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第39話 レイネードと偏屈な鍛冶屋2

「マドックさん、こんにちは!」


「おお、レイネードの嬢ちゃんか! よく来たのう!」


 案内されてやって来たのは、いかにも頑固者の経営している店と言った風情の場所だった。


 路地の見えない場所に入り口があり、中も物で溢れかえっている。


 奥が工房になっているのかもしれないが、見た目は鍛冶屋と言うより(ほこり)っぽい雑貨屋だな。


「なあ、嬢ちゃんや。そこに突っ立っとる男は嬢ちゃんの彼氏かの?」


「え!? ち、違いますよー!!」


 レイネードが慌てた様子で手を振る。


「この人はセージさんと言って、私の師匠なんです! 魔法も体術もすごい実力で、私なんかじゃ釣り合いませんよ!」


「ふん! 師匠だと?」


 マドックと呼ばれた店主が、皺の刻まれた顔をこちらに向ける。


「師匠だのなんだの言って、実は嬢ちゃんが目当てなんじゃなかろうな! 一丁前に(つら)だけは良いようじゃが、ワシは騙されんぞ!」


 警戒した様子で捲し立てると、そのままそっぽを向いてしまう。


 どうやら、聞いた通りの偏屈な爺さんらしい。

 さてどうやって交渉に持ち込もうか。


「まあ、師弟の話は今はいいだろう。

俺は店主に依頼をしに来たんだ。モンスターの素材で武器を作成してほしい」


 まずは単刀直入に言ってみる。


 どうすれば依頼を受けて貰えるか分からないので、手探りの状態だ。


「断る!!」


 やはりそうか。

 一度そっぽを向いてからは、俺の顔を見もしないのでそうなるとは思っていた。


 剣術大会に間に合えばとは思っていたが、この様子では難しそうだな。


「まあまあ、マドックさん! とりあえず師匠の話だけでも聞いてくださいよ! ね?」


「……レイネードの嬢ちゃんがそう言うなら仕方ない。話だけは聞いてやるとするかのう」


 レイネードが説得すると、店主が少しだけこちらに体を向ける。


 レイネードに対して甘いと言うのは、どうやら本当らしい。

 最初の会話からも何となく分かっていたが、孫娘に接する祖父のようだ。


「この素材なんだが」


 使い古されたカウンターに、アラクネクイーンの糸を置く。


 今持っている素材の中で、一番レア度が高いと思う物だがどうだろうか。


「こ、これは……!!」


 店主が目を見開き、口を開けて糸を凝視している。


 これは……良いのかどうか分からないな。

 驚いてはくれてるみたいだが……。


「お気に召さなかったら他の店に行くが……」


「ま、待つんじゃ!!」


 素材を持って店を出ようとしたら、凄い勢いで店主に止められた。


「あるのはこの素材だけか!?」


「いや、他にもあるが」


 インベントリから、刀の材料になりそうな素材を取り出していく。


「これは、オーガの棍棒? いや! 重さ、質、大きさ、どれも上位の逸品じゃ!

それに、この鈍く輝く金色の甲羅も初めて見るのう……!」


 素材を眺めながら店主が独り言を言っている。


「やっぱりすごいんですか? マドックさん!」


「こりゃあ凄いなんてもんじゃないぞ! ワシが見た中で最高の素材じゃ! これをどこで手に入れた?」


「この街のダンジョンだ」


「なんと……この街か……!」


 驚いたのか、店主が少しよろめく。


「この街で長いこと鍛冶屋を続けておるが、どれもこれも初めて見る最高級品じゃ! さっきはただの若造と侮ってすまんかったのう……」


 店主が少し曲がった腰を折りながら、俺に頭を下げる。


 頑固な爺さんかと思ったが、一度認めてくれれば筋の通った人らしい。


 安心して任せられそうだ。


「それじゃあ、この素材で刀を作って欲しい。いくら掛かる?」


「金なんぞいるか! そんな素材を扱うんじゃから、こっちからお願いしたいくらいじゃ!」


「それはありがたいが……」


「いいんじゃ!! ただな、刀と言っても種類があるからの。目安になるようなのがあれば良いんじゃが……」


 インベントリから黒刀を取り出す。


「こういう奴なんだが」


「ほぅ、こいつはカイルが取ってきた刀じゃな」


「知ってるのか?」


「ああ、ワシに自慢した後、"相応しい使い手が現れたら渡したい!"などと言っておったが、お前さんなら納得じゃ!」


 今さらだが、そんなに良いものなのか。

 まずは店に置いてある刀を鑑定してみる。


――青銅の刀 攻撃力23

 作製者リヤル・ゴーイン

 青銅で作られた刀

 耐久性に優れる――


「次に黒刀を見てみるか」


――黒鉄刀(くろがねとう) 攻撃力112

 渓谷のダンジョン20階層ドロップ

 黒鉄蟲からのレアドロップ

 威力、耐久性共に高品質――


「全然違うな……」


 こんなに良い武器を貰ってたのか。

 今度カイルに酒でも奢ろう。


「それで、これと同じようなサイズの刀を作って欲しいんだが問題ないか?」

 

「もちろんじゃ! 明日の朝取りに来るといいぞい!」


 朝って……随分早いな。


「そんなに早くて大丈夫なのか?」


「舐めるでない! 終わらなければ、他の依頼を蹴ってでも終わらせてやるわ!」


 それは職人としてどうかと思うが、まあ熱を入れて作ってくれるのはありがたい。


「良かったですね! 師匠!」


「ああ、レイネードのおかげだ」


 レイネードの頭を撫でる。


 しまった、ついついやってしまった。

 やはりレイネードは弟子と言うより妹みたいなものだな。


「えへへ、師匠、くすぐったいですよ」


「なにをやっとる、セージとやら! ワシはお主の実力は認めたが、嬢ちゃんとの結婚を認めた訳じゃないからな!!」


 結婚とか何を言ってるんだこの人は……。

 師弟だと言ってるだろうに。


「け、結婚!? もう、冗談はやめてくださいマドックさん! 行きましょう、師匠!」


「ああ、また明日来る」


 レイネードが先に行ってしまったので、俺も続いて店を出た。

お読みいただき、ありがとうございます。

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