第十五話 真相
しばらくして、巫女がこの村を出るとの報告を受けた。だから、双輝は銀葉をつれて表へ出た。
「護人さん、いらっしゃる?」
巫女の涼やかな声が鳴り響いた。双輝は、一瞬ためらい、前に出た。
「何で迷ったんだろう・・・?」
ぽつりと言った一言だが、後ろから着いて来ていたクレハが小さな声で笑いながら言った。
「護人って、今二人いるでしょう?だから、自分を呼んだのか解らなかったんだよぉ~。巫女様に呼ばれるんなんて早々無いことだから、我先にって行くのが普通なんだけどねぇ」
双輝は謙虚なんだ。
巫女が双輝を呼んだ事に村のみんながざわついて話をしていた。
「双輝、大丈夫か?お叱りでも受けるんじゃ・・・」
「お叱り?」
うっかり口を挟む。銀葉はすでにこの村の一員となっているらしく、村の人は素直に教えてくれた。それもとてつもなく小さな声で。
「双輝は、ほら。四季剣の数を誤魔化しているだろう?巫女様がそれに触れて問い詰められたら・・・って、考えると、心配だなぁって、事さ」
「なるほど・・・・」
双輝は巫女様の前で頭を下げた。巫女は、双輝の耳元まで近寄ると、小さな美声で発した。
「いつまでも隠し通せるものではありません。しかし、この村が危機に瀕したわけではありませんから、私もどうということは申しません。ですが、危機に瀕したにもかかわらず、使わぬのは、いかなるものかと思います」
「・・・・存じております。 大変、申し訳ございませんでした」
「構わぬわ。現に、貴方は嘘は吐いていなかったものね。大丈夫ですよ」
巫女に深々と頭を下げると双輝は足を下げた。それと交代するように銀葉が巫女の前に立った。
「あ、あの、少し・・・話をしてもいいですか?」
「銀葉!?」
想定外の銀葉の行動に驚く双輝。しかし、巫女は銀葉の申し出を肯定した。双輝に下がる様命じ、銀葉と少しだけ顔を近づけて話した。
「あの、双輝に巫女様、護衛の依頼が来ないんです。双輝は腕もいいはずなのに、どうしてですか?! 無能なんですか?!」
巫女は銀葉の疑問を聞いて、小さく笑った。そして、それを否定して話した。
「この村は本当に美しい。古風な感じも残っていて、妖怪に襲われた形跡も無いすばらしい村です。だから、周りの護人が見たがるのですよ。護衛をしたいと依頼をすると、その依頼が通ります。ですから、依頼をしないこの村の護人は後回しになる、それだけですよ」
「そうなんですね?! よかったぁ~」
「面白い人ね」
「え?」
「会って間もない護人の心配をするのね」
「いや・・・コレも何かの縁!って・・・」
巫女はまたも小さく、しかし本当に可笑しそうに笑ってくれたことに、銀葉は何か嬉しさを感じていた。