい、靴がスポンッと入って、最後にマントが肩へ掛けられたらぁ?
はい、アルメシア王国版世良てんこ、テネル・ファリンの完成でございますっ。
なんなのよ、一体。
まじで朝から気分悪いわぁ。
小さい時はこういうの憧れてたけどね、寝ぼけてても、意識なくても準備できるぅって。
便利っちゃ便利だけど、痛いし、雑だし、出荷される前のお人形さんかっての。
あーだこーだ言ってると、目の前の扉がひとりでに開いた。
その隙間から――
ひょいっと投げられたパンが、ちょうど私の口元へ滑り込む。
「むぐっ!」
……なるほど?
まだ朝の準備は終わってなかったっつぅことですか。
ああっ、もうっ、くやしぃ。
ちょうどブツブツ文句を言ってたせいで、口が開いてて、ついパンをキャッチしちゃった。
しかも、焼きたてでなかなかに美味。
そして。
「……おっ! てんこ、目を覚ましたか! おはよう」
部屋の向こうでは、湯気の立つ茶飲みを手にするパパとレオンが、まるで何事もなかったかのような顔でこちらを見ていた。
「……おはよー」
私はぎこちなく、挨拶を返――
……いや、いやいやっ、
いやいやいやっっ
どうかどなたか、説明を要求いたしまぁぁぁあすっ!
最後まで読んでいただき、誠にありがとうございます。
楽しんでいただけましたでしょうかっ。
次回、ep.25は【スキッパ港、次なる計画】です。
ぜひ、お手すきの際に、よろしくお願いいたします。
今後とも、どうぞよろしくお願いいたします♪




