↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
臆病・口下手・不器用と三拍子揃った俺だがこの奇妙な異世界には負けたくない  作者: Deadfool


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/188

38話 仮面の執事


 「よし、ちゃんと時間までに来たな」

 「あぁ……」


 昨日来た店『Nice To Meat You』の前で待っていた俺にアーネが声をかけてきた。

 正直気が重いどころの話ではないが、行かないほうが面倒な事になると思って結局指定された集合場所まで来てしまった。

 約一時間前に。

 何が起こるかわからないため、かなり早めに出る事にした俺にロボが


 「あの、心中お察ししますが、ヴェリル様も決して悪い方ではないので……」


 などと言っていたが、正直そんな物は何の気休めにもならない。

 

 そ(・)れ(・)は(・)相(・)手(・)が(・)魔(・)族(・)な(・)ら(・)、(・)だ(・)ろ(・)?(・)


 俺は思わず吐き出しそうになった言葉を飲み込んだ。

 彼女には何の非もないのに、こんな事を言ってしまえばただの八つ当たりだ。


 「やはり先生もいらっしゃいましたか」

 「私はディアボロ様の世話役ですので」


 そう、当然と言えば当然だが俺の世話(監視)役であるロボも同行している。

 何か問題が起きそうになれば彼女が間に入ってくれるかもしれない。

 彼女にとっても監視対象が危害を加えられる事は避けたい、はずだ。

 

 「それならば仕方ありませんが、ヴェリルさんからは『2人きりで黒曜の英雄と話がしたい』と言われているので、向こうに着いたら先生は私と一緒に席を外してもらいますよ」

 

 それは無理だろ。

 監視対象から目を離して席を外す監視役がどこに居る。

 

 「相手がヴェリル様であれば、それも致し方ありませんね……」


 ここに居たわ。

 お前、以前『私は魔王様から直々にあなたの世話役を任されているので離れるわけには参りません』とか言ってたよな?

 職務怠慢じゃねえのかこれ。


 「分っていらっしゃるのであれば問題ありません」

 

 そう言ってアーネが『転移結晶』を使う。

 気がつくと俺たち3人は大きな屋敷の正門前に転移していた。


 「ここが『ヴェノム商会』代表の屋敷の1つ、通称『毒蛇御殿』だ」

 

 ひっでえネーミングセンスだな。

 そんな事を思いながらも俺は門の向こう側のかなり離れた場所に鎮座する巨大な屋敷に目を向けた。

 庭もかなり広く、敷地内には湖のような物まで見える。

 門には目が潰れた巨大な大蛇が卵を守るようにこちらに牙を剥く様子が掘り込まれたエンブレムが。

 門の向こうを伺っていると屋敷の方角から土煙を上げながら一台の馬車がこちらに向かってくるのが見えた。

 馬車を引いているのはただの馬ではなく、スケルトンホースと呼ばれる第三危険度のモンスターが二頭。

 その二頭に鞭を振るう御者は執事服姿に半分が泣き顔、半分が笑顔といった不気味な仮面を被っていた。

 馬車はすぐに俺たちのもとに辿り着いた。


 「いやぁ、皆さんお待たせしました。『暁の傭兵』アーネ様、『弧狼王』ロボ様、そして『黒曜の英雄』ディアボロ様の三人でお間違いありませんね?」


 馬車の御者台からひらりと俺たちの前に飛び降りたそいつはそう言ってやけに芝居がかったお辞儀をしてきた。

 そのおどけたような口調と奇妙な仮面も相まって、まるで道化師のようだ。

 だが一瞬俺を見たときに仮面の向こうから覗く瞳は、まるでこちらを値踏みするような物で真剣そのものであった。

 曲者の匂いがする。


 「アーネ様以外のお2人とはお初にお目にかかります。私、ヴェリル様の護衛兼執事を務めています。クラウンと申します。以後お見知りおきを」

 

 体つき、声からしてクラウンも女性なのだろう。

 身長はロボより少し低いくらいだろうか。

 

 「それではあいさつもそこそこに屋敷のほうへと参りましょうか!ヴェリル様がお待ちです!」


 そう言ってクラウンは俺たち三人を中へと招き入れて馬車を出発させた。

 馬車の中はかなり広かった。

 クッションも相当上等な物なのだろうからだが沈む沈む。

 馬車を走らせる事により生じる振動も殆ど感じない。


 「【静寂(サイレンス)】」


 馬車が走り出してから間も無く、ロボが以前使っていた【静寂(サイレンス)】の魔法を使った。

 

 「ディアボロ様。今回の会談、私とアーネは席を外しますが念のため保険をかけておきましょう」


 そう言うと彼女の影から何かが飛び出して俺の膝の上に飛び乗った。

 それは全身を真っ黒に塗りつぶされた犬のような生き物で、荒く息を吐いている。


 「それは【影狼(シャドーウルフ)】と言ってスキルで生み出した私の分身のような物です」


 彼女が指を振るとそいつは俺の影に飛び込み消えた。


 「これをあなたの影に忍び込ませます。気持ち悪いかもしれませんが、会談が終わるまでの間少し我慢してください。もしもの時は私がそちらに向かうまでの時間稼ぎにはなるでしょう」


 なるほど確かに上手く言葉にできないが、何か違和感のような物を感じる。

 自分の影に異物が混ざるとこんな感覚になるのか。

 

 「アーネもそれで構いませんね?」

 「はい。先生の立場からすれば、このあたりが妥協点でしょう」


 ロボの言葉に首肯するアーネ。

 これはセーフらしい。


 「あと、ディアボロ」

 「なんだ」

 「お前の気が進まないのは理解できるし、多少強引だったのは悪いと思うが、ヴェリルさんに対してくれぐれも失礼な態度はとるなよ」

 「努力しよう」


 もちろん言葉の通り努力はするが、相手にとって何が失礼に当たるかなど人それぞれだろう。

 知らない間に相手の地雷を踏み抜いたりしなければいいのだが…。

 そもそも今回って会談とか言うほど大仰な物だったのか。

 てっきり俺は軽く挨拶して自分の持ってる素材をいくつか渡して終わりだと思っていたのだが、そんな簡単な話ではないらしい。

 ヴェリルは一体俺と会って何がしたいんだ?

 そんな事を考えていると馬車が止まった。


 「お待たせしました!『毒蛇御殿』へようこそ」


 そう言ってクラウンが馬車のドアを開いた。

 目の前に建つ荘厳な屋敷からは僅かだがプレッシャーすら感じる。


 「この『毒蛇御殿』に招かれた人(・)族(・)はあなたが初めてです。おめでとうございます!」


 クラウンが余計な事を言いながら大きな拍手を贈ってくる。 

 めでたいのはお前の頭だろ。

 

 「それでは皆さん、中へどうぞ」


 ひとしきり拍手を浴びせて満足した様子のクラウンの後について俺たち3人は屋敷の中へと入っていった。

 

 俺、ちゃんとここから無事に出られるんだろうな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。