冬の団結
1月4日――
まだまだお正月気分でいたいそんな時期だけど、今日から部活動は再開する。
とはいえ、今日は新年の顔合わせがメインで、基礎練習で感覚を取り戻すだけの軽めの稽古で終わった。
まあ、顔合わせと言ってもこのメンバーで一緒に初詣に行ってるから、新年初顔合わせなのは顧問の緒方先生だけなんだけどね。
「新年ということで、私たち剣道部のスローガンを掲げたいと思う」
稽古が終わった後、シーコはそう言って一枚の白地の旗と、硯と墨汁と筆の書道セットをコートの上に広げる。
「スローガン……活動目標か。まあ、アタシらの目標は<優勝>なんだけど」
「ひとえに<優勝>と言っても、どこまでの<優勝>を目指すのか、ですね」
トモっちとアッキーが真剣な顔で考えこんでいる。
「いっそのこと<全国優勝>にしたらどうですか? 目標は大きい方がいいと思いますし」
普段は気弱なメイの口から、大胆発言が飛び出す。
「う〜ん。大きい目標もワルくないんだけど、いきなり高すぎるところに目標を置いちゃうと、すぐ目の前のものがおろそかになっちゃいそうな気がするんだよね」
「たしかに、上ばかり見ていて目の前の石につまづいてしまう、なんてことがありますからね」
ワタシの言葉に、アッキーが同調する。
「じゃあ、小さなことからコツコツと、ってな感じで<目指せ地区優勝>ってのはどうだ?」
「えー。なんかスケール小さすぎじゃないですかぁ? スゴくカッコ悪い感じがします」
トモっちの意見に、ツムが難色を示す。
「まあ、そうだよなぁ……」
トモっちが腕組みをしたまま、うーん、と唸る。
たしかにツムの言うとおりなんだけど、ワタシたちにとってはその地区優勝でさえも、四中という全国レベルの強敵がいるから困難だったりする。
逆にいえば、四中に勝って地区優勝さえしてしまえば、そのままの勢いで県大会、関東大会も突破して全国まで行ける可能性もあるかもしれない。
「<打倒四中>……コレもなぁ、四中ばっかに目がいってると他のトコにやられそうなパターンだなぁ」
ワタシは、自分で考えた案を自己否定する。
こうしていろいろ考えてみるけどなかなかイイ案が浮かばなくて、みんな黙ったまま考えこんでしまう。
「こんなのはどうだろう」
その時、何か思いついたようにシーコが声を上げると、彼女は筆を取って旗に文字を書き上げていく。
達筆で流麗な筆致でそこに書かれたのは、
<とにかく優勝!>
の文字だった。
「なるほど。あえてハッキリとゴールを定めない訳ですね」
アッキーが納得したようにうなずく。
「イイね。がむしゃら感があってワタシたちらしいと思う」
ワタシも私見を述べる。
みんなもコクリとうなずいた。
スローガンの書かれた旗は、道場の神棚の下に垂れ幕のように掲げられる。
ワタシたちは横に並んでそれを見上げる。
「それでは、二中剣道部の今年のスローガンはこれでいこう。<とにかく優勝!>、行けるところまで上りつめるんだ!」
シーコの檄に、みんな声をそろえてハイッ、と応える。
心をひとつに、優勝を目指してワタシたちは新たなスタートを切ったのだ。




