第15話 三角関係?
私的には、みなみちゃんより風見先輩の方がファーストキスっぽい感じがあったんだけど……。まっ、いっか。
「でも、そうなったら、みなみちゃんのファーストキスの相手も私になっちゃうんだけど? 大丈夫そう?」
「へぇ!?」
細かく追求されると思っていなかったのか、みなみちゃんは目を丸くした。唇もワナワナと震えている。
「あ、あたしは百戦錬磨だし? 別にキスくらい慣れているんだけど。は、初めてじゃないし!」
みなみちゃんはふんぞり返って言った。髪を片手でサラッとなびかせる仕草が妙に様になっていた。
「……あの時、中学生だよね?」
「……っ!」
「みなみちゃん、彼氏とかいたっけ?」
あの頃、付き合っている人を紹介された記憶が一切なかった。
というか、今までに一人も言われたことがないんだけど! あれー? 百戦錬磨なんだよね?
「……今日は天気がいいね」
「あっ! 話逸らした」
今日のみなみちゃんは、やっぱりおかしい。
「話はさ、せっかくだから放課後にでもしようよ。ワッフルでも食べながら……」
「うん!!」
みなみちゃんに上手くかわされた気がするけど、まぁいいや。
今度こそ、私は自分の机に向かった。
最近の放課後は、風見先輩とネットカフェに行ったり、みなみちゃんと遊ぶ予定が入ったりして充実している。
もしかして、これ……夢のJKライフってやつじゃない!?
わー。高まってきた!
ウキウキした気分だったけど、1時間目が英語だったことを思い出して、一気にテンションが下がる。苦手なんだよなぁ。ローマ字のまま単語を読むことができないし。
でも、放課後にワッフルが待っていると思うと、俄然乗り切れそうな勇気が湧いてきた!
私は柄にもなく鼻歌なんかを歌ったりした。
◇
「和央ちゃーん!!!」
「えっ。風見先輩……」
帰りのホームルームが終わって念願の放課後。みなみちゃんと教室の後ろに集まり、まさにワッフル屋さんに行こうとした、その時だった。
1-Aの教室の前に風見先輩が現れた。ドア付近でキョロキョロして、私と目が合った途端、ブンブンと手を振った。
「……わお、今日も風見先輩と約束してたの?」
みなみちゃんの声が少し低かった。
「ううん。してないよ」
本当だった。
昨日、ネットカフェの前で、風見先輩と別れる時、
「今日はありがとうございました」
「和央ちゃん、じゃあねー」
というように円満に別れた。
次回の約束については特に言及していなかった。
とりあえずと、私とみなみちゃんは風見先輩のもとに行った。
「和央ちゃん。昨日ぶりー。今日もいいかな?」
彼女は、にこにこ笑顔でご機嫌そうに言った。
「あの。すいませんが、今日はわおとワッフルを食べに行く予定なんですが……」
みなみちゃんが冷ややかな目をした。
「うわー。そうだった! 今日はみなみちゃんとの約束があったんだよねー。完全に忘れてた。ごめん」
風見先輩は両手を合わせて頭を下げた。本当にうっかりしていたようだった。
「まぁ、わかればいいですけど……」
「楽しんできてね! それじゃ」
風見先輩は颯爽と、私たちの前から消えようとした。未練がないような、潔い姿が少し引っかかる。
「あのっ! 風見先輩!」
「えっ。何?」
私は思わず先輩を呼び止めてしまっていた。彼女がくるりと振り向いた。
廊下にいた同級生も私たちを見ている。
「い、今からどこに行くんですか?」
本当に聞きたかったことではない。だけど、話しかける口実が欲しかった。
「ネットカフェだよ」
「……一人なのにですか?」
「うん。今までも放課後はよく行ってたから!」
風見先輩は優しく笑った。その表情が切なく見えて、胸が少し痛んだ。
「あの……」
みなみちゃんが横から口を挟んだ。
「良かったらなんですけど、風見先輩も一緒にワッフル屋行きませんか?」
「えー! 楽しそう!」
風見先輩の返答を待たずに、私が喜んでしまっていた。みなみちゃんが白々しい目を向けてくる。
「——で、どうですか?」
みなみちゃんは、すぐに風見先輩に目線を移した。彼女の次の言葉をじっと待つ。
風見先輩は数秒黙った後、
「行きたい……です」
と、伏し目がちだけど、賛同の意見を口にした。やったー!
「なんで、敬語なんですか」
みなみちゃんが少し笑った。
「はははっ。ついね」
「嬉しい!!!」
私はガッツポーズをしていた。楽しみにしていたワッフル屋。人数は多い方が楽しいもんね!
「わお、はしゃぎすぎ」
「だって、3人で食べ合いっこできるかもってことでしょ? 甘い系のワッフルの他に、しょっぱい系もいけちゃうかもよ!? わー。どうしよー」
人目も憚らず、はしゃいでしまっていた。
「和央ちゃんって、面白いね」
風見先輩が口元に手を当てて笑った。
「……ちょっと早めだけど、ワッフル屋に向かおうか。お店の前で少しくらいなら待っててもいいかもだし」
みなみちゃんの合図によって、私たちは並んで昇降口に向かった。
順番は、みなみちゃん、私、風見先輩だった。
女子二人に囲まれて歩く経験って今までなかったから、新鮮だった。両手に花って、こういうことをいうのかな?
廊下を歩く時、男子たちの視線を感じた。仲間で談笑しているのに一瞬だけ止まって、目を向けてくる、あの感じ。
でも、私にじゃない。みんな風見先輩を見ていた。そりゃ、こんなにきれいな先輩だもん。目の保養にしたいよね。
私もバレないように、こっそり風見先輩に視線を向けた。
「んっ。何?」
秒でバレてしまった。
「いえ、なんでもないです」
反射的に否定しちゃった。変に思われていないかな。
今日はいつもよりも廊下が長く感じた。嘘。一瞬だった!




