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異世界

 挨拶もそこそこに、スノウにずっと抱っこしてもらうのも悪いのでソファに座らせてもらった。

 スノウは流れる様に私の隣に座った。

 そしてスノウはそっと私の手に手を重ねた。


「お姉さまがいなくなって一年、ずっと寂しかったです。またこうしてお話しできるなんて、夢見たいですわ」

「一年!? 向こうでは一週間くらいだったのに……」


 道理でスノウがしっかりするわけだ。

 確かに私がこちらで十年過ごしても、元の世界では二か月半だった。時間の経過が異なっているのは明白だ。

 それなら少しくらい、こっちでゆっくりしていても大丈夫かな。向こうからしたら一瞬だろう。親や妹が心配することもない。

 そんな事を考えていたら、院長が私の隣に座った。スノウと院長で私を挟む形である。


「だからサクラを迎えに行くのも大変だったんだよ。異世界なんて星の数ほどあるし、時間の流れも曖昧だから、過去に繋がったり未来に繋がったりさ」

「そんな不安定な状態なんですか。……ん? それって私を連れてくるのも結構危険な賭けだったのでは?」


 別の世界に渡るなんて法外な魔法、早々使える物じゃない。

 しかも世界同士の橋渡しもない。かなり危険な状態だ。

 私が睨むと、院長はドヤ顔で胸を張った。


「勿論、凄く危険なことだよ。でもボクは失敗しないさ」


 無駄に自信満々だ。流石、院長。

 呆れていたら、対面に座ったクロッカス殿下が苦笑していた。


「オレも危ないから止めておけと忠告したんだけどな。アンバーが『サクラが帰ってこないならこんな世界滅ぼしてやる』って駄々こねて泣き喚いてたから……本当にやりかねないし……」

「兄上も説得したし、俺も殴って止めたんだけどな」


 クロッカス殿下の隣に立つグレイが呆れた顔で院長を見ている。

 一方で院長は殿下の言葉もグレイの視線も全く気に留めていない。にっこにこの笑顔で私とスノウを見ている。

 ここは私が苦言を呈さなければ。


「良い大人なんだから、他人に迷惑かけないで下さいよ」


 私情で世界を滅ぼそうとするな。恥ずかしくないのか。

 そんな心情を込めながら再度院長を睨む。

 しかし院長はきょとんとした顔で首を傾げた。


「他人じゃないよ。ボクは義兄(あに)と幼馴染にしか迷惑かけてないから!」

「そういう意味じゃないんですよ。お世話になってるなら猶更迷惑かけないで下さい!」


 思わず院長の腕をぺちぺち叩くが、全く反省している様子はない。

 むしろ、なんか嬉しそうである。


 離れてたせいで、親バカが極まった気がするな……。





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