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「ティクエスト! 上手くいったものだね!」
「ああ! リア! このまま駆け抜けようぞ!!」
なんだ?
夕暮れ染まる草原のなか、馬を走らせる男女が見える。
男の前に横向きに座り、しっかり抱きつき愛しそうに男の顔を覗き込む女……
幸せが笑顔から滲んでいる。
何処かで見たような懐かしい光景……
その光景を俺は上から俯瞰してみている。
まるで……鳥にでもなって、一緒に飛んでいる様な……そんな感覚だ。
「なあ、ティクエスト! オーセンは何と言っておった?」
「ああ? 相変わらずさ、『親愛なる王よ。ここにサインを』」
「あはははは! 似てる!!」
「そんなの俺でなくてもよかろう! 今日は、今宵はリアと共に星を見に行く約束をしていたからな、急な雑用は全部捨て置いた、今頃、青くなって俺を城内を捜しまわっているだろうな!」
「ティクエスト……
僕が明日、大臣共に怒られるよ……
『またあの神族の女め、王のお気に入りだからといって好き勝手に』って」
「似てるぞ、リア!」
「そうじゃない! そこじゃない!」
「ハハハハハ! 其方は俺の妃になる女、変な気後れは無用……
もしも、お前をいじめる様な輩がいるのであれば、俺はそいつを裸にして、場外へ捨ててやる、アハハ!」
「ティクエスト……
それは出来ないと……
前から何度も行ってるでは無いか……」
「あ?
世継ぎの件であろう?
そんなものどこぞから孤児でも拾って、俺の子だと言ってしまえばそれまでよ。
気に病むな!」
「そうではないのだ……
僕は本当に君の子を産みたい……
君が本当に望むようにしてあげたいのだ……」
「本当に望むか……
リア、心を読むな……
どんな親しいものであれ、本心など知らぬ事が幸せへの近道ぞ。
それが分かれば……
以降、心を読むことを禁ず。
これは王の勅命だ。
心して置け!!」
「フン!
僕の前ではだらしない男の子じゃないか!
赤ちゃんさ!
チクィートさ!!」
「そうかも知れぬな……
男は誰しも好いた女の前では子供のようになってしまうものだ。
ましてやリアは……
なかなかのご老体であろう?
え~っと……
200歳であらせられるかな?
媼殿!」
「は?
はああ??
今何と言った?
許さん!
UUL・INNMASUTACH・em………………」
「ああ! リア!
魔法は勘弁だ!
俺が悪かった、許してください!
大魔法使い、ミーリア様、どうかお許しを!」
男がそう言って女の口を自らの唇で塞いだ。




