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【ぷろろーぐ】 弾ける閃光

ここは、西暦3000年の世界。

【第四次世界大戦】が終わってから11年が経った。

あの時は2歳だったからそんなに覚えていないけど、ずっと煙たくて、ずっとどこかで何かが光って爆発して、ずっとどこかで血の匂いがしていたのは覚えている。

私が住んでいるのは、特に復興が早かった【トウキョウ地区】の中でも一際元気な【第七地区:通称シブヤ地区】。

今日もこの街は賑やかで、サイバーで、ちょっとオシャレ。


私はいつものパーカー型作業服に着替え、履き慣れた靴を履き、そして愛用している【フロートボード】を手に取ってドアを開けた。

「ナナーっ、行ってきまーす!」

私は大声で、家にいる【ナナ】に呼び掛けた。

ナナとは、お父さんが私が生まれた時に作った【試作品77号機・ナナ】の事だ。

私が赤ちゃんの頃からずっと、そばに居て遊び相手になってくれて、時には勉強の先生にもなってくれた。

「待って下さい、作業用ゴーグルを忘れています。それに今日は、私もひより様の実習についていく日でしょう」

玄関の奥、リビングからナナの冷静な声が聞こえて来た。

「ひより様、ゴーグルです。では早速向かいましょう」

そう言って私にゴーグルを手渡したナナは、完璧と言っても良いほどに準備が出来ている。

ゴーグルと作業着を身に付けるのは勿論、手にはナナ専用のフロートボードも握られていた。

「さっすがナナ!じゃあ早速しゅっぱーつ!」


元気の良い声を発した後、私はフロートボードに片足を乗せた。

そして、もう一本の足で滑らかに地面を蹴る。

そして、フロートボードが浮遊し始めた。

心地の良い風が頬を掠める。

「ひより様!安全速度を時速約3km超過しています!」

後ろからナナの声が聞こえてくる。

もっと早く移動してお父さんの研究所に行きたいから、ナナには悪いけど先に行こう。

「ごめーん、ナナ!でも今日は見逃して!」

もっともっとスピードを上げ、軽やかに街を移動する。

途中で、近所のいろんな人から「ひよりちゃんは今日も元気だね」って言われた。

街頭ホログラムには、アナウンサーたちが焦り顔で【ネオ・チクシュルーブ】って難しい言葉の話をする映像が流れてたけど、何なんだろう。


すると、向こうの角からフロートボードに乗ったナナが起こり顔でこっちに向かって来た。

「ひより様!危ないでしょう!」

と言いながらナナは私のフロートボードの速度ホログラム操作し、【ゆっくり運転モード】に変えた。

打って変わってゆっくりとした速度でフロートボードは町を進む。

「本当にごめん!フロボ乗ってたらテンション上がっちゃって」

本気で怒っていそうなナナに、私も本気の謝罪で対応する。

「全く……ひより様の距離と私の現在位置から最短ルートを判断するの、大変だったんですよ!」

顔のモニターに表示されているナナの目は怒ったままだ。

「でも……ひより様に怪我が無かったのなら安心しました」

少し照れ気味の顔でナナはそう言い、私から少し目をそらした。

それが嬉しくて、私は思わず頬を緩めた。

「なっ、何笑ってるんですか……行きますよ!」


フロートボードですいすい進み、町の外れにようやく着くことができた。

無機質で、豆腐みたいな白い建物が私のお父さんの研究所だ。

よく見ると、お父さんが外に出て手を振っている。


嬉しくなって手を振り返そうとした時、強い光と熱い空気が私の身体を突き刺した。

周りが真っ赤な炎に包まれていて、何も見えない。

風も強いから、近くにあった色んなものが飛び上がって私にぶつかって来る。

熱いし、何より痛い。

ナナは大丈夫なのかな。

そんなことを考えていたら、少し眠くなってきちゃった。

じゃあね、おやすみ。



「ひより様……ひより様……ひより様っ!」

どこかからナナの声が聞こえている。

良かった、生きてるんだ。私も、ナナも。

ゆっくりと目を開けると、衝撃的な世界が広がっていた。

カラフルだった街並みが無くなり、瓦礫でぐちゃぐちゃになっている。

さっきまで晴れていたのに、さっきの衝撃で壊された建物の欠片で曇り空になっている。

そして何より――お父さんの研究所も、粉々になっていた。

「っ……お父さん!」

急いで駆け寄るけど、お父さんの姿は見つからない。

後ろではナナが、悔しそうな顔で首を横に振っている。

「放射線の安全量を遥かに超えています……恐らく、先程の衝撃によるものかと」

「ナナ!お父さん、生きてるよね!」

ナナは少し驚いた顔をした。

そして、数秒経った後――

「残念ながら、周辺にお父様の肉片と見られるものが複数個発見されました……仮に負傷箇所がそこだけだとしても、もう助からないでしょう」


数秒間、気まずい沈黙が流れていた。

「やっぱ……そう、だよね」


こうして、私たちの【あぽかりぷす】が始まった。

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