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四季神  作者: ノノギ
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第二十九話 誤解

 日が高く上って真上に来たとき、双輝は表情を暗くして戻ってきた。そして、四季剣たちを見回して、ヒコウを選択して一言言いおいて家を出た。ガスイ、クレハ、スイセツは、硬直していた。言い置いた一言は。

「森へ行って来る」

銀葉はその意味がわからなかった。みんなに問うても応えてくれない。銀葉はどんどん不安が募っていった。

 もうすぐ夕暮れ時になるという時、双輝が戻ってきたらしく、村がざわめいていた。それを確かめるために、みんな外に出ると、相枦が笑っているのが見えた。

「さすがだな!2本しか持っていない割にはお前、なかなか出来るじゃないか!」

は?どういう意味だ?理解できずに固まる。

「何があった?」

村人に小さな声でスイセツが尋ねた。

「聞いていないのかぃ? 相枦さんが、双輝に妖怪を斬って来いと言ったらしいんだ」

「!?」

「それで、今斬ってきたらしいぞ・・・?」

「・・・・そうか。ありがとう」

「いや」

双輝が妖怪を斬った?何? 銀葉は頭が真っ白になった。何がなんだかわからなくて、銀葉は家に帰り逃げた。

「銀葉・・・!」

「ほうっておけ」

ガスイの反応にスイセツが止めた。

「双輝・・ほんとうに斬った・・・?」

「・・・斬ろうと思っても、ヒコウが斬らせないんじゃないか?」

クレハの質問に不安に満ちた回答をガスイが言った。

「わからない以上、変な思考は持たぬほうがいい。今はただ、双輝を待つべきだ」

「おう・・・」

「うん」

スイセツの目に宿る光は一体何色だっただろうか。

 長い時間待っていると青ざめた双輝がヒコウと一緒に戻ってきた。

「双輝!」

「あぁ・・・。疲れた・・・・」

「お疲れ」

「・・・・話、しようか」

双輝はそういったが、銀葉は何かが切れたように立ち上がって双輝の前にずかずか歩いて行った。

「どうして?! どうして妖怪を斬ったの!?」

「銀葉・・・あの・・・」

「冗談じゃないよ!妖怪と仲良くなりたかったんでしょう!?なのに、どうして斬ったりなんかしたの!?」

「・・・・」

「裏切るようなことして!」

「違うんだ、銀葉・・・」

「違くない!双輝はやっぱり妖怪より人間のほうが大事なんでしょう?!」

「銀葉・・・!」

「最低だよ!」

パシーンと、乾いた音が部屋に響いた。銀葉は双輝を叩いて家を飛び出した。その行為に双輝は苦痛に歪んだ顔をした。スイセツが立ち上がって銀葉を追おうとしたのを、双輝が止めた。

「・・・やめてくれ。俺が悪い」

「・・・・・俺は、はっきりと物を言わなかった双輝を怒るぞ。そして、何も聞こうとしなかったあの女を憎む」

スイセツはそう言って別の部屋へと行ってしまった。

「あたしは追うよ」

ヒコウはそう言って家を出た。

「ガスイ、クレハ・・・。俺は、妖怪を斬ってなどいない・・・・」

二人は深く頷いた。

 銀葉は泣きながら走っていた。息が切れて、苦しくて。膝が折れた。苦しい。苦しい。

「どうしたの?」

後ろで声がした。

「トキ君?!」

爽やかな表情をする青年、トキ。

「涙なんか流してどうした? せっかくの顔が台無しだよ?」

トキがそっと、銀葉のほほに触れた。気が緩んだせいか、銀葉からはさきよりも大量の涙があふれた。

「何があった?オレでよければ聞くよ?」

「私・・・」

銀葉は、経緯を時に話した。

「それで私は、双輝を殴って家も飛び出した。でも・・・」

「ソーキは妖怪を斬っていないだろう?」

トキは銀葉の言葉をさえぎってそう言った。銀葉は驚いた。

「な、何で判ったの?!」

すると、トキはきょとんとして固まった。トキの中では、『しまった!失言だった!!』と、焦っていた。だが、銀葉にそれがわかるわけもなく。

「泣き方と語り方かな?」

トキはそういった。

「ソーキを殴ったことを悔いているようだったからさ」

「あ・・・。 うん。ヒコウが追いかけてきたんだ・・・・」

―双輝が妖怪を斬る?出来るわけないじゃん。そんな事も判らないで最低はどっちだ?

ヒコウはそう言って踵を返して姿を消した。

「大丈夫さ。ソーキはそこまで心の狭い奴じゃないし、四季剣たちだってそうさ」

銀葉は言い切ったときに少しだけ疑問を感じた。しかし、この時の銀葉は大きな過ちを犯していた。気づかねばならないことに、銀葉は気づいていない。

「だから、気にする必要なんてな・・・」

トキの言葉がここで切れた。トキを見ると鋭い目つきでどこかをにらみつけた。

「と、トキ君・・・・?!」

すると、トキは何も言わずに銀葉を自分の胸元に引き寄せた。頭をしっかりと持って。その行動に驚いて、トキの名を呼ぼうとした瞬間、凄まじい爆発音が当たりに響き、地面が大きく揺れた。

「何の音?!」

「爆破だ・・・」

「え?」

「どこぞの馬鹿が妖怪に喧嘩を売ったらしい」

今までに見たことのないくらい凄まじい目つき。それに驚いている銀葉にコロッと表情を変え、声を掛けた。

「この森を出てソーキの所にいきな。オレも準備が出来たら追いかける」

「う、うん・・・・」

銀葉は森から出るために必死で走った。


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