第38話 密告×TRPG
詩音のマジギレに仁は背筋に冷や汗を伝せた。
「このカメラ、豹堂が仕掛けたものだよね?」
「え、いや、なんことか分からないなーあはは」
「絶対にそうだから。ねえ、協力者さん?」
「雅人!まさか…お前…」
雅人は葵とのラインを見せた。
『豹堂がカメラ仕掛けたから注意しろ』
という告発文が送られていた。
「バラさないなんて言ってないだろ?それに、こんな面白そうなこと、バラさないわけないじゃん」
「楽しそうだなクソ野郎が!」
「どうする?警察に自主すかウチらが警察を呼んで連れて行かれるのがいい?仲良しのよしみで選ばせてあげる」
「本当にすいませんでした!」
仁は古来より日本に伝わる最高峰のお辞儀、土下座をした。しかもジャンピング。
「謝って許されると思ってるの?」
「本当にすいませんでした!なんでも言うこと聞くので許してください!本当になんでもしますから!」
「って言ってるけどどうする?」
詩音と違ってちゃんと服を着替えた葵と梓がゴミを見る目で仁を見ていた。
「わ、私は任せます…」
「葵?貴方の体が1番狙われてたのよ?それでも許せる?」
「じゃあ死刑で…」
「いきなりの極刑⁉︎出来れば死なない方向でお願いしたく存じます…」
「そうね…ならこのお泊りの間、口答えなしってのはどうかしら」
「それじゃあ足りないんだけど…もし逆らったら赤嶺の顔面パンチが付くならまあ、いいかな」
「私も異論なしです」
こうして、盗撮未遂犯、仁の罰が決まった。
『泊まりが続く間、絶対に逆らってはいけない。逆らった場合雅人からのパンチが顔にお見舞いされる』というほぼほぼ死刑に近い罰となった。
仁のカメラを取り除いた女子達は風呂を楽しみ。全員が上がるとゲーム大会が開催された。
「ゲームってなにするの?」
「人生ゲームなら持ってきたぜー」
「人生ゲームもやるが、TRPGなるものをやってみたいと思う」
「TRPG…聞いたことはあるけど具体的には知らないわね」
「TRPGってのは…簡単に言えば運ゲーだ」
「個々には出来ることがあり役職によってその得意度が変わります。大きい方が有利と考えてもらって大丈夫ですが必ずしも高い人だけがやればいいという事はありません。細かいところは最中に聞いて貰えれば答えます」
「GMは俺がやる。これが今回やるTRPGの舞台だ」
『ある屋敷に招かれた4人。資産家、探偵、冒険家、医者。屋敷に入ると既に4人居て、計8人が集合した。懇談会と称したパーティ ーが開かれ全員がそれなりに仲良しの雰囲気にはなった。だが、事件は起こった。
屋敷に招かれた8人の内の1人が何者かに殺害された。犯人は後に招かれた4人を除いた3人の中にいる。それぞれの証言を元に推理し正解へと導いて欲しい』
「これ赤嶺が考えたの?」
「原案は俺。分かりやすく改良したのは葵だ」
「私はほとんど直してないですよ…せいぜい人数を変えたりしただけです」
雅人達がやっているTRPGは犯人側の人数が増えれば増えるほど時間もかかるし相当な推理力が必要となる。
ルールを完璧に覚えているベテランなら人数を増やしても問題ないが初心者ばかりのこの場では3人が妥当だろう。
「これが役職の紙だ。全員同じでもいいしバラバラでもいい」
「それぞれのメリットとデメリットはあるの?」
「1つ、例えば、『目視』に特化すれば探索がしやすくなる。逆に他の役職にある特技が使えない」
「なら、バラバラの方が良さそう。葵が関わってるから即死とか理不尽なものは出てこないと思うけど…一応」
「ちゃんとデバックはしてある!お前らより葵の方が絶対にカオスな状況にするぞ」
「あ、あれは!デバックなので仕方なく…そのおかげで返答が増えたんですからあれはデバックという意味では正解なんです!」
葵と雅人がやった時には、探偵が人間不信に陥り機能停止、資産家が幻影をみて叫んだり壁に向かって頭を打ちつけていたり、医者が殺人癖に目覚め冒険家と殴り合いをし冒険家の方が拳値が高いから医者が死んだりとまさにカオスといって差し支えない状況になった。
ゲームが始まり、GMが3人の容疑者を連れて来た。
役職は
詩音が『資産家』
仁が『冒険家』
梓が『探偵』
葵が『医者』という全員バラバラの役職になった。
容疑者A『部屋には烏がいる』
容疑者B『部屋には花を模したものが2つある』
容疑者C『部屋に欠けている場所はない』
詩音達はこの証言の元、特技を使い嘘を見抜かなければならない。
「これが殺人現場だ。この部屋を調べ誰が犯人なのか答えてくれ」
「この机に目視を使いたいんですが誰が1番目視の数値が高いですか?」
「あ、80でアタシ高いわよ」
「なら梓先輩がこのサイコロを振ってください。80未満であれば成功となります」
梓がサイコロを振ると64という目が出た。
「成功するとGMが情報をくれます」
『机の上にはコップとお菓子が乗った皿があります』
「それだけ?」
「コップかお菓子に絞ればもっと詳しい情報が貰えますよ」
「ならコップに毒物かお菓子に毒物が仕込まれてないか調べよ。そういう特技持ってる人はいる?」
「あー。オレは毒物検査56持ってる」
「私は90ですね」
「なら葵がやって。お菓子に毒物検査ね」
葵がサイコロを振ると50の目が出た。
『お菓子からは毒物は検出されなかった』
「先に部屋をあらかた目視しましょう。その方が解決につながりますよ」
あらかた目視を取ると梓から疑問が湧いた。
「あれ?犯人はこの中にいるのよね?」
「ああ。その通りだ」
「おかしくないかしら?烏のものはなかったし、花を模したものもなかった。本棚の中が壊れていた。…全員嘘をついてない?」
「たしかに!でもそんな事有り得るの?
「ものによっては十分に有り得ますよ。私も全部をみたわけではないので犯人が誰なのか分かってません」
「もう少しだけやってみてなかったら全員犯人ってことね。よし、やろう」
数十分後、情報が出揃い謎は解けた。
「謎は全て解けた…犯人はあんた!容疑者C!」
「理由は?」
「理由は、烏はいたし花を模した物があったから!A、Bは嘘はついてないから!」
「大正解」
「簡単だったわね」
「初心者用ですから。でも結構まえに答えは出かかってましたよ」
「え、どこで!」
「最初に梓が全員犯人って言った時に物が壊れてるって言ったろ。その時点で容疑者Cは犯人確定なんだよ」
「考えたな。一回目視した程度でそこまで情報が出るようにするなんてな」
「その辺は葵に言ってやってくれ。俺は大まかな流れを作ったにすぎない」
「ゲーム好きなお二人さんに言うわ。楽しかったわ。ありがとう」
「まだあるが?やるか?」
「今度は最短で答えだしてあげる」
「オレも活躍するぞーバリバリー!」
「んじゃ行くぞ」
8月始めのある日、誰もが羨む青春がそこにはあった。




