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四十一 討伐完了

「便利ですね」


 若干のタイムラグの後、魔力を補給した彼は元気になった……と思う。

 ちょっとぎこちない気もするけど。


 そして、うりぼうのような魔物と同様に、その遺骸を闇魔法が付与された魔道具で亜空間にしまう。

 ゲームでいうところの、収納魔法やシステム上のインベントリのようなものだ。


(こういうところはゲームっぽいな)


 まぁ、光の魔法も闇の魔法もつかえない以上、知らないことは多い。

 四属性しか使えない者からすれば、戦いにおいては脅威。

 この魔道具自体は希少なものらしいが、これがあるのと無いのでは国としての戦力も変わってくる。

 なにせ、物資を運ぶ手間が省ける。

 そして、ユールティアスほどの闇の魔力を備えていれば、きっと魔道具に頼らなくとも行えるだろう。

 

 ……魔族が恐れられるのも、少し分かる気はした。


「そろそろ暗くなる、早く戻ろう」

「ええ」

「私が先を行きます、足元お気を付けください」





 馬車を置いた集落へと戻り、代表者に状況は伝えた。

 周辺の調査を終えてから依頼の完了としたいので、諜報部から再度連絡がいく手はずだ。

 これが冒険者であるのなら、報酬が直接もらえるのだろう。


 王国軍であれば、給与という形で支払われるのだろうか?

 今回は大物なので、少しは上乗せされるだろうが……。


(学生でも、もらえるのかしらね)


 今までは手続きは兄や父に任せきりだった。

 ……なんだか、戦闘狂みたいだな。



 王都へともどれば、すっかり日暮れ。

 王城の離れに常駐しているユール達とは本部で別れた。

 魔物の素材も、諜報部へ確認してもらった後にリクヴィール達へ渡すらしい。


「! お兄様」

「リュミ、お帰り。怪我はなかったかい?」

「ええ、このとおり」


 帰還の連絡が魔法師団にも届いたのだろう。

 本部へ戻ると、兄エルドナーレが訪ねてきた。


「今日は一緒に帰ろうか」

「あら、珍しいですわね」

「最近遅くまで残っていたからね、たまには」

「ふふ、懐かしいですわ」

「ん?」

「お父様が現役の頃は、こうして一緒に帰っておりましたわね」

「あぁ、懐かしいね」


 魔法師団長を継いだエルドナーレ。

 以前は父グスタフがそれを務めていたため、今の私のように手伝いがてらここに通っていた。

 今度はそんな兄の手伝いを私が行い、帰りはよく一緒に帰ったものだ。


(お兄様のことシスコン……って思っていたけれど、他の人から見たら、もしかしてブラコン?)


 転生者として覚醒し、始めは男性が怖かった。

 けれど、それまでの記憶と、それからの姿。

 彼が、自分を本当に大切にしていると理解すれば、その恐怖は次第に薄れていった。


 迎えの馬車にのり、自宅を目指す。


「……お兄様は、魔族のこと。どう、お思いですか?」

「急に、どうしたんだい?」


 その顔は、本当に分からないという顔ではなく。

 こちらの意図を汲んで、私の話を促すためのほほえみだ。

 騎士団が非協力的な意味も、よく知っているはず。


「この国は、(わたくし)の知らないところで……割れていたのですね」


 そして、それが最悪の形で具現化したのが原作だろう。


「……リュミ。人はね、時に自分や誰かを守るために人を傷付けることもある」

「守る、ため……」

「……だけどね、私利私欲のためだけに傷付けることもある。……そして、魔族の持つ闇の魔力とは、本来そういうものだ」


 自分と、自分が愛するものだけ。

 それだけを望む男神の力。

 自分と愛するものにとって、心強いものではあるが。

 それ以外には、破滅をもたらす力。


「だからこそ」


 兄はきっと、私とユールとの婚約に、はじめは反対していたことだろう。

 しかし、彼は理解しようとした。

 攻略キャラだからと。

 ゲームではこうだった、と向き合うことを放棄した私とは違った。

 魔法師団長として、魔族と接する機会の多かった彼は、きちんと相手の心に寄り添った。


「その力を持つ彼らだからこそ。……なによりも、誰よりも。傷付けてしまうことを、恐れているんだよ」


 きっと、私以上にユールのことを理解している。

 それがどこか、後ろめたい気がした。




ご覧いただきありがとうございます。


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