猫と人間の間で
「えっ、ボスネコってここの生徒だったの?」
「そ。残念ながら、普通の人だったよ」
猫神様との再会を果たした翌日、教室で千代子に報告してあげた。
もちろん、リアルオカルト案件な猫神様の事は伏せてだが。
「なぁんだ。で、結局探してた猫と会わせてくれたって? 夕美だけズルい」
「だからこうして結果を教えてあげてるじゃない。まぁパンぐらいなら奢ってあげるから」
「……クレープ、フルーツマシマシで」
「調子に乗るな」
でも実際、千代子が持って来た噂が無ければ猫神様に辿り着く事は出来なかったんだし、もうちょっとだけ彼女のワガママにも付き合ってあげようかな。
そうそう、付き合うと言えばもう一人……
「何しに……いえ、良くここが分かりましたね」
「君が隠れてそうな所は押さえてあるからね」
昼休み、私はお弁当を持って猫の集会場に突撃していた。
「拒みはしませんが、無駄ですよ?」
「いいのいいの、急ぐようなものでも無いし」
「むぅ……」
それから、お互い無言で猫達とのお昼を楽しんだ。
そして放課後は、自然と神社に足を運んでいた。
『それをアタイから言うのは野暮ってものさ』
河津君が何故人を避けるのか、猫神様に聞いてみた答えがこれだった。
「え~、せめてヒントだけでも」
『なぞなぞじゃ無いんだ。でも、そうだねぇ……武史はこの家の都合で、物理的に人より猫と共にいた時間が長いんだ。だから、アイツにとってはむしろ人の方が別の生き物に見えてるんだろうさ』
「う~ん……猫じゃない私には分からないかなぁ」
『それで良いのさ。アンタはあくまで人間として、アイツのそばにいてやっておくれ。それだけで充分な意味がある』
「は~い」
何か煙に巻かれている気もするけど、こればかりは考えたって仕方ないしね。
「それじゃあ、私は河津君のお手伝いに行きますね」
『あぁ、しっかりおやり』
偶然であれ必然であれ、出会いが私の日常をすっかり変えてしまった。
でもそこに後悔も不安も無い。それは、私の選択でもあるから。
これから私は、河津君や猫神様と共に人生を歩んで行く。
ここまでお付き合いいただきありがとうございます。
このお話はここで完結としますが、現在別視点からの続編も考えています。いつか投稿できる時が来ると思います。




