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72話 謎の剣客


 「ずいぶん苦戦しておると、ギルドの職員から聞かされての。老体に鞭打ってスタンピードの加勢に来たところ、丁度アレクの嬢ちゃんを背負ったロボにお主のことを任されてここに至る訳じゃよ」

 「なるほど」


 ロボも面倒な奴を寄越してくれたものだ。

 他にまともな奴いなかったのかよ。

 こいつなんて見るからに面倒臭い奴だろ。

 

 「ん、なんじゃそんなにわしを熱のこもった視線で見よって…。まさか惚れたか?っかー!一目惚れとはお主も若いのう!!」

 「いや」

 「しかし、すまんなぁ。わしは所謂、面食い?という奴での。小柄で紅顔の美少年が好みなんじゃ。その点お主は、その……」


 ムラマサと名乗った女は俺のすぐ傍まで近づき、全身を値踏みするように観察した後申し訳なさそうな顔をして言った。

 

 「ちと、好みから外れるのう。勿論わしも見た目が全てだとは言わんが、重要な要素である事には違いない。やはり一緒にいるならできる限り、見目麗しい者にしたいと言うのが本音じゃ」

 「あ、はい」

 「じゃからすまん!その気持ち自体は嬉しいんじゃが、お主の気持ちには応えられん……」


 ムラマサの態度からは本気で申し訳ないという気持ちが伝わってくる。

 張っ倒すぞこの女。

 何が悲しくて勝手に惚れたと思われて勝手に振られなくてはならんのだ。

 俺はまだ何も言ってないぞ。

 

 「しかし!!」


 ムラマサは微笑みながら俺の肩に手を置く。

 至近距離まで近づいたことで、かなり長身だと思っていた彼女は俺とほぼ同じ背丈である事が分かった。

 圧がすごい。


 「お主の内面が外見を凌駕するほどのいい男になれば話は別じゃ。短期間であれば顔さえ良ければ内面に多少の難があっても目を瞑るが長期間、例えば生涯を共にする相手ともなればそうはいかん。その場合は重要性において外見よりも内面に軍配が上がる。簡単に言ってしまえば、眺めるだけなら外見がよい者、共に生きるなら内面がよい者ということじゃな。だからお主も諦めずに内面を磨け。そうすればもしかするかもしれんぞ?」


 フォローまでしっかりしてやがる。

 余計なお世話だが。


 「まぁ、外見も内面もよい男が一番いいんじゃがな!!」


 それは勿論そうだろうが、それを言ったらさっきまでのフォローが台無しだろうが。

 そもそも最初からこいつにフォローする気があったのかすら怪しい。


 「それで、俺のことをロボから任されたと言っていたがこの後はどうするつもりだ?さっきお前も言っていた通りこちらはもう片付いたぞ」


 そもそもロボはどういった意味でこいつに俺を任せたのだろうか?

 

 「ん?」

 

 ムラマサが首を傾げる。

 本当に何しに来たんだお前。


 「んー?おぉそうじゃったそうじゃった。本当は加勢に来たんじゃがさすがは『黒曜の英雄』、要らん世話だったようじゃの。さて……」


 どうする?


 「どうしようかの?」


 ……本物かもしれんなこいつ。


 「とりあえず他の冒険者たちに合流したらいいんじゃないか?」

 「おぉ!そうじゃな!ロボの奴、『ディアボロ様を頼みます』としか言わんかったからの。本当に、普段はしっかりしておるのに要所で抜けとるのうあいつは」


 まぁそんなところも可愛いんじゃが。

 

 そう言って大笑いするムラマサを見て少し、いやかなりロボが不憫に思えた。

 会ってまだ間もないと言うのに俺はもう既に内心ゲッソリしている。

 早くこの女をロボに返却したい。


 それも全て()()()()()()()()()()()()()()()()()、だが。


 俺はロボの昔のパーティーメンバーについては『雷帝』アレキサンダーの話しか聞いていない。

 つまり今目の前でうんうん唸っている女が適当にほらを吹いていたとしてもおかしくない。      

 俺には『五本指』や魔王軍に所属している魔族に関する情報は多少あるが、冒険者に関する情報は殆ど無い。

 だから彼女が言っている事が真実かどうか判断する事ができない。

 無論、最初に視線を感じたときから警戒は一切解いていないが、次から次へと降りかかる災難に辟易しているのも事実。

 一番良いのはさっさとロボたちと合流して真偽を確かめることなのだが、先ほどからムラマサが動く気配は一切無い。


 「どうした?ロボの所に行かなくても良いのか?」


 それともロボの所に行くと何か都合が悪いのか?


 俺はムラマサのほんの僅かな動きも見逃さないようにする。

 いい加減今日は疲れた。

 適当なほらを吹いて俺を騙そうとしているのならそれでも別に構わない。

 その代わりさっさと終わらせろ。

 俺の視線に気がついたのか、彼女は俺の方を向き口角を吊り上げる。


 やはりか。


 僅かに緊張感が高まるのを感じた。

 魔力に関しては『代償の指輪』があるから問題ないが、『統率者』との戦闘後なのでベストコンディションとは程遠い。

 ムラマサはそんな俺を嘲笑うかのように口を開いた。

 

 「わし、どこから来たんじゃっけ?」

 「はぁ?」


 思わず素が出た。

 何を言い出すんだこの女は。


 「いや、すまん!わし、方向音痴でな」

 「ならなんでロボと別れた後、俺の所にはすぐ辿り着けたんだ?」


 口からでまかせを言っているだけか?


 「ロボがお主が戦っていたこの場所にマーキングをしていての。それを辿って来たわけじゃ」

 

 マー、キング……??


 「マーキングって……」

 「違いますよ!!!?」


 俺とムラマサの間に何者かが飛び込んできた。

 少し前から探知していたが、どうやら向こうから来てくれたらしい。


 土煙の中から顔を僅かに紅潮させたロボが現れた。  

  

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