全てはその胸元の為に
テレビカメラが上空からごみ処理場を映す。
その横にはスラム街があった。
そう、過去形である。
いまはごみ処理場の横に、ちょっとこじゃれた住宅地があるように見える。
テラが最初に建てた小屋は、今はちょっとしたデザイナーブランドの家のように見える。
豪華さと閑静さを兼ね備えた家の前には、青々と芝生が茂っている。
ニュース番組が始まり、テレビの前のソファーに三人で座る。
白い制服を着たリュートとチチは、画面に釘付けである。
少し背が高くなった彼女たちは、胸もあわせて成長している。
ばれない様に、二人の胸をしたからタプタプする。
大丈夫。バレてないぞ。たぶん。
画面にテラの写真が表示されて、キャスターが彼を説明する。
突然現れた外国人による、スラムの改革。
それは、私財をなげうって行われた、新しい町の創造。
様々な知識人が彼を称賛する。
スラムに現れた聖者であると宗教家が語る。
経済学者はスラムの活性化により、得られた経済効果を並べ立てる。
市民たちは、皆彼が大好きなのだ。
市民権を持たない、おそらく違法入国であろう彼に、国は異例の措置を取った。
市民権を与え、国民として迎え入れることになった。
画面の中では国の大臣が現れて、同じく画面の中のテラと熱い握手を交わす。
次の市長選では、当選確実と言われ、町には彼を大統領にすべきだとポスターが張られている。
娼婦街は、今は観光名所となっていて、レストランやホテルが立ち並んでいる。
海外資本ではない、地元民の経営のホテルは、好評を得て、いつも予約が埋まっている。
海外でも彼の名声は高い。
おそらく、世界で一番有名な人になりつつある。
彼は順調に、この星の侵略を進めている。
いまや、この国に彼に逆らうものはいないだろう。
この星を手中にするのも、不可能ではないかもしれない。
しかし彼は手元に少女を二人置いて、あとは何も求めることが無かった。
世界は常に彼を求め続けていたのであるが、気にもしていない様子だった。
彼の関心は、常に胸元にあったのだ。