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キラめき一閃!  作者: チーム奇人・変人
2→3年 春
60/66

春のあけぼの③

 これまで4試合を消化して、ワタシたち二中は4勝0敗だ。

 そして、最後に対戦する四中もまた、4勝0敗。つまり、この直接対決を制した方が優勝となるのだ。


 正念場となるこの試合もこれまでと同じ、

 先鋒、ワタシ――

 次鋒、ツム――

 中堅、トモっち――

 副将、メイ――

 大将、シーコ――

 というオーダーに決定した。


 対する四中は、

 先鋒、テンテン――

 次鋒、栗田――

 中堅、下田――

 副将、セーラ――

 大将、リンリン――

 というオーダーだった。


 ワタシは初めて、テンテンと対戦するコトとなった。


「アナタと竹刀を交えるのを、ずっと心待ちにしておりましたよ」


 コート中央に整列すると、テンテンこと菊池(きくち)天佳(てんか)がかすかな笑みを浮かべて話しかける。


「ワタシも、ずっと楽しみにしてたよ」


 ワタシも、今胸の中にある心情を素直に吐露する。


『どちらが吠えヅラをかくことになるのか、対戦を楽しみにしてますよ』


 思えば、初めて会った時から第一印象は最悪で、とにかくいけすかないヤツだと思っていた。


『もしアナタと対戦することになったら、その時はよろしくお願いしますよ』


 実際にソリが合わなかったし、因縁めいたものをいつも感じていた。


 だけど、今にして思えば彼女の存在こそが一番最初にワタシの心を焚きつけてくれたのかも知れない。彼女に負けたくないという意地が――対抗心がワタシを剣道部へとつなぎ止めてくれたのかもしれない。


 ワタシたちは一礼し、開始線の前で蹲踞(そんきょ)する。

 

 この大舞台で、ワタシのハートに火をつけてくれた彼女と戦えるよろこびに胸を踊らせながら――


「はじめッ!」

()ェェェェェンッ‼︎」


 ワタシはしょっぱなから攻撃をしかける。


「小手ェェェェェッ‼︎」


 相手もすかさず小手を繰り出し、竹刀が弾け合ってお互いの攻撃は不発に終わる。


「ヤァァァァァッ‼︎」


 テンテンの気迫がワタシの胸にまで響いてくる。


「シャアァァァァァッ‼︎」


 ワタシも彼女の気合いに応えるように声を上げる。


 とはいえ、テンテンはタッつんと違って基本的には相手の出方に応じて技を繰り出してくる慎重な部類(タイプ)だから、なかなか自分から打ってくるコトはなかった。

 それはシーコも同じで、ワタシとしてはやりづらい部類(タイプ)の相手だった。


 それでも自分から動いていくしかない。

 ワタシはじわじわと間合いを詰めて、その機会をうかがう。


 刹那、フッと相手の竹刀が上がる。


 その瞬間、ワタシは脚を踏み出していた。

 だけど、テンテンは動かなかった。


 ――しまった!


 相手に動かされたコトを悟った時には、すでに面を目がけて竹刀を振り上げていた。

 テンテンはそれを待っていたかのように、同じように面を目がけてワタシの竹刀を擦り上げる。


 ワタシの竹刀は完全に軌道を崩される。


 まずい、と思った瞬間、ワタシは体を深く沈めながら竹刀の軌道を変えて相手の胴を狙う。


()ェェェェェンッ‼︎」

()ォォォォォッ‼︎」


 ワタシの胴打ちは浅く有効打にならなかったけど、相手の面打ちも同じように有効打とはならなかった。


 振り返り、再び竹刀を交える。


 ――あぶなかった……


 完全に相手の思い通りに動かされてしまった。

 シーコもそうだけど、テンテンも相当の試合巧者だ。


 ワタシは息を整えながら、打開策を思案する。


 相手を動かすには、まず揺さぶりをかけなければならない。だけど、ただ闇雲に動けばイイというワケじゃない。

 いかにこちらの思惑通りに相手を動かすか。相手の考えや行動の機微(きび)を読み取る洞察力に加えて、先の先を考え抜く判断力が求められるのだ。


 ――やるしかないか……


 絶対に負けられない大一番だ。

 すべてを出しつくすしかないと感じたワタシは、確実に一本を取るための()()()を試みる。


 じわじわと間合いを詰める。テンテンにまだ動きはない。


 ――今だ!


 ワタシは一歩踏み出して竹刀を振り上げる。

 それに応じて、相手も竹刀を振り上げる。

 と、ここでワタシは竹刀を下げて相手の小手に照準を定める。

 すると、相手もそれに釣られて竹刀を下げる。


()ェェェェェンッ‼︎」


 そしてワタシは、いったんあきらめたと見せかけた面打ちを繰り出す。


 パシィィィィィンッ‼︎


 たしかな衝撃が竹刀から伝わる。


 審判は3人とも赤の手旗を挙げていた。


 秋の遠征合宿で、高校生チャンピオンの上泉(かみいずみ)さんから一本を取ったフェイントからの面打ちが一本と認められたのだ。


「くっ!」


 テンテンがくやしそうにかぶりを振る。


 ワタシはホッとひと息()いて、開始線のところへ戻る。


 両者竹刀を構えて、


「面あり。2本目ッ‼︎」


 試合が再開する。


 さっきのフェイント技はうまく決まったけど、慎重さを崩さないテンテンはなかなか思い通りの攻撃をさせてくれなかった。


 ――ダメだ、決め手が足りない


 こちらの方が攻めているハズなのに、どうしても決めきれないままただ時間だけが過ぎていき、


 ビィィィィィッ‼︎


 試合終了のブザーが鳴り響く。


「それまでッ!」


 主審が終了を告げる。


「一本勝ち。勝負あり!」


 主審の宣告を受けてワタシは一礼し、コートから退場する。


「おつかれ、ミカ(ねえ)


 去り際に、次の試合に向けて待機していたツムが笑顔で声をかける。


「うん……」


 ワタシは小さくうなずき、自陣へ戻る。


 たしかに、ワタシは勝つには勝った。だけど、ワタシの攻撃はほとんどが封じられ、思い通りの試合運びができないまま終わってしまった、という印象の方が強かった。


 シーコとの地稽古でもそうだけど、相手に打たされてしまうという点は、今のワタシの大きな課題になりそうだ。

 

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