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風見先輩が私のことを好きなのはラノベアニメの主人公に似てるから。〜好感度高めから始まる恋のススメ〜  作者: 宮野ひの


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14/50

第14話 ファーストキスの相手は、あたしだからね?





 気づけば、昨日ネットカフェを退室した時間に迫っていた。なので、急いで後片付けをして、風見先輩とはお店の前で別れた。甘い時間は、そう長くは続かなかった。


「わお、おはよー」


「おはよう」


 みなみちゃんは今日も朝から元気だ。私が教室に入ると、彼女はもうすでに席についていた。ポニーテールがいつもに増して、きちんと結ばれていた。


「ワッフル屋さんのことなんだけど、17時に来店予定って予約入れちゃった! 良かったよね?」


「うん。いいよ。いつもありがとー」


 昨日は、風見先輩との先約があったから、一緒に寄り道することができなかった。今日は何も約束していないから、昨日の借りを返すように、みなみちゃんと心ゆくまで遊ぶぞ!


 だけど、予約はもう入れてくれたんだ。

 助かるけど、なんだか焦っているように見えるのは気のせい?


「——ねぇ。風見先輩とは昨日、どうだったの?」


「えっとね。またネットカフェに行ったよ! だけど、風見先輩はお疲れなのかブースに入ったらすぐに寝ちゃった」


「ふーん。じゃあ、わお、一人で暇だったんじゃないの?」


「いやいや。アニメ見てたから楽しかったよ! それにその後、風見先輩はすぐに起きたし——」


 そう言ってから、昨日の光景がフラッシュバックした。


 風見先輩の耳に"好き"と言ってしまったこと。お返しのように、彼女からも"好き"と言われたこと。


 アニメのシーンの模倣であったとしても、リアルな感覚にドキドキしてしまったこと。


 耳に囁かれてゾクゾクしたことなど……すべて。


「わお? なんか、顔赤いよ」


「な、なんでもない!」


 みなみちゃんに指摘されて、ますます恥ずかしくなってしまった。

 背中を向け、頬に手を当てると、熱くなっていた。


「……まぁ、いいけど。ねっ。わおはさ、どういうワッフルが好き? あたしはね、チョコ系が食べたいんだけど、どう?」


 みなみちゃんはいつもの調子で楽しそうに話を振ってくれた。

 深呼吸を繰り返して落ち着いた私は、再び彼女と向き合った。


「そうだなー。私も甘いのがいいかなー。いちご……いや、やっぱりみなみちゃんと同じチョコ系がいいかも!」


「いちごもいいじゃん。二つ頼んじゃおうよ! 飲み物は、アイスコーヒーがいいよね。甘いのだったら、飲みきれないし」


「確かに! でも私コーヒー飲めるかな」


「あっ。わお、苦いのダメだっけ? 本当、お子ちゃまだなー」


「むっ。ガムシロップ入れれば飲めるもん」


「それ、反論になってないよ!」


 みなみちゃんは、おかしそうに笑った。なんだか幸せそうだ。きっとワッフル屋さんに行くのを、すごく楽しみにしているんだろうなぁ。


 えへへっ。なんだか私も放課後が待ち遠しくなってきた!


「早くワッフル屋さんに行きたいね」


「わおの食いしん坊ー」


「別に何言われたっていいよーだ」


 あっかんべーをした後、自分の席に向かおうとした。

 そしたら、みなみちゃんに手首を掴まれてしまった。


「な、何?」


「昨日、風見先輩とキスはした?」


 そんな爆弾発言を言う。


「ええっ!? し、してないよ」


「そっか。良かった」


「っていうか、一度も風見先輩とキスしたことなんてないってば! そ、ソフトクリームのやつは間接キスってだけでしょ? みなみちゃん、変なこと言わないで!」


 わざわざ呼び止めて、キスのことを聞くなんておかしい。熱でもあるのかな。


 私は右手を伸ばして、みなみちゃんのおでこにくっつけた。


「わ、わお、何してるの?」


「んー。別に?」


 大丈夫。熱はないようだった。


「……わおの手、冷たい」


「やった。じゃあ、心があったかいのかなー?」


 私は、みなみちゃんのおでこから手を離した。


「そういう迷信あるよね。でも、自分で言うなしっ」


 二人して顔を見合わせて笑い合った。

 やっぱり昔からの友達と一緒にいるのって楽しい。波長も合うし、気兼ねなく冗談だって言い合える。みなみちゃん、私とずっと親友でいて欲しいな。


「——あのさ、あたし達、昔キスしたこと覚えてる?」


 静寂が訪れた一瞬。みなみちゃんは珍しく真剣な顔をして言った。


「えっ……。私とみなみちゃんが?」


「うん」


 急に言われてびっくりした。何かの間違いじゃない?

 恋人同士でもないのに?

 過去を思い出してみたけど、ピンとくる記憶がなかった。


「わお、忘れてるんじゃん。ほら、中1の時に階段で口と口がぶつかったじゃん」


「あぁ!! あの事故!!」


 みなみちゃんに言われて思い出した。そうだった。


 移動教室の時、階段を降りた私はこけてしまい、ちょうど下にいたみなみちゃんにダイブしたことがあった。

 その時に、唇と唇が事故で触れてしまった。


「確かに。そういうことあったけどさ。別にキスじゃなくない?」


 私は正論を言ったはずだった。


「でも、唇同士はひっついたじゃん」


「まぁ、そうだけどさ。あの時、血の味しかしなかったよ?」


「あははっ。そうだったね。あたしとわお、どっちも唇から血ぃ垂れ流してたもんね」


「うん。歯、折れるかと思ったよ」


 みなみちゃんの唇を今見たけど、何も傷なんて残っていなかった。

 リップクリームが塗られているようで、ほのかに艶があった。


「わおさ、昨日、風見先輩とファーストキスしたーって騒いでたじゃん」


「う、うん」


「だけど、その理論で言ったらさ、わおのファーストキスの相手は、あたしだからね? そこんところ覚えておいてよね!」


「は、はい……」


 みなみちゃんにはNOと言えないような迫力があった。

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