十二 水面下にて②
「うん、さすがだねリュミ」
「お褒め頂き光栄ですわ」
原作ちょっと知ってますから。とは言えない。
「まぁ、さきに言った取引は理想論で、つまり不発だったんだ。そして、魔皇国もバカじゃない」
「動きを勘づかれたのですね」
「そう。愚かにもほどがあるけれど、ね。それに、魔皇国側からすれば、争う理由は元々ないし、まして光の魔法を有する国とは戦いたくもない」
でも、原作では強行された……。なぜ?
「シンシア殿が光の魔法を発現する前。……つまり、我が国に対魔皇国への勝算があまりない時期に。リュミ。お前が開戦を阻止する手助けをしたんだよ」
「……へ?」
開戦を、阻止する……手助け?
そんな大層なことした覚えは、ない。
いつだ、いつそんな。
「ストラク村。覚えてるね?」
「え、えぇ。あの鉱山の」
国内でも希少な魔石が採れる街。
魔皇国との国境に近い街だ。
以前、魔物退治の任務で訪れはしたが……。
「あれこそ第二王子派の策略さ。あの時の魔物は、暴走していた」
「そうでしたわね」
やけに凶暴化していたっけ。
「そして私は、精神に直接作用する魔法は、火・水・風・土の四属性にはないと言ったね」
「……言いましたわね」
つまり?
「あそこで魔物を食い止めない限り、第二王子派は魔族が闇の魔法を用いて攻撃を仕掛けてきたとでも言うつもりだったんだろうね」
「ーーええと」
もしかしなくてもですけど。
私、原作のフラグ、折っちゃいました?
本来は被害が食い止めれなくて、開戦したってこと?
「まぁ、それと同時にリュミがとんでもない魔法の使い手であるとバレちゃったんだね」
「な、なるほど?」
「けっこう何度か申し出あったんだけど、一連の事には目を瞑るからリュミとの婚姻を進めたい、と。……ことの経緯はそういう話」
とても壮大な、自分の知り得ない情報がたくさん出てきて。
やはり国同士とは、ままならないものだなぁと思っていたけど。
結局のところ、原作と違う流れになったのは自分のせい、いや、おかげ?
もちろん争いが避けられたのは嬉しいが、うーーむ。
ヒロイン、すまない。
あとは持ち前の愛され体質で、なんとか攻略していってくれ。
「お、大まかな流れは分かりましたけれど。それでいくと、私は人質です?」
エレデア王国が今後、また変な気を起こさないように一大戦力で一応身分もある私を嫁がせると。
そういう、話?
ヒロインが嫁ぐと、その魔力で魔族の皆さん大変なことになるし。
「--まさか! そんなことなら、私や父上も困らないさ。即、お断りだ!」
さすが妹ラブ。表には出さないけど父であるグスタフも娘ラブ。
でも、そうじゃないとすればどんな理由?
「だが……第二王子派も諸外国を巻き込むことは止めたんだが、王位は諦めてはいない。そこで、現国王は国内の分裂を避けるために、より第一王子に相応しい相手を宛がおうと考えた」
「シンシアさん、ですか」
「ああ。お前との婚約を破棄させ、ライエン殿下とシンシア殿を……な。そうすれば、魔皇国も易々と手は出せないだろう」
とても理にかなった婚約破棄!
悪役令嬢というから心配したが、まさか婚約破棄自体にはちゃんとした理由があった……?
これはもう、未来の安らぎは約束されたも同然じゃなかろうか!
このままヒロインにいじわるなことさえしなければ、ちょっと原作と違うけど無事エンディング。
色々まちがえたようだが、最終的には完璧な結末だ。
……で?
「それと、ユールティアス様と私が婚姻を結ぶ意味は?」
「はぁ……、それなんだよ」
なにやらお困りの様子。
「もちろん開戦を阻止した功績も、ある。魔皇国にも裏で糸を引いていたのが第二王子派とは勘付かれているからね。それもあるから、婚約が破棄されるのであれば、魔皇国に招きたいと。そう申し出があった。そして、もうひとつ」
はぁ、とため息を吐いて。
そして真っ直ぐこちらを向く。
「リュミが、優れた魔法使いだからこそだよ」
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