冬の雨②
それから2週間ほどが経って、学校は冬休みに入った。
その間に行われた期末テストも、まずまずの出来で終えるコトが出来た。
クリスマスはいつもどおり家族と過ごした。
部活をやめて、お父さんお母さんは最初は心配していたけど、今じゃ何もなかったように自然に接してくれている。
特に何か不満があるワケもないし、去年よりはまだフツーに日常生活を送れている。
だけど、なんでだろ――
まるで心にぽっかりと穴が空いたような虚しさを、ワタシは感じるようになっていた。
何をやっても満たされない、そんなどうしようもない虚しさは日を追うごとに増していくような気さえする。
今日も朝早くに起きて勉強をはじめたのはイイものの、あまり集中できなくてすぐにため息が出てしまう。
――何か気分転換でもしようかな?
そう思って、ふと壁にかけてあるカレンダーに目を向ける。
――そういえば今日って……
ワタシは日付けを見て思い出した。
今日は、剣道の公式試合がある日だ。
公式試合といっても規模の小さいもので、春の公式戦までの間を繋ぐ程度のものらしい。
実際、市内最強の四中は出場しないみたいだし、言うなれば合同練習試合といったところだろうか。
たしか、二中は出場するハズだ。
どくんッ!
その時、ワタシの心臓が大きく跳ね上がると、小刻みな律動を刻み出す。
もう、やめたのに――
もう、関係ないハズなのに――
あのころと同じドキドキを――試合の時に感じていたあの緊張感と高揚が、ワタシの全身を包みこむ。
――……行ってみようかな
ワタシは、まるで何かに突き動かされるように立ち上がると、身支度を済ませて部屋を出る。そしてお母さんに、ちょっと出かけて来る、とだけ伝えて家を飛び出し、厚い雲におおわれた曇天の中を自転車で漕ぎ出した。
ギイギイ、と相変わらず自転車から小さな異音が発せられている。少し不安に感じながらもワタシは大会の会場となっている市内の総合体育館へと向かう。
30分近くしてようやく会場に到着したワタシが駐輪場に向かうと、もうそこは大会参加者たちの自転車で埋めつくされていて、ようやく見つけたわずかなスペースに自転車を停める。
そして館内に入ろうとしたんだけど、入口前でピタリと足が止まってしまう。
もし、知り合いに――二中剣道部員と鉢合わせになったらどうしよう、という不安がよぎって、入るのをためらってしまうのだった。
――やっぱり帰ろうかな……
怖気づいて振り返りかけたけど、ワタシはかぶりを振ってもう一度正面を見すえる。
みんな強くなったんだから、ワタシがいなくても大丈夫。それを確認できれば、きっと胸のモヤモヤも少しは晴れるハズだ。
心の中で自分にそう言い聞かせて、ワタシは館内へと足を踏み入れる。
そして観客席のある2階へと上がって、適当な席に腰掛ける。
周囲には大会に出場しない選手たちが数名いるくらいで、他にワタシのように私服で観戦しているヒトはわずかだった。
そしてワタシ自身、こういった会場に私服で来ているコトに違和感すら感じてしまう。
――二中は……いた!
ここから少し離れたコートで、シーコたち二中メンバー5人が緒方先生の前に集まっているのが見える。たぶん、試合のオーダーを発表している最中なんだと思う。
そして、二中の対戦相手は、タッつんやカッシーのいる三中だった。
この大会はリーグ戦で、四中が不在のために全5チームとなった各校のレギュラーチームが総当たりするコトになる。
そして二中は、最初からいきなり優勝候補の三中と対戦するコトとなった。
三中とは秋の新人戦で対戦していて、その時は2-0で二中が勝利している。だけど、三中だってあれからリベンジに燃えて稽古を積んできたのだろうし、油断のできるような相手じゃないコトだけはたしかだ。




