未知の領域
ロンシャン競馬場の直線530m。
この長い直線を全力で走りきる競走馬はいないだろう。
通常の凱旋門賞ならフォルスストレートはじっと脚を溜めて直線の残り2ハロンを全力で追うのが通常のパターンだろう。
しかし最高の逃亡者サイレンスがいるレースでは通常通りでは勝てない。
早めに捉えに行かないとそのまま逃げられてしまう。
2041年の凱旋門賞ではその考えから先行して早めにサイレンススタートを捉えにいったアブソルートとジュニア。
しかしサイレンススタートの特性の勝負根性で粘られてスタミナが切れた時に発動するタキオンで、一度は敗北を覚悟させるほどのリードを奪われた。
そんな考えからジュニアはサイレンスの特性の競った時に粘る勝負根性を封印するべく、仕掛けを遅らせることを考えた。
しかし先行して勝負を遅らせると今度は後ろから来るフラッシュジャパンの末脚に対抗できない。
1対1の勝負なら負ける気がしないジュニアもこの2頭が同時に向かってくるレースでは敗北の可能性を感じずにはいられなかった。
そんなジュニアが出した結論は、仕掛けを遅らせてゴール直前にサイレンスを差し切る。
そして末脚勝負でフラッシュジャパンに勝つという選択だった。
「ジュニアさんアンタの考えは理解したが、フラッシュジャパンに末脚勝負で勝とうなんて見積もり間違えてるんじゃないか?」
「お前の馬にできることならアブソルートにも出来るさ。」
「言ったなこの野郎!」
残り400m。先に仕掛けたアルピースターだが、フォルスストレートでペースを上げた反動が出始めた。
フラッシュジャパンが光速の末脚の1歩前、光速の兆しの末脚で一気にアルピースターを抜き去っていく。
それに全く変わらずついていくアブソルート。
「流石にこの末脚はついてくるか、さすがアブソルートだ。」
「フォワ賞でこの脚が使えることは確認済みだ。」
「?!だからフォワ賞であんなレースをしたのか!!」
「しかし最後の1ハロンの末脚は未知数だ。だが俺はアブソルートを信じている。」
末脚が不発なら敗北もあり得る、そんな一か八かのレースをしなければいけないほどアブソルートもまた追い込まれていたのだった。
先頭のサイレンススタートが残り200m。
アブソルートとフラッシュジャパンとの差は7馬身。




