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大食の侵襲 -異世界からの肉食獣-  作者: 林海
第二章 人外のふたり

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第33話 八方塞がり


蒼貂熊(アオクズリ)は、いくつかの例外の学校以外では、生気(プネウマ)を大量に得られるという成功体験を積んだ。ほぼ確実に、蒼貂熊はまたやる。それも、今回の失敗を反省し、より大規模に、より確実に、だ」

 双海の言葉に菊池は頷き、瑠奈とヨシフミは返事すらできなかった。蒼貂熊が学校などの無防備な施設に乱入し、その結果繰り広げられる酸鼻な光景が脳裏に浮かんでいたからだ。


 きっと次は特定の学校に絞って、多くの蒼貂熊が入り込む。

 こうなったら多勢に無勢、敵うわけもない。それこそ生徒、職員の全員が食われるだろう。


 なんとしても避けねばならぬ事態でありながら、どうにも打つべき対抗策がない。学校をいつまでも停止させてはおけない。1年間学校を停止させたら、蒼貂熊よりも人間の子どもたちの方に損失が大きい。リモートならいいとも言えないではないか。

 かといって、中高だけで1万5千を超える全校に、自衛隊を大口径兵器と共に常駐させるなど、できるはずもない。

 どのような手を採ろうにも、どうにもこうにもバランスシートが釣り合わないのだ。


 あとは、こちらから攻勢に出て、積極的に山の中の蒼貂熊を狩るしかないのだが、それをやったら異世界との戦争のステージが上がってしまう。次に異世界への通路からなにが現れるのか、想像もつかない。

 双海の説明を聞いて、瑠奈は今まで考えてこなかった可能性に血の気が引いていた。侵略される側にまわるというのは、ここまで打てる手を失ってしまうのかと思わざるをえない。


「法整備がされないと、もう動きはとれないな。敵の作戦目標が生気(プネウマ)の取り合いだとしたら、法体系そのものの見直しが必要となる。そもそもそんなものを想定していないのだからな。

 こうなると、我々が運用で泳げる範囲を越えてしまう。できることはなにもない。

 反攻作戦は進んでいるが、その秘密保持の任務にも限界がある。どこかでガス抜きしないことには、もう社会の治安が保たない。まぁ、生気(プネウマ)なんてものをネットもマスコミも想像できないだろうから、その秘密保持自体は楽だろうけどな」

「……皮肉だな。

 情報を得たからこそ、なにもできないことが明らかになってしまった」

 双海と菊池が話すのを聞きながら、瑠奈も考え込む。もちろんヨシフミもだ。


 だが、どうにもこうにも思考が袋小路に入り込んでしまう。八方塞がりというやつだ。

 そもそも異世界とのテクノロジー格差を考えれば、最初から負け戦にしかならなかったのだ。だが、その日が来るのを政府は、総力を上げて一日一日と引き伸ばしてきた。期待できるのは、核による異世界の究極的破壊による一発逆転しかない。なので、その機を虎視眈々と狙いながら、だ。

 これに失敗したら、人類は全員が生気(プネウマ)生産のための家畜に堕ち、蒼貂熊に喰われて生命を終えるのだ。


「もうどうしようもない。

 内山さんから聞いた話をレポートにまとめ、上に報告しよう。現場で判断できる範囲はとっくに越えている。新たな判断と方針を出してもらって、仕切り直しだ」

 双海がそうこの場を締め、4人は顔を見合わせてため息をついた。


「自宅でもどこでも、送ろう。また協力してくれ。なんらかの形で代償も払おう」

 双海が立ち上がりながら言う。

 そもそも何事もなく帰れるとは思っていなかったから、この言葉に瑠奈は内心で安堵のため息をついていた。

第34話 転機

に続きます。

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