春のあけぼの④
続いて次鋒戦。
こちらはツムで四中は栗田。新2年生同士の対戦となる。
一礼して開始線の前で蹲踞する両者。
「はじめッ!」
「「小手ェェェェェッ‼︎」」
開始早々素早い動きで打ち合う。どちらも有効打にはならなかったけど、まさに電光石火と言える疾さだ。
栗田というコもそうなんだけど、四中の有望な3人組――栗田、矢島、下田はツムと同じくらい小柄で、しかも3人とも姉妹かと思うほど外見が似ていて、遠目からだと判別できないくらいだ。
その中でも特にこの栗田という選手は頭ひとつ抜きん出ていて、矢島と下田はその時々によって交代しているのに対して、栗田だけは1年生の時から不動のレギュラーだった。
ツムと同じく、俊敏な動きで相手を惑わし、手数で圧倒する部類で、そんな2人が竹刀を交えるこの試合は、よりスピーディーでスリリングに感じられる。
同部類の2人の試合は手数こそ多いもののどちらも決定打とはならないまま、試合は終盤に差しかかる。
「小手ェェェェェッ!」
ツムが相手の小手に照準を定めて竹刀を振り下ろす。
栗田はそれに反応して相手の竹刀を弾き、さらに面を目がけて竹刀を振り上げる。
ツムはそれに応じて同じく面を目がけ、竹刀を振り上げた。
しかし――
「小手ェェェェェッ‼︎」
栗田はすぐに照準を小手に変えて、そこに素早く竹刀を振り下ろした。
パシィィィィィンッ‼︎
まるで蜂が刺すかのような鋭い瞬撃がツムの小手を捉え、審判は一斉に白の手旗を挙げた。
――強い!
ワタシは栗田というコに関して、率直にそう思った。
四中の2年生の中で矢島と下田は固定されずに交代で試合に出ているけど、この栗田だけは1年生の時から不動のレギュラーなのだから、やっぱりその実力は相当なものだ。
年下とは思えないくらい沈着冷静で、スゴく熟練された剣道をするコで、なんとなくシーコに近いかもしれない。
そして次鋒戦は、そのままタイムオーバーを迎えて試合終了。
ツムは栗田に一本負けを喫してしまった。
「ゴメン。せっかくミカ姐が勝ったのに……」
試合前とは打って変わって、沈んだ面持ちで帰ってくるツム。
「まだはじまったばっかだよ。応援しよ」
ワタシがそう言うと、ツムはコクリとうなずいた。
続く中堅戦。
こちらはトモっちで、四中はまたも2年生の下田。
身長とパワーで圧倒しているトモっちに対して、下田はやっぱりスピードを活かして手数で対抗している。
正反対のタイプ同士の対戦も見どころが多くて、どちらに転ぶかわからない互角の勝負が繰り広げられる。
試合が動いたのは終盤だった――
小手を狙って放ったトモっちの一撃が相手にスカされ、空を切る。
その隙を見逃さず、下田は面を狙うべく竹刀を振り上げる。
トモっちがそれに応じて竹刀を振り上げた瞬間、
「胴ォォォォォッ‼︎」
下田は竹刀の軌道を変えながら体を前に深く沈めこみ、ガラ空きとなったトモっちの胴を一閃する。
ガシィィィィィッ‼︎
トモっちが竹刀を振り下ろした時には、もう相手は彼女の横を通り過ぎていた。
審判が一斉に白い手旗を挙げる。
鮮やかな抜き胴だった。
その後、挽回しようとトモっちは懸命に攻め続けたけど、下田のトリッキーな動きに翻弄されたまま時間切れを迎えて試合終了。
結局一本負けとなってしまった。
これで1-2と、四中に逆転を喫してしまった。
「すまねぇ……」
戻って来るなり、気落ちした声でトモっちがつぶやく。
「まだ試合は決まってないよ。今は応援しよ」
ワタシがそう言うと、トモっちはコクリとうなずいた。
続く副将戦。
こちらはメイで、四中はセーラこと瀧川星羅だ。
この試合もさっきと同じで、体格で大きく上回っているメイに対して、相手は小柄でスピード重視のタイプだ。
試合がはじまると、予想通りセーラが積極的に攻撃を仕掛けてきて、そのスピード感は相手に息つくヒマも与えないくらい目まぐるしいものだった。
とはいえ、それを考慮してもメイの動きは硬過ぎに思える。
――やっぱり緊張してるんだ……
元々内気な性格な上に、四中と戦うのははじめてだったハズだ。それに加えて、ここで負けたら二中の敗退が決定してしまうというプレッシャーが重くのしかかっているんだと思う。




