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大食の侵襲 -異世界からの肉食獣-  作者: 林海
第二章 人外のふたり

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第44話 次の階梯(ステージ)へ


 今は戦時下という言葉の重さを噛みしめるとともに、本郷の妻は確認しておかねばならないことに気がついていた。

「ルイーザさんがこちらに来たことまで、すでにあなたたちは知っているのですね?」

「我々は、知ることが仕事です。まして、彼女の銀髪は目立った。」

 菊池の言葉は、気負うところない淡々としたものだった。だが、それは他の職業とは違うという自覚をうかがわせ、放つ言葉の凄みを増しさせていた。


挿絵(By みてみん)


「では、その旨も伝えていいのですね?

 あなたたちがどこまで知っているのかということを知らせることになりますが……」

「お心遣い、ありがとうございます。

 ですが、情報を得ようとするとき、こちらからも情報を渡さねばならないのは当然のことです。どうぞお気になさらず。

 それから、鳴滝にお伝え下さい。今まで詐欺のような金の売買が見逃されてきたのは、中学の時の同級生の双海と菊池のお蔭だぞって」

 笑みを含んだ菊池の言葉に、本郷の妻はすべてを悟って改めて震え上がっていた。


 眼の前の2人の男たちは底が知れない存在だとは思っていたが、その底は遥かに深かった。自分たちは泳がされていたのだ。それも、いつからかはわからないほど昔から。

 だがその結果、ダーカスの世界は救われていたのだ。

 鳴滝が異世界にとどまることを選択し、その結果、(きん)は再び何度も売られた。その売った(かね)でダーカスの発展は効率的に進められた。追加で金を売れなかったら、その発展はもっとゆっくりしたものになっていただろう。


 ダーカスのある世界、そこは魔素の奔流ですべてが焼き尽くされた世界である。魔素によってすべての金属は(きん)に姿を変え、あったかどうかは定かではない原油は燃え尽きている。

 鳴滝は魔素の流れを誘導し、安全な場所を広げ、植林と開墾をし、産業を立ち上げたのだ。

 だが、一番の問題は動力だった。水車ぐらいしか期待の持てるものがなかったのだ。燃料がないからエンジンは無理。モーターを作ろうにも(きん)は磁力を持たない。さらに本郷がハーバー・ボッシュ法によって、窒素肥料の量産を試みようとしたが、ここでも金という柔らかすぎる金属で圧力をかける難しさに一度は頓挫したのだ。

 金を売ったことと引き換えの強磁性金属と鋼材、そしてその加工のための文献による知識はどうしても必要だった。


「あなたたちの身元もわかってしまいましたが……」

「言ったでしょう?

 情報を得ようとするとき、こちらからも情報を渡さねばならないのは当然のことですから。それに、わかったからとどうこうされるほど、我々の守りは緩くはないのですよ。まぁ、あまり言いふらして欲しくはないですけどね」

 本郷の妻だけでなく、瑠奈とヨシフミも理解した。下手なことをすると、手痛い教訓を与えられることになるのだ、と。だって、双海と菊池とは話したが、その組織にどれほどの人員がいるのかは想像もつかない。とてもではないが、冒険をする気にはなれなかった。


「それに、私たちは今、同じ陣営で戦う者同士です。蒼貂熊に喰われて終わりたくないなら、協力し合うしかないんです」

「それはよくわかってます」

「内山さんたちにも、改めて協力をお願いいたします。これでまた新たな情報が入るでしょう。でも、私たちには魔素とか生気(プネウマ)の本質は理解できていない。これから国内でも最高峰の物理学者たちにも協力を求めていきますが、あなたたちの解説は絶対に必要です。

 よろしくお願いいたします」

 双海が最後にそう締めて、この場での話は終わった。だが、この場の誰もが、これが始まりだと感じていた。

第三章 電気工事士、がんばるぞ

第1話 御前会議

に続きます。


このお話は挿絵付きです。

日本での銀髪のルーですー。


花月夜れん@kagetuya_ren さまにいただきました。

感謝です!!!!

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