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第11話 冒険者ギルドで絡まれる

「それにしても、ここにいる連中はみんな若いな」


 試験まで暇だったので、何気なく辺りを見回してみる。


 俺がいる試験者の集団は、ほとんどが十代くらいの見た目だ。


 そして、まだパーティーを組んでいないのか、話し声が聞こえない。


「緊張してるのかもな。そしてあっちは……」


 酒場の方に視線をやる。


 いかにもベテランといった風情の冒険者たちが、複数人で酒を飲んでいる。


 彼らはオフの日なのだろう。

 酒の肴のつもりか、こちらを見定めるような視線を送っている。


「分かりやすい構図だ」


 とその時、酒場の集団から一人がこちらに歩いてきた。


「おい、そこの弱そうなお前!」


「……」


 スキンヘッドに刺青を入れた、筋骨粒々の男が睨み付けてくる。


 どう見ても俺に話しかけてるな。


「どうした弱虫? まさかビビってるんじゃねーだろうな? ぎゃはは」


 何を基準に弱そうと言ってるんだろうか。


 俺の身長は175cm付近なので、見た目ではないだろう。


 やはり、新規の試験者が珍しいんだろうな。


「ああ、ビビってるよ。

筋骨粒々のベテラン冒険者様に話しかけられたら、

誰だって怯えるだろう」


 面倒くさい。


 異世界系の小説でこういう状況は本当によく見かけたものだが、自分の番になると本当に嫌なものだな。


「……てめぇ、随分と余裕そうだな。

このAランク冒険者のゴッズ様に対して、良い度胸じゃねぇか、ああん!?」


「はぁ……」


 この手の輩は、どう対処しようが結局こうなるんだろうな。


 というか、こんな奴がAランク冒険者で、しかも名前が(ゴッズ)って……。

 名前負けも良いところだろう。


「その辺にしなさい、ゴッズ!」


 酒場の方から、杖を背負った女性が歩いてくる。


 その女性が魔法使いであることは見た目で分かるが、ピンと伸びた背筋と凛とした面差しから、ただ者で無い事が分かる。


 そして、美しいエメラルドの髪を払う仕草からは、気品が漂っている。


「おう、おう。

これはSランク冒険者のアリシア・メイガス・ミズダット様じゃねーか! 俺様に何の用だ?」


 こちらはSランク冒険者か、納得だ。


「フルネームで呼ばないで下さいますか。

今は冒険者のアリスです」


「へいへい、そんでお貴族のアリシアさまが、平民の俺様に何のようだ? 見ての通り忙しいんだが?」


 嫌味な男だ。というかどう見ても暇だろう。


「くっ……! ゴッズ、貴方は前回も新人の方を威圧していたではありませんか」


「威圧ぅ? 何の事だろうなぁ」


「いきなり話し掛けて、脅すような真似をすることです! みんな怯えているではありませんか」


 試験者たちが喋らなかったのは、こいつに怯えてたせいか。


 本当に暇な事をする奴だ。


「はっはっは! そんなもの威圧には入らねーよ!」


 ゴッズが笑ってから、横目で俺を見る。


 嫌な予感がするな。


「威圧っていうのはな……こういうことだ!!」


 そう言って、俺に物凄い速さで拳を付き出してきた……!


……。


 と言いたかったんだが、やはりというか拳は途中で止まってしまった。


「やっぱりか……。Aランク冒険者のパンチを上回る動体視力って、本当にチートだな」


 取りあえず鑑定してみる。


ーー種族 人間

  名前 ゴッズ・エルメスト

  スキル 重戦士


  ステータス

  HP1025/1025

  MP58/58

  TP115/105

  攻撃力   88

  魔法力   16

  防御力   125

  魔法防御力 131

  敏捷性   21

  命中率   55%

  回避力   3

  幸運    11


  状態 泥酔ーー


「こいつ、威張り散らしてた割には守りメインのステータスじゃないか」


 だが、守りに関してはAランク冒険者だ。

 流石に強いな。


「どうするか、試験前だしあまり面倒にはしたくない」


 そう思って、ギリギリで拳を避ける。


"ヒュンッ"


「はっ?」


「あなた今、避けて……」


 ゴッズとアリスが揃って目を丸くする。


 さすがに、この二人は誤魔化せないか。


「なんだなんだ? ゴッズが外したのか?」


「新人イビり失敗か? だっせぇな!」


 酒場で面白がって見ていた冒険者が、野次を飛ばす。


「外しただと? いや……てめぇは……」


 ゴッズが冷や汗を流す。


 とその時、酒場のカウンターから一人の男が歩いてきた。


「……おい、あいつSランク冒険者のカイルだろ」


「……アリスがいるんだ。同じパーティーなんだから居ても不思議じゃないだろ」


 冒険者たちが声を潜めて話し始める。


 カイルと呼ばれた男がゴッズの前まで来て足を止めた。


「よお、ゴッズ! また新人に活を入れてたのか?」


「か、カイル……」


 なんだ? ゴッズが明らかに狼狽(うろた)えてるぞ。

 

「まあ、あんまりやり過ぎんじゃねーぞ? じゃねぇと……」


 俺の方を横目で見ながら、ゴッズの耳元で囁く。


「……今日みたいに痛い目を見るからな」


「く……!」


 もう一人気付かれてたか。


 流石はSランク冒険者だ、酒場からは距離があるのに良く分かったものだな。


「さあ、もう行け。試験が始まるからな」


「う……。ちきしょう!」


 ゴッズが一度俺を睨むと、冒険者ギルドを出ていく。


「さて、俺らも行くかアリス」


「え、で、でも……」


 アリスが戸惑った様にこちらを見る。


「なあに、コイツならまた直ぐにどっかで会うだろ」


「……それもそうですね」


 アリスが俺の目の前まで来る。


「私はアリスと申します。以後お見知りおきを」


「ああ、俺はセージだ。よろしくな」


 見事な礼だ。さすが貴族と呼ばれていただけある。


「では、わたくしは先に失礼いたします」


「ああ」


 そう言って、ギルドを出ていく。


「さて、俺は聞いてたと思うが、Sランク冒険者のカイルだ」


「セージだ」


 高ランク冒険者なのに、威張った態度を取らないな。

 さっきのAランクとはえらい違いだ。


「全く動じねぇんだな、本当におもしれぇ奴だぜ」


 そう言って俺の肩に手を乗せる。


「次に会うのを楽しみにしてるからな」


「ああ」


 カイルは手を離すと、そのまま出ていった。


「それではこれより、試験を行います。

番号札を持って的の近くまで来てください」


 見計らったようにギルド職員が号令をかける。


 さて、俺も行くか。

いつもお読みいただき、ありがとうございます。


ブクマして下さった方や、高ポイント評価を下さった方もたくさんいて、本当に励みになっています。


さて、ストックが20話近く溜まっておりますので6月2日水曜日に10話連続投稿を予定しています。


少しでも、皆さんの時間のプラスになれば幸いです。


もし少しでも面白い、続きが気になる。

と思っていただけましたら、ブクマと評価星5をよろしくお願いします。

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