第84話 宣戦布告×雅人あるある
雅人にキスをされ新年を迎えた葵は思い出すだけでも顔から火が出てるんじゃないかってくらいに顔が熱く、赤くなっていた。
雅人のいきなりの行動で誰も予想できていなかった。
「赤嶺くんのキス...大人だったな...」
毛布に包まり顔を埋め思い出しては顔を赤くしていた。
それもそのはず。
雅人と葵がキスする場面は数あるがどれも唇を触れ合わせる程度のものだけでライトなものが多い。
ヘビーなものは存在こそ知っていたが恥ずかしくて葵からは中々出来ないでいた。
それを雅人は急になんの脈略もなく葵にしたのだ。
葵が顔を赤くしほわほわとしていると葵のスマホが着信を告げた。
「詩音さん。どうしました?」
『いや、ちょっと様子が気になって...ほら、昨日あんなことがあったじゃん?だから電話したんだけど...もしかして邪魔した?』
「いえ、そんなことはないですよ。私もあれから赤嶺くんには会ってませんから」
『そ、もし赤嶺のところ行くんだったら連絡頂戴。豹堂を封じる必要があるから』
「分かりました。あ、夜に皆さんで初詣行きませんか?」
『そうしよう。夜まで我慢できるの?』
「無理かもしれないです...」
情熱的なキスをされたせいか今の葵は雅人に会いたくなってしまっていた。
『なら今から行けばいいじゃん。豹堂からはウチから言って置くから』
「...よろしくお願いします」
電話を切ると部屋着のまま玄関のドアを開けた。
だが考えることは皆同じなのだ。
「あ」「え」
玄関前で恋のライバルと鉢合わせするという修羅場不可避のハプニング。
しかも相手も部屋着のままでかなり可愛らしい恰好をしている。
「...おはよう。葵」
「...おはようございます」
しばらく無言が続き、お互いが警戒していた。
「少し時間いいかしら」
「...いいですけど...」
梓は葵を自分の部屋へと引き込むと対面で座った。
「一つ聞きたいのだけれど...葵は雅人に好きって伝えたの?」
「....?」
葵は一瞬なにを言ってるのか理解できないという顔をした。
「私はちゃんと伝えて...ないです」
「やっぱりね...。葵は雅人にちょっかい出されるときに否定しないでしょ?」
「否定しないというか出来ないんです。赤嶺くんに間近まで迫られると体が言うことを聞かなくなってドキドキしてどうなってもいいやって思えるんです」
「やっぱり葵もなのね」
「梓先輩も?」
「ええ、雅人に覆いかぶさられるとそうなっちゃうわよね」
雅人に覆いかぶさられたことがある葵と梓は雅人あるあるで盛り上がっていた。
「あと雅人って一回キスすると止まらないわよね」
「はい。普段そんな素振りを見せないのに不思議ですよね」
「むっつりなのよ。それなら普段の態度も説明がつくもの」
「赤嶺くんって首と耳を重点的に攻めませんか?」
「言われてみればだけどそんなに攻められる?」
「私は特に首を...」
葵は首を触ると顔を赤くした。
「葵ってすぐ顔を赤くするわよね。そこが可愛いところだけどね」
「そ、そうでしょうか...」
「だから雅人も葵ばっかからかうのね...アタシはすぐに顔が赤くなったりしないから」
「でも恥ずかしいですよ?」
2人の目的は雅人に『好き』というものを教えることと自分に振り向かせることだ。
お互いに『好き』を教えることについては同列と言っていいだろうが、振り向き加減で言えば葵が少し出ている。
葵は気がついていないが梓は実感している。
その証拠に、梓には雅人からキスしたことはないし首や耳をしつこく攻められたりはしない。
だが梓は諦めるきはさらさらなかった。
「今の現状で言えば雅人が好きを知った瞬間に告白するのは葵だと思うわ」
「そんなこと...」
「あるの。だからここで宣戦布告しとくわ」
梓はいつしか保健室で笑ったように挑発的に笑った。
「保健室でも言ったけどアタシは手段を選ばない。生徒会長の立場も先輩としての立場も周りの人間も存分に使って雅人を振り向かせる。うかうかしてるといつのまにかアタシの側に雅人がいるかもしれないわね」
「私だって。赤嶺くんに甘えて可愛がってもらいます。私は頭が良くないし周りの人の動かし方も分からないので自分の力だけで赤嶺くんに振り向いてもらいます」
葵に笑う余裕などなかったが目線だけでやる気は伝わったようだ。
梓はニコリと笑うとこういった。
「それじゃあ、1月の半ばにある球技大会の件で雅人しばらく借りるわね」
「え...」
「言ったでしょう?どんな手を使ってでも振り向かせるって」
葵は啞然とした。それと同時に理解をした。
梓は球技大会で雅人と一緒に居たいがためにここで改めて宣戦布告をしたのだ。
『ここで大きく動く』
そう梓は言いたかったんのだ。




