第89話 助っ人権放棄×バスケ試合
雅人達、生徒会の働きにより球技大会は問題なく開催された。
だが、問題がなかったのは開催までである。
「保健室はいっぱいなので、他に休憩スペースを確保します!」
元々不良が集う多摩川高校の球技大会が平和的に終わるわけがない。
不良達への抑止力である雲雀や雅人もその場にいなければ止めることが出来ない。
上級生や同学年から仕打ちを受けた生徒が保健室へと運ばれた。
「追いつかねぇ...」
「仕方ないでしょう。これも想定のうちよ」
競技開始から数分で保健室に用意された仮のベットまでいっぱいになり全てが男子生徒という状態。
「あのベットって貧血起こした女子用じゃなかったのかよ」
「その予定でしたが仕方ないですよ。赤嶺さんは殴った側の生徒に心当たりはありますか?」
「ありすぎて絞り切れない」
「情けない後輩だなー。そこは名探偵バリの推理で当ててみたまえ」
「お前は俺をなんだと思ってやがる。毎度赤点ギリギリの奴が推理なんて出来るわけないだろうが」
雅人は耳につけたインカムを通して情報を聞いていた。
『次、3年生はテニスだから校庭に移動だ』『終わったらすぐにどけよ。次がつまる』『審判がファールと言ったらファールだ!』
情報を聞く限りどこも同じような苦労をしている。
雅人達生徒会は、運営に重視するためにほとんど外には出ていない。
ただ耳に入る情報から暴行者の確保に加え、運営の不具合がないかを確認するという激務が課せられていた。
「赤嶺、1年の間でトラブルだ。雲雀先生は2年の審判で忙しい、言ってくれるか」
「わあったよ」
雅人が生徒会室を飛び出すと女子同士のバスケの試合だった。
「そっちが先に転ばせたんでしょ!」「わざとじゃないし!躓いただけだし!」
どうやら選手の1人を転ばせた躓いたで口論になっているようだ。
「なにがあった」
「こいつが!この子を押し倒したの!」
「だから躓いただけだって!」
目の前でギャアギャアと騒ぐ女子生徒を前に逃げ出したくなる雅人だが生徒会の仕事と割り切って対応に当たった。
「その前に!お前、怪我を見せてみろ」
「はい...」
怪我をした生徒の傷は膝と肘を擦りむいた程度。少し血が滲んでいるが止血が必要な量じゃない。
よって雅人は選手の交代で続行を促した。
「待ってよ!怪我させたのにおとがめなし!?」
「あのな、この程度の怪我でぎゃあぎゃあ行ってたら今保健室で寝てる男どもは救急車だぞ。スポーツに怪我はつきものだ。まあ、水泳部なら怪我という怪我はしないから仕方ないが」
「なんで知って」
「目の周りの日焼け痕と肩の紐痕だ。これ以上の言い争いはなしだ。そっちも注意するように。もし次の俺が呼ばれることがあればそれなりの処罰は期待してもらう」
「...分かった」「はーい」
イザコザを収め、生徒会室へ戻った雅人はソファーに深く座った。
「この学校、教師の数少なすぎだろ」
「不良高校だから中々新しい人が就かないんだよ。去年の新任は全員辞めてったしね」
「だから生徒会が激務になるんだ」
「お疲れさまです。紅茶です」
「...」
「なにも入ってませんよ。この激務のなか、会長と赤嶺さんがいなくなるのはこちらとしても不都合ですから」
怪しみながらも雅人は喉を潤した。
「ああ、次は俺が出る番だ」
「バスケだったわよね?アタシもテニスがあるから応援には行けないけど頑張って」
「相手はおれだな。水谷の応援なければダンクシュートは打てない!完全勝利はいただいた!」
「お兄ちゃん。あのクソ生意気な後輩をとっちめちゃって!」
雅人は今すぐ拳でとっちめようか考えた。
体育館に行くと既にチームメンバーが集まっていた。
「遅い」
「時間通りだろうが」
「まあまあお2人さんよ。今は仲間同士だ、協力して先輩に勝とうぜ」
チームは雅人、慧輝、仁のほかに男子生徒が2人いるだけだが押し込まれただけなのでほとんど動くつもりはないだろう。
「ああそうだ。始めに決めて置きたいんだが。お互いに助っ人権は使わないようにしよう」
「あったなそんなの」
「お前が出した案なんだが...まあ、ここは男の正々堂々の勝負ってことで折角の助っ人権をお互いに捨てようじゃないか」
「俺達に得はない」
「あるさ。今そこにいる黒人はアメリカ帰りの帰国子女でな。バスケ部ではないが向こうで散々遊んだらしい。身長は198㎝、パワーも高さも赤嶺よりあるが使えない。どうだ?」
雅人はチームに目配せすると全員が頷いた。
「いいだろう」
「決まりだな」
「それでは!1年対2年男子の試合を始める!」
宣誓と共にボールが投げられ雅人が触り仁にパスが出された。
多摩川高校球技大会、雅人達の試合が始まった。




