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キラめき一閃!  作者: チーム奇人・変人
2→3年 春
62/66

春のあけぼの⑤

 メイの内気な性格を治すために、ワタシは彼女に自分をアピールするために毎日SNSで何らかの発信をするように、とアドバイスした。

 

 とりあえず最初はツムとトモっちの協力のもと、カワイイ服を着せてルックブック動画をアップさせた。

 元々愛らしい顔立ちをしている上に、身長が高くてモデル体型と言っても差し支えのないスタイルをしている彼女にとって、それはうってつけだった。


 モデル志望のトモっちさえもうらやむメイのルックブック動画は、ものスゴく好評だった。


 毎日たくさんのヒトが視聴して、みんな<カワイイ>とコメントしてくれる。メイはそれに応えていく。そんなこんなしているうちに、彼女の中に自己肯定感が芽生えはじめてきている……ハズだった。


 でもやっぱり、本番にはまだ弱いのかもしれない。


「メイ、もっと声出してッ!」

「は、ハイッ!」


 ワタシの(げき)に応じるものの、まだぜんぜん声が出せていない。


「小手ェェェ! ()ェェェェェンッ‼︎」


 こちらの事情などお構いなく、相手はどんどん攻撃を打ちこんでくる。


「ひぃぃぃッ‼︎」


 メイは情け無い声を上げながら、まるで虫でも払うように竹刀を振り回している。


「イカンよ。そんなんじゃ当たらんわい」


 まるでダンスでも踊るように、セーラはメイのデタラメな攻撃をスイスイとかわしながら間合いをつめ、


「ほい、小手じゃッ‼︎」


 スパァァァァァンッ‼︎


 鋭い一撃をメイの小手に浴びせる。


 審判団は一斉に白い手旗を掲げる。


「あうぅ……」


 なすすべもなく一本取られてしまったメイは、今にも泣き出しそうな声を上げてガックリと肩を落とす。


 ――このままじゃ、ダメだ……


 全力を出して、それでも負けてしまったのならそれは仕方ない。だけど、何もできないまま――何の成果も得られないまま終わってしまったら、きっとメイは後悔してしまう。もしかしたら、自分を責めて剣道を辞めてしまうまで思いつめてしまうかもしれない。


 ワタシは、なんとか奮起してもらうために、


「メイ! このまま負けたら、今度のルックブック動画は水着姿にさせるからねッ‼︎」


 そう言って発破をかける。


「えええええッ⁉︎」


 開始線の前で竹刀を構えながら、メイが困惑の声を上げる。


「君、私語は慎むように」


 当然、ワタシは審判から注意を受ける。

 だけど、それでイイ。メイが少しでも戦う気になってくれるのなら。


「小手あり。2本目ッ!」


 そして試合が再開する。


「イヤァァァァァァァァァァッ‼︎」


 直後、メイがこれまで聞いたことのないくらい大きな声を発する。


 それは悲鳴にも近い金切り声で、耳をつんざくような声量で、思わず耳をふさぐヒトもいるくらいの大ボリュームだった。

 だけど、それは気合いのかけ声なのか、はたまた水着姿になるコトに対しての拒否感の表れなのかはわからなかった。


「ハアァァァァァッ‼︎」


 メイは、大声量に驚いて動きの止まったセーラの竹刀を弾き、


()ェェェェェンッ‼︎」


 長身を()かした強烈な一撃を相手の頭上に振り下ろす。


 キィィィィィンッ‼︎


 セーラはとっさに後ろに下がり、竹刀は面の金具部分をかすめる。


「あぶなッ! 間一髪じゃった」


 相手の口から思わず安堵の言葉がもれる。

 それくらい、メイの攻撃には圧がこもっていた。


「水着はぁぁぁぁぁ」


 メイはさらにセーラの竹刀を跳ね上げ、


「イヤァァァァァッ‼︎」


 奇声を発しながら追撃をする。


「なんなんじゃ? 急にやる気ぃ出しよって」


 セーラは後ろに下がりながら攻撃をさばくけど、メイの気迫に押されて防戦一方だった。


「キィェェェェェッ‼︎」


 狂気的な声を上げながら攻撃を繰り返すメイ。それはデタラメで、とても一本につながるものにはならないけど、それでも彼女は自分から前に出るようにはなった。


 まあ、ある種のショック療法で一時的なものではあるのだけど……。


 ビィィィィィッ‼︎


 果敢に攻め続けたけど、結局一本も奪えないまま試合終了を告げるブザーが鳴り響く。


 ガックリと肩を落として開始線の前に戻るメイ。


「一本勝ち。勝負ありッ!」


 主審が白い手旗を掲げて告げる。

 この時点でスコアは1-3。つまり、大将戦の結果を待たずして二中の敗退が決定した瞬間でもあった。


「ふぇぇ……ごめんなさぃぃぃ」


 その責任を感じてか、メイは泣きながらこちらに戻ってくる。


「まだ試合は残ってるよ。最後まで応援しよ」


 ワタシがそう言うと、メイはコクリとうなずいた。


「メイは最後まであきらめずに戦い続けた。だからちゃんと胸を張って」

「センパイ……」


 そう言ってはげますと、メイはしゃくり上げながらコクリとうなずいた。


「それじゃあ、水着になるのは無しで――」

「ああ、それとコレは別だから」

「しょんなぁぁぁぁぁッ‼︎」


 ワタシが冷酷に断言すると、メイは再び泣き出してしまう。


「ウソだよ」


 ワタシはクスッと笑い、すぐにフォローするのだった。

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