二十七 専門家①
「そういえば、ユール様は魔皇国へはもどらないんですの?」
次の日の午後。
最近は実技授業も増え、その出来次第では早めに帰れる日も増えてきた。
魔法を学んでこなかった平民の者もいるため、そういった者の練習時間を確保するにはもってこいのシステムだ。
魔将の一族でよかった。なんて。
といっても次期魔皇帝どのも優秀。
基本的に放課後は一緒になる。
そして日課の餌付け……じゃない、魔力を提供するのだ。
「ん? なんだい、早くも次期魔皇帝の妻として自覚がでてきたのかい?」
「ち、ちがいます!」
「ふふ。冗談だよ」
わざとだ! 今のは完璧、からかわれた。
「卒業までいるよ。リュミのこともだけど、父上はまだまだ現役だし、エレデアやナレドの情勢を自分の目で見ておく必要がある。……私の治世になった時、足元をすくわれかねないからね」
「な、なるほど……」
意外としっかりとお考えでしたか。
「それで、今日は魔道具の専門家の方をご紹介してくださるのですわよね?」
「まぁ、ね」
メーアスと話したあと、自分でそう提案したはずのユール。
なぜかずっと乗り気じゃない。
なんで?
「魔法師団のなかにもそういった部署はありますけれど、やはり魔皇国には敵いませんわ」
「技術そのものは、大差ないのだけれどね」
魔物の素材や、地脈の魔力を含有する魔石。
それらを加工し、魔法を付与するにはひとつ、壁がある。
闇の魔力だ。
魔族は自らがその魔力を有するため、その素材にどれほど闇の魔力が含まれているか感覚でわかる。
だが、他国の者はその感覚がないため、それを調べるところから始める。
魔皇国がこの分野で成功しているのは、必然なのだ。
「しかたない、行こうか」
「はい」
しかたない、のか?
◇
王城と併設される、王国軍の総本部。
騎士団、諜報部、魔法師団。
すべての部隊の中枢で、なかには様々な部署がある。
「あいかわらず、大きいですわね」
庁舎のような建物は、巨大で堅牢だ。
実家のツテで魔物の討伐をする際、たまに来ることがある。
「魔道具についてはエルドナーレ殿の直属で、数人お世話になっているよ」
「お兄様の」
なるほど。
だから私から魔力をもらう前は、そこで分けてもらってたのか。
ちょっとその図は拝みたくなる。
「……おや? リュミネーヴァ様じゃないですか!」
「お、お嬢様いらっしゃい! ユールティアス様もご一緒ですか」
「久しいわね、お邪魔するわ」
「どうぞどうぞ、ぜひ閣下にお会いになってください」
馴染みの守衛とのあいさつ。
そういえば最近は来れてなかったな。
大きな扉を開け、中に入る。
一階には演習所へ行きやすいよう、左手に騎士団。
右手に魔法師団の本部がある。
目の前の大きな階段をあがれば、諜報部や全体会議の場がある。
軍の機能がコンパクトにまとまった施設だ。
そのため、装飾は華美ではないが質のいい絨毯。
ところどころに置かれた、見目もよい魔道具。
すっきりと整っている、という印象。
「ーーあ」
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