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転生者

せっかくクロッカス殿下と話せるので、気になっていた事を尋ねてみる事にした。


「質問してもよろしいですか? 『真実の水鏡』の件は結局どうなったのでしょうか。教えていただける範囲で結構です。私も気になっていたので」


 行方不明になっていた鏡をアネモネが何故か持っていた。

 殿下が後で使用人達にも尋ねると言っていたし、何か進展があっただろうか。

 前回、謎が多い部分なので気になった。


「それが鏡を持ち込んだ者を誰も目撃者がいない。元々訪ねる人間も少ない屋敷だ。不審な人物や訪ねて来た者がいたらすぐにわかるはずなんだが......」


 クロッカス殿下も難しい顔をしている。

 結局、現状は何もわかってないのか。

 殿下から目線を向けられたグレイ隊長が口を開く。


「魔法を使用した痕跡ならアネモネ様の部屋の前であったが、逆にそれしか反応がないそうだ。まるでワープして入って来て、またワープで出て言ったようだとな。そんな事可能なのはお前の保護者くらいだろうが、あいつは否定してたから違うだろ」

「そもそも魔法の痕跡を辿れるのはあいつくらいだから、犯人ならわざわざそんな事言わないだろう」


 殿下が更に補足してくれる。

 魔法の使用した痕跡なんて、どうやってわかるんだ。私にはさっぱりだ。

 院長はやっぱり凄い人なんだろう。


「ということは、院長もあの後あの屋敷に来てたんですね。お元気そうでした?」

「...? 会っていないのか?」


 クロッカス殿下が不思議そうに首を傾ける。


「はい。孤児院を出てから一度も」

「あいつは何よりお前の事を優先すると思うのだが……。そうか、今度会えたら私からも言っておく」


 院長、やっぱり私の事を避けてるのでは?

 しかし殿下の口添えは心強いな。また会える時までに拳を磨いておこう。


「そもそも、『真実の水鏡』は私が持っていたからな。私の所から盗まれていたのも問題なのだが」

「え?」


 クロッカス殿下からしれっと衝撃的な一言が飛び出した。

 確か殿下はフラックスの父親が起こした反乱の後、アネモネはあの鏡を見て壊れてしまったと言っていた。

 アネモネは殿下が保護してるんだから、鏡もそのまま殿下が所持していたって事!?


「じゃあフラックス様に言っていたのは……」

「嘘に決まってるじゃないですか。彼がアネモネ様のように壊れたら困ると殿下はおっしゃっていたので」


 アンバーもしれっと返してくる。

 ちらりとグレイ隊長を見ても、特に驚いた様子はない。全員グルか。


「私が亡くなったらフラックスには返す手はずになっていた。……その前に誰かが持ち出したようだがな」

「殿下がわざわざ隠してしまっていた物を、気づかれずに盗むなんて普通無理だと思うのですがね」


 アンバーの補足の通り、殿下はアネモネの部屋に施していた結界が破られたら即気づくような人だ。

 そこでふと、アネモネの時の事を思い出した。

 最初フラックスを連れて逃げる時に、凍ってもいない扉が開かなかった。

 あれはゲーム上の展開で、ボス戦からは逃げられない仕様だったからだ。

 もしゲームの仕様が人にも対応していたら?

 『真実の鏡』を手に入れる、というフラグが立っていた状態になれば『偶然』人目につかず手に入れる事ができるのでは……?

 そんなことが出来るのは、私と同じ『転生者』しかいない。


 いや、まさかな。


 いくらここがゲームの世界だって、現実に生きて息をしている人たちが生きる世界だ。

 ゲームの仕様が人にまで干渉できるとなると、それこそ『転生者』が好き勝手出来る世界になってしまう。

 でも現状、ゲームの内容と大幅に変わっている所はないと思う。私が関与したこと以外。

 そんな中、わざわざ関与したのが危険を冒してアネモネに鏡を渡すこと?

 それは流石にないだろう。

 私だったらもっと別に使う。

 だったら『転生者』が関与したと思うのは、私の考えすぎだな。


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