↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大食の侵襲 -異世界からの肉食獣-  作者: 林海
第二章 人外のふたり

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

187/278

第43話 持ち回り決裁


「では、こちらもきちんと話しましょう」

 穏やかな菊池の口調に、本郷の妻はすがるような目になった。

「これから所轄の刑事があなたの職場に行き、すべては誤認だったと謝罪します。息子さんのところもです。あなたたちに不利益がないようにします」

 この言葉に、本郷の妻は、眼の前の机に突っ伏して肩を震わせた。泣いているのか、深く安堵のため息をついているのかはわからない。だが、その背中に向けて菊池は言葉を続けた。


「我々は、蒼貂熊(アオクズリ)と、いや、蒼貂熊を送り込んでくる異世界の何者かと戦っています。その異世界の何者かは、こちらの世界を知っているとしか思えない。だから、過去において、なんらかの接触があったはずなのです。それを突き止めるため、こちらはオカルトまで含めていろいろな情報を洗っている。その過程であなたたちが浮かび上がった。

 だが、あなたたちが蒼貂熊を送り込んでくる敵の手先である可能性は排除できなかった。だから、このような手段になってしまった。このことについてはお詫びいたします」

 深々と頭を下げての本日2度目の菊池の詫びの言葉を聞いて、瑠奈はなんとなく双海と菊池の立場の苦労もわかるような気がした。


 疑うのが仕事。

 でも白となったら、信じるのが仕事。そのためには平身低頭もする。

 双海と菊池、この精神の力はどこから生まれてきているのだろう。


「今、本郷さんが話されたことが真実であるならば、我々はその異世界と協力関係を結びたい。その異世界の人間、銀髪の女性は一度こちらに来ている。こちらの世界も見たはずだ。だから、こちらが困っているのは理解していただけると思っています。子供たちが真っ先に襲われるような事態を看過しないで欲しい。

 こちらからそちらへの経済発展のための援助は惜しまない。だから、我々が滅ぼされないよう、情報をいただきたい」

 身を起こした本郷の妻の顔は、緊張ではなく、使命感で引き締まっていた。

 菊池の言葉に、自分の果たす役割の重要性に気が付かされたのだ。


「私の一存ではどうにもなりません。

 ですが、次の定期便のときに、今のお話を伝えることはできます。可能な限り、ご要望に沿うように伝えます。それでいいでしょうか?」

「ありがたいです」

 菊池は、本郷の妻の協力に、内心で安堵しているに違いない。だが、それを表情に出すことはない。あくまで穏やかに、静かに話を進めるだけだ。

 菊池が喜びを表情に出すとき、それはきっとすべての問題が片付いて、蒼貂熊が1頭もいなくなったときなのだろう。


「その場合、向こうの世界の誰に話を通すことになるのですか?」

「向こうは何人かの王様による、緩やかな合議制です。その中ではダーカスという国の王様が一番の権威を持ってます。国力が一番なのはリゴスです。その2国の王が同意すれば、大抵のことは決まるそうです」

「わかりました。次の定期便はいつでしょうか?」

「明後日です」

「では、明日中に公式な外交文書を用意します」

 この言葉に驚いたのは、本郷の妻だけではない。瑠奈とヨシフミもである。


「そんな急にできるものなんですか?」

「もう、この可能性は想定されていて、文書と根回し等の準備はできているんですよ。国名と政治的元首の肩書がわかれば、すぐに持ち回り決裁で出せます。

 もちろん、条約締結に至るなら国会決議なりが必要ですが、今回はあくまで提案の文書にすぎませんから。それに今は戦時下です」

「……なるほど」

 半ば呆然として、本郷の妻は口の中でつぶやいていた。

あとがき

第44話 次の階梯ステージ

次話で、この章終わりです。

場面はダーカスへ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。