表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
壊れかけの聖女に俺がインストールされたらしい  作者: あまぐりムリーパー
魔獣

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

66/74

誰がお嫁さんになるか

 暗闇の中で、自分自身と向き合っている。


 夢の中で、自分と会うとは思わなかったけどな。


 にしても。座り方だとか、仕草がやけに女の子っぽい気もするけど。

 ……これ、本当に俺か?


「ねえ、気になる?私のこと」

「そりゃなるだろ」

「分裂したんだよ、男のつもりの私」


 くすり、と笑うその表情も俺らしくない。


「その、男のつもりって何?」

「そのままだけど。例えば、私はもう自分のことははっきりと女の子だと思ってるの」

「……見た感じそうだよな。すげー複雑だわ」

「君も、もうだいぶ女の子でしょ」

「……は?」

「だから、あんまりよくないよね?」

「いやいやいや」


 なんて言った?俺がもうだいぶ女の子だって?


 そんなつもりないけどな。別に、今でも俺は自分のことを男だと思ってるし。


「たぶん、気付いてないだけだよ?私たちはもう、だいぶ女の子」

「……そんなわけねーだろ」

「あるよ。ディオネの体にいて、魂が混じりあってた時の影響が残ってたのも、きっと原因の一つだけど。それに、新しく生まれたこの体だって、女の子でしょ」

「……それは」

「そう、女の子の意識があるからこの体なんだと思うよ?」


 ……確かに、気になってた。なんでこの体、女の子なんだって。


 でも、そんなはずないし。


「気に入らないみたいだね?他にもさ、最近よく抱き締められてるでしょ」

「それがなんだよ」

「それってさ、至近距離で女の子に近づかれてもドキドキとかしなかったでしょ」

「……だから?」

「女の子同士だと思ってるんだよ、きっとね」


 なにそれ。確かに、ドキドキしたりはしないし、むしろ安心感とかはあったけどさ。


 だからって、そうなるか?


「逆に、今の私たちは男の子に抱き締められるとドキドキしそうじゃない?」

「何言ってんの、お前……?」

「抱き締められてみたいな、男の子に」

「……ほんとに何言ってんの?」

「お嫁さんになってみたいって思うでしょ」

「話聞いてくれる?」


 ダメだ、こいつ自分の世界に入ってる。


 ……っていうかさ、俺と同じ存在でそういうこと言うのやめてくれない??


 なんかさ、なんていうか。羞恥心とかそういうのがごちゃ混ぜになってて、こう、反応しづらいっていうかさ。


「あはは、うろたえてて面白いね」

「お前さあ……」


 冗談かよ。質が悪いな!


「いや、お嫁さんにはなってみたいよ?ほら、女の子の将来の夢でよくあるでしょ」

「そっちは本気なのかよ」

「うん。それだけ愛されてみたいなって、思うのも自然だと思うけどね?ねえ、私。お嫁さんになるなら、誰のお嫁さんがいいかな」

「……急に、なんて話題を振ってくるんだよ」


 ……誰のお嫁さんに、か。


 これってさ、そもそも女の子と付き合うとかそういうのはなしになるのか?


 そういう意味だと、こっちの男の知り合いってあんまいないしな。自動的に、シリルとイェルク辺りにならない?


 ……いやいやいや、何を真剣に考えてるんだ。


「イェルクはさ、そもそもそういう感情を持ってるかわからないよね。めちゃくちゃアプローチしても、友人として扱われそう」

「うわ、なんか想像しやすい話をするな」

「対してシリルはもう私のこと好きじゃん?」

「……ずっとお前、答えにくいこと言うじゃん」

「これは、そういうことだよね」

「おい」


 そういうことってなんだよ。お前、もう狙ってるの?


「まあでも、私たちには根本の男の体もあるわけで。そうなると、この分裂ももしかしたら男も生まれてきそうだよね」

「……そもそもなんだけど、お前はどうやって分裂してきたんだよ」

「うーん、なんだろうね?なんかね、一つの体では力を持て余してしまうみたいだから。勝手に分散しちゃったんだと思うよ?」


 ……分散?

 確かに、なんか俺の力ってすごい溢れててやばいかなーって時もあったけど。そんなはち切れそうなレベルであったの?

 マジか、すごいな。


 いや、すごいとかそういう問題かはわからんけど。


 だって、このままだとまだ分裂するかもしれんじゃん。そうなると制御とかできないし。


 何人もいる俺が好き勝手に動き出したら面倒くさすぎる。


「で、どう?」


 ずいっ、と俺が目の前まで近づいてきた。


「何が?」

「ちゃんとわかった?女の子になってるって」

「なってねーって」

「ふーん。……じゃあ、私は女の子が好きなの?」

「そうなるんじゃない?」

「へえ」


 離れてから、にやりと少しだけ口角が上がる。


「じゃあ、ディオネと幸せになってみる?」

「……なんか、お前の話題ってずっと急だよな」

「どうせならさ、ディオネを連れて現代まで行っちゃいなよ。駆け落ちするって、言ったこともあったよね」

「いやあるけどさ」

「こっちでは私がシリルと遊んでおくからさ」

「おい」

「他のみんなとも遊んでおくね」


 こいつ。


 なんだよ、遊んでおくって。全部、本気で言ってるのかわからんし。


「あっ、そうだ。私も勝手に行動していい?」

「いや、ややこしくなるだろ」

「えー。男の子と触れ合いたかったな」

「なんだ、この不純モンスターは」

「あはは、不純モンスターだって。イェルクとシリルどっちも狙ってもいいかな?」

「いいわけないだろ、バカ」

「そっか。やっぱり、シリルにしようかな」

「……だから、勝手に行動しようとするな」


 本当になんなんだよ。いや、ほんとにこれ俺か?偽者だったりしない?してくれよ。


 もう頭が痛いんだけど。


「えー、けち」

「しょうがないだろ」

「じゃあ、私が行動するからそっちが休んでてよ」

「それだとお前が何やからすかわからないじゃん」

「お嫁さんになりに行くだけなのに」

「それがダメだって言ってんだろ」

「わがままだなあ、私って」

「無茶苦茶すぎる」


 本当に誰か助けてほしいな。

 っていうか、シリル。逃げてくれ、マジで。


 俺がとても複雑になるから。


「逆にそっちの好きな女の子聞かせてよ」

「……知らんって、そんなん。どいつもこいつも、こんな酷い世界で頑張ってるガキってことしかわかんねーし」

「それもそうだね。でもさ、ディオネに関してはちゃんと責任取った方がよくない?」

「……何が?」

「あの子の心を完全に奪ってしまった責任?いや、他の子のも割と奪ってる気がするけど」

「もういいよ、話がややこしいな。とりあえず、お前は待機。勝手に動くなよ」

「けち」


 とりあえず、こいつを制御しないと始まらない。


 ……疲れる日々が続くなあ。


「あっ、そうだ。寂しくて抱き締められたい時ってあるじゃん?」

「またなんか言い出した」

「その時、私がやってあげようか?」

「自分同士で抱きついてどうするんだよ」

「んー、ダメか。安心した隙になんとかしていけるかなと思ったのに」

「油断も隙もないな」


 とりあえず、こいつのことは考えないことにするか。


 なんかさ、シリルの横に女として並び立ってる俺とか想像しそうになるし。


 それから逃げても、ディオネと現代にいる風景とか思い出しそうだし。


 なんとか現実逃避をしたいな、と思ってるとようやく視界がぼやけてきた。


 ……夢も、もうこりごりかもしれん。寝よ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ