四十九 正義の在り処①
「? おや、騒がしいね」
突然音が鳴った方を見れば、メーアスが探していた人物。
「ご報告いたします! 現在パーティー会場にて、魔物が! 魔物が現れました! ーー私が誘導しますので、避難をお願いいたします!」
「ーーなんですって!?」
魔物が!?
彼らは、人の魔力が好物とはいえ、それが極端に集まる場所……街はそうそう襲わない。
闇にとって光とは、愛すべきものであるがゆえに、この世で唯一恐れるものだからだ。
「状況は?」
「はっ! 現在、我が騎士団と会場に居合わせた戦える者で応戦。現状、けが人は幸いにして出ておりません」
「なるほどね、どうする? リュミ」
「私はもちろん、現場に参りますわ」
戦える者には、もちろん私も含まれる。
「そう。彼らは優秀だ、……お茶を飲んでから行くといい。久しぶりに話せて楽しかったよ……またね、リュミ」
「恐れ入ります」
謎と違和感だけを残して、レイセルはウルムと共に部屋をでた。
(こちらは生きた心地しませんでしたけど)
お言葉に甘えてお茶を飲んで、深呼吸する。
飲んだあとに思ったけど、毒とか入ってないでしょうね?
味はさすがに美味しいな。
「……ウルム様?」
一息ついたところに、気配を感じる。
扉の方をみれば、出て行ったはずのウルム。
レイセルは伴わずに、部屋にまた入ってきた。
「に……、……さい」
「え?」
「ーーに、にげて……、っください」
(は?)
いや、今から魔物のところに行くんですけど。
「ーーはや、くっ!」
「!?」
なにかに抗うように頭を抱えたあと。
何を思ったのか、ーーウルムはその刃が輝く剣を鞘より抜いた。
「ちょっ、ウルム様!?」
なに? どうなってんの!?
『氷の剣!』
襲い来る刃を、氷で形成された剣で防ぐ。
「しっかりして! 私は魔物ではないですわ、よ!」
反動をつけて押し返せば、先程は見られた正気がなくなっている。
(まさかこれは……魅了?)
シンシア?
たしかに、いくら彼女が未熟でも騎士であるウルムになら効きそうだ。
だが、時間差でなるものなのか……?
相手が見知ったウルムなので、今は恐怖には支配されていない。
「いやな予感しかしないわ」
いつかの、正気を失った魔物。
光の魔法がこの世にない時に、それができるのはーー。
「っ!」
考えながら凶刃を受けた氷の刀身は、その圧倒的な力で壊される。
(--しまっ)
避けきれない……!
『水の羽衣!』
(っ水の魔法!)
「ーーメーアス様!」
「ウルム! しっかりしてください!」
私に到達する前に水の膜を斬った剣は、徐々に凍っていくそれに動きを封じられる。
「--ぐっ!」
得物を封じられたウルムは握りしめた手を緩め、なお素手で襲いかかってくる。
(こんのっ)
味方を得た途端、思考がクリアになる。
「私が引きつけます!」
「承知した!」
再度氷の剣を精製し、自分への敵意をみせるウルムを挑発する。
その間に回復の魔法が得意なメーアスに、魅了と思われるウルムを解除してもらう。
「ちょっと! 淑女にいきなり襲いかかるなんて、騎士のやることですの!?」
相手がウルムだったからまだ良かった。
これが別の者なら、体が動かなかったかもしれない。
「リュミ、……ネーヴァ!」
「呼び捨てされる覚えはないですわよっ、と!」
さすがに切り返す訳にもいかないので、迫りくる猛攻を避けながら刃を振りかざして相手に距離をとらせる。
「ーーウルム、目を覚ましなさい!」
詠唱をおえたメーアスの魔法の光は、瞬く間にウルムを包み込む。
ウルム自身を閉じ込め、そしてその波動で癒す。
「う、あーー」
「ウルム様! しっかりして!」
たまらず声援を送れば、徐々にその眼に生気が宿ってきた。
「ーー恐らく、もう大丈夫でしょう。……お怪我は?」
光が消え去ると同時に、ウルムは地に伏す。
本当に大丈夫かしら……。
「私は平気です。それよりも、外はどうなって……」
「ーー前触れもなく、いきなり魔物が襲ってきました。幸いここは騎士が多くいる。……戦える者が半数以上おりますので、大きな被害はないかと」
「そう、……私も参りますわ」
「分かりました……、気を付けて。私もウルムの様子を見ながら後程参ります」
正直ウルムのことについてメーアスと話したいところではあるが、それよりも人的被害を食い止める方が先だ。
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