猫を祭る社
今日は日曜日。
不思議な男子生徒ことボスネコ(仮)と約束した日だ。
この日が待ち遠し過ぎて、今週の私はさぞおかしなテンションだっただろう。千代子にもしつこく追及されたが、『まだ調査中』で通した。
「そう言えば、時間も聞いてなかったなぁ」
まだ朝も早いし迷惑かな……とも一瞬思ったが、正直待ちきれないので支度して出発する事にした。
敷地面積の割に社が小さく、代わりに妙に緑が多いその神社は、実は以前からよく来る場所だった。
何故なら、ここに祭っている神様は猫なのだそうで、その為か猫の出現率がとても高いからだ。
「でももし本当にここにいるのなら、とっくに出会えててもおかしくないのに……」
言われた通り本殿を左に迂回し、確かにあった玄関っぽい場所のインターホンを鳴らす。
少しするとドアが開き、ボスネコさんが姿を表した。
「おはようございます。早かったですね」
「もう待ちきれなくて」
「むぅ……テンションは正常ですね。とりあえず中へ」
ああ、やっぱり出会ったあの日の印象を引きずってたのね。
「残念ながら、まだ姿を表していません。なのであなたの都合の限り、ここで待っていただく事になります」
居間らしき部屋に案内され、お茶が用意された状態でそう告げられた。
「あの~、探しに行っちゃ駄目ですか?」
「ほぼ初対面の相手の家屋を家捜しは感心しません」
ごもっともで。
「ですが、僕の務めを手伝ってくださるのならば、その合間に探しても良いでしょう」
「分かりました。何をするんですか?」
「今日は主に、猫達の寝床の掃除です。あなたには僕が掃除する間、そこの主を引き付けておいてもらいます」
「つまり、猫と遊んでいれば良いんですね。楽勝です」
「随分な自信ですね。まぁ期待するとしましょう」
「あっ、そうだ!」
「何です急に」
「この前聞きそびれちゃいましたけど、あなたのお名前は何て言うんですか?」
「そう言えば、まだ名乗っていませんでしたね。僕の名は河津武史です」
それから私は、この神社(?)で飼われている数匹の猫とじゃれ合う事になった。
どの子も見覚えが無かったので聞いてみると、この子達は室内飼いで、外には出ないのだとか。
「なるほど、どれだけ外を探し回っても会えない、未だ見ぬ猫はたくさんいるんだね。きっとあの猫も……」
なんて考えつつも一緒に遊んでいると、いつの間にかお昼になっていた。
「確かに、言うだけはありますね。おかげで随分捗りました」
そう言いながら昼食にとおにぎりを出してくれたので、遠慮無くいただく事にする。
ついでに河津君についてもいろいろ聞くと、こちらにとって意外な事実が判明した。
「えっ、河津君って私より年下だったの?」
「……いきなり砕けましたね」
「いやぁ、堅苦しいのは苦手で」
「でも、そっちの方があなたの雰囲気には合っている気がします……おや」
会話の最中にふとあさっての方を向いた河津君につられてそちらを向いた瞬間、私の身も心も全てが硬直した。
「いらっしゃいましたか、猫神様」
群を抜く大きな身体に、神々しさすら感じるふさふさの毛。
間違うはずも無い、あの時私を家まで送ってくれた猫。
「あ……あ……」
言いたい事、掛けたい言葉はいっぱいあったはずなのに、全く声が出せない。
ついでに体も動かない。
それなのに、目から溢れる涙だけは、むしろ止まらなかった。
次話から急にファンタジー化します。




