四十一 討伐完了
「便利ですね」
若干のタイムラグの後、魔力を補給した彼は元気になった……と思う。
ちょっとぎこちない気もするけど。
そして、うりぼうのような魔物と同様に、その遺骸を闇魔法が付与された魔道具で亜空間にしまう。
ゲームでいうところの、収納魔法やシステム上のインベントリのようなものだ。
(こういうところはゲームっぽいな)
まぁ、光の魔法も闇の魔法もつかえない以上、知らないことは多い。
四属性しか使えない者からすれば、戦いにおいては脅威。
この魔道具自体は希少なものらしいが、これがあるのと無いのでは国としての戦力も変わってくる。
なにせ、物資を運ぶ手間が省ける。
そして、ユールティアスほどの闇の魔力を備えていれば、きっと魔道具に頼らなくとも行えるだろう。
……魔族が恐れられるのも、少し分かる気はした。
「そろそろ暗くなる、早く戻ろう」
「ええ」
「私が先を行きます、足元お気を付けください」
◇
馬車を置いた集落へと戻り、代表者に状況は伝えた。
周辺の調査を終えてから依頼の完了としたいので、諜報部から再度連絡がいく手はずだ。
これが冒険者であるのなら、報酬が直接もらえるのだろう。
王国軍であれば、給与という形で支払われるのだろうか?
今回は大物なので、少しは上乗せされるだろうが……。
(学生でも、もらえるのかしらね)
今までは手続きは兄や父に任せきりだった。
……なんだか、戦闘狂みたいだな。
王都へともどれば、すっかり日暮れ。
王城の離れに常駐しているユール達とは本部で別れた。
魔物の素材も、諜報部へ確認してもらった後にリクヴィール達へ渡すらしい。
「! お兄様」
「リュミ、お帰り。怪我はなかったかい?」
「ええ、このとおり」
帰還の連絡が魔法師団にも届いたのだろう。
本部へ戻ると、兄エルドナーレが訪ねてきた。
「今日は一緒に帰ろうか」
「あら、珍しいですわね」
「最近遅くまで残っていたからね、たまには」
「ふふ、懐かしいですわ」
「ん?」
「お父様が現役の頃は、こうして一緒に帰っておりましたわね」
「あぁ、懐かしいね」
魔法師団長を継いだエルドナーレ。
以前は父グスタフがそれを務めていたため、今の私のように手伝いがてらここに通っていた。
今度はそんな兄の手伝いを私が行い、帰りはよく一緒に帰ったものだ。
(お兄様のことシスコン……って思っていたけれど、他の人から見たら、もしかしてブラコン?)
転生者として覚醒し、始めは男性が怖かった。
けれど、それまでの記憶と、それからの姿。
彼が、自分を本当に大切にしていると理解すれば、その恐怖は次第に薄れていった。
迎えの馬車にのり、自宅を目指す。
「……お兄様は、魔族のこと。どう、お思いですか?」
「急に、どうしたんだい?」
その顔は、本当に分からないという顔ではなく。
こちらの意図を汲んで、私の話を促すためのほほえみだ。
騎士団が非協力的な意味も、よく知っているはず。
「この国は、私の知らないところで……割れていたのですね」
そして、それが最悪の形で具現化したのが原作だろう。
「……リュミ。人はね、時に自分や誰かを守るために人を傷付けることもある」
「守る、ため……」
「……だけどね、私利私欲のためだけに傷付けることもある。……そして、魔族の持つ闇の魔力とは、本来そういうものだ」
自分と、自分が愛するものだけ。
それだけを望む男神の力。
自分と愛するものにとって、心強いものではあるが。
それ以外には、破滅をもたらす力。
「だからこそ」
兄はきっと、私とユールとの婚約に、はじめは反対していたことだろう。
しかし、彼は理解しようとした。
攻略キャラだからと。
ゲームではこうだった、と向き合うことを放棄した私とは違った。
魔法師団長として、魔族と接する機会の多かった彼は、きちんと相手の心に寄り添った。
「その力を持つ彼らだからこそ。……なによりも、誰よりも。傷付けてしまうことを、恐れているんだよ」
きっと、私以上にユールのことを理解している。
それがどこか、後ろめたい気がした。
ご覧いただきありがとうございます。
モチベーションになりますので、ぜひブクマ・★評価等で応援して頂けると嬉しいです!




