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勝手すぎる幼なじみにうってつけの一撃  作者: 山下くりぷうぴ
第一章~絶対にチーターにさせたい女神VS絶対にチーターにさせたくない幼なじみ~
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第四話 チーターの中のチーター、それがオレ……らしい

 支配種は丘の向こうに現れた。

 ……というのが観測所からの連絡だった。


 この町の所属する地域の外周一帯には、『観測所』なる施設がある。

 そして、そこに所属する軍の人たちが、常に支配種が来るのを監視している。


 観測所は支配種を発見し次第、すぐに周辺の町へ警報を出す。

 ……のだと思っていたが、それより先にその地のチーターに連絡が行くらしい。

 で、その後に警報。


 もっとも、この間みたいにいきなり町の上に現れたらさすがに警報が優先されるとからしいから、やっぱりアレは特例中の特例だったんだなぁと改めて思う。


 今日に関しては普通。普通の支配種が普通に登場した。

 ということで今オレたちは観測所からの連絡にあった通り、丘の向こうまで歩いている真っ最中。


「かなり大型の支配種らしいですよ」


「この間、マッキーが殺したのはどれくらいなんですか?」


「あれは小~中型ぐらいですね。まあ飛行持ちで大型は少ないんですよ」


「へ~」


 ディーゴージさんはどんな風に戦うのかな。

 能力すら知らないや。


 てかよく考えたらオレって自分の能力すら知らないな。

 ってことで聞いてみた。


「女神さん、オレってそもそもどんな能力なんです?」


「リングさんのコードは何かってことですね」


「あ、うん。そうです」


 ところでチーターの能力のことを『コード』って呼ぶの、なんなんだ?

 ややこしいんだが。

 普通に『チート』じゃダメなのか?

 ……まあ色々あったんだろうし、伝統に安易なツッコミはしないでおこう。


 で、肝心の能力は……。


「すみません、それは私にもわからないんです」


「あ、そうなんですね」


「それがさっきの『理想とするチーター像』という話につながるんだ」


 そう口をはさんだのはディーゴージさん。


「そういえばさっき言ってましたね」


「コードがどんな能力になるか……。

 それは『洗礼時に強く抱いている理想のチーター像』に相関・影響があると言われている」


「ええと、つまり……?」


「例えば『悪い奴をぶっ殺す』

 そんなチーターになりたいと思って洗礼を受けた場合、得られるコードは殺傷力の高いものになる。

 逆に『みんなを守れるチーターになりたい』と考えて洗礼を受ければ、防御性能の高いコードを授かることになる」


「え、つまり自分で決められるんですか」


「あくまで方向性だけの話だ。

 さらに言えば『心の底から強く抱く理想』だ。

 表面的にこんな感じがいい、程度じゃ影響しないし、むしろもっと本質的なトラウマやこれまでの生き方の影響が大きい」


 なるほどなぁ……。

 だいたい理解した。

 あ、でもやばい。

 理想のチーター像とかなんにもないぞ。

 支配種とか世界の危機に対してもなんの感情も持ってないし……。

 オレはとりあえず無職が嫌だからって浅い理由で洗礼を受けようとしている。

 誇れるような理想や正義感なんて持ち合わせてない。


「どうした、難しそうな顔して」


「いや……、理想のチーター像なんてないなぁ……と思って」


「だろうと思ったよ。

 だからこそ、君には僕の戦いを見ておいてほしいんだ。

 僕の戦いを見て、どんなチーターになりたいか、その答えが見つかるかもしれない」


「……そうですね、わかりました。参考にさせていただきます」


「ですが、リングさん、そこまで気負う必要もありませんよ。

 リングさんはどんな理想をでも必ず強いチーターになります」


「それは……何か根拠のある話なんですか?」


「はい、リングさんのチーターレベルは、とても高いので!」


「チーターレベル……?

 それは知らない用語だな……」


「はい、レベルに関しては基本公表されてませんからね。

 まあ簡単な話、洗礼を受ける前に女神が感知できる『素質』の強さです。

 チーターレベルが1でもあれば、その人はコードを持つ素質があります」


「それがオレは高いと……?」


「はいっ!」


「ディーゴージさんはどれくらいなんですか?」


「僕が洗礼を受けた時は99レベルだったな」


「バケモンじゃないですか。

 え、1あればチーターになれるんですよね?

 別格中の別格すぎて……もうディーゴージさんだけでよくないですか?」


「いや僕もね、ずっとそう思ってたんだ。

 実際、僕よりレベルの高いチーターには会ったことがなかった。

 半端なレベルの子をチーターにさせて危険に晒すぐらいなら僕が引き受ける……、その気概もあった。

 君に会うまではね」


 ……?


 言ってることがよくわからない。

 そしてディーゴージさんは続ける。


「君に出会って痛感した。

 自分がずっと狭い世界で生きていたんだな、とね」


「それは、もしかして、僕のレベルが……そこそこ高い……」


「はいっ! そのとおりですっ!

 だって私がリングさんから感じ取ったチーターレベルは、999なんですっ!」


「……」


 え?

 999?

 999って言った? 今。


「100万人に一人の才能を持つチーター、その中でも別格破格の才能持ち。

 それがリングさんです」


 オレが……。


「チーターレベル999のリングさんであれば、どんな底の浅い理想であってもきっと強いコードになりますよっ!

 だからドーンと構えて気楽に洗礼しちゃいましょう!」


「まあ、僕はレベルが高すぎるからこそ、慎重に理想を見出すべきだと思うんだがね。

 そこが意見の分かれるところだったんだけど」


 …………。


「わかったかい、リング君。

 別格中の別格というなら、それは君なんだ。

 君のそのチーターとしての才能は、世界に必要なんだよ」


 なんか緊張してきた。

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