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大食の侵襲 -異世界からの肉食獣-  作者: 林海
第二章 人外のふたり

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第32話 生気(プネウマ)から見た蒼貂熊の生態


「若くて柔らかく美味しい肉があるから、優先的に学校を襲ったっていうのが通説だったが……」

「もちろん、そういう側面も無視はできないだろう。だが……」

 この場の4人、全員が口からこの仮説を出すのをためらっていた。


 つまりこういうことだ。

 蒼貂熊は、生気(プネウマ)をこの世界から根こそぎ回収するために送り込まれてきた。謂わばこちらの世界に常駐する、バキューム掃除機のような存在なのだ。

 生きている生物の身体は、常に生気(プネウマ)を溜めようとしている。だが、宇宙の中でも太陽系のあるこのあたりは生気(プネウマ)が少ない。だから各生物の持つ生気(プネウマ)も少ない。

 だから、蒼貂熊は手当たり次第なんでもこちらの世界の生き物を喰ってきたのだ。


 そして、蒼貂熊だけに見られる特性、吐いてまで喰うというのもこの仮説により矛盾なく説明できる。

 個々の生物が溜め込んでいる生気(プネウマ)の量が少ないから、蒼貂熊は生気(プネウマ)を溜め込むために、たくさんの生物を喰わねばならない。狩った生物の肉は喰いきれなくて吐いても、生気(プネウマ)は吐かずに溜め込んでいるのだろう。


 そして、地球の食物連鎖の中で、すべての動物は他の生物を食う。あくまで、地球の自然の中では生気(プネウマ)の量が少なくて見えにくいというだけで、これについても食う食われるの関係が成立している。

 その上で、こちらの世界の生命に貯め込まれた生気(プネウマ)を集めるにあたり、最も効率よく喰おうとすれば……。

 全生物の中で、もっともさまざまなものを喰っている人類を選択的に喰うことに尽きる。生態系ピラミッドの頂点である人類のすぐ上に、蒼貂熊を付け足すのがもっとも手っ取り早い。


 そう考えると、現代社会で効率的に人間を喰うとしたら、学校を襲うというのがもっとも良い判断になる。そして、ついにそれが実行に移されたということだ。

 そして、この仮説を補強する、もう1つの状況証拠がある。

 病院があるのは市街地の真ん中だけではない。大病院になるほど郊外に移転しているものだ。そこにも社会的の保護される弱い存在が集団で生活している。なのに、そこは蒼貂熊に襲われなかったのだ。


 これも、今まで理由はわからなかった。だが、生気(プネウマ)という視点から考えれば当然のことである。単純に健康な個体の方が生気(プネウマ)が多い。それだけのことだ。


 そして、さらにもう1つ、双海だけが気がついていたことがある。

 人類がこの地球での生態系の頂点で、他の動物よりいくらかでも体内の生気(プネウマ)が多いのなら……。


 考えるまでもなく、超能力うんぬんの話に証拠はなく怪しい話である。怪神乱力を語らず、とはよく言ったものだ。だからこそ、瑠奈たちは歴史の影に隠れ続けることができたのだ。

 だが、その超能力うんぬんが生気(プネウマ)に由来するものだとすれば……。一見与太話に見えるそれが、人類に普遍的に多く語られる話だということの説明がつく。

 同時にそれは、他の生物にはないという説明までがついてしまう。怪しい話はいくらでもあるのに、完全な創作の世界以外では、超能力を使うライオンだの鹿だのという話はほぼ存在しないのだ。

 また、創作の世界でそのような設定がされたとしても、それが一般化して認識されることはない。

 つまり、人は意識下でも無意識下でも、超能力を使う存在は人であると定義づけているのだ。

第33話 八方塞がり

に続きます。

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