第12話 規格外の数値1
さて、冒険者ギルドの適性検査と言えばアレがある。
主人公があり得ない数値を出して驚かれるというお決まりの展開だ。
「俺は力を隠しておく必要も無いし、本気で試験を受けるか」
目標はギルドマスターが出てくるまでだな。
「それでは試験を開始します。
体力測定では、制限時間内に的を出来るだけ多く破壊してもらいます」
職員がそう言うと、待機していた人形が前に出てくる。
魔法で動かしてるのか、面白いな。
「それでは一番の方……始め!!」
「はい!!」
元気な掛け声で、少年が飛び出して行った。
さて、人形は十体だ。
普通はどれくらいの早さで終わるのかな。
「てや!」
少年が気合いと共に剣を振り下ろす。
右上からの袈裟斬りが決まり、最初の人形が倒れ……無い。
「まあ、一撃では決まらないか」
周りを見れば、どうやら普通のことらしい。
誰も驚いていない。
「はあっ!!」
三回、五回、七回と続いて十回目でようやく人形が倒れた。
「……流石に遅いんじゃないか?」
周りはまだ驚く様子が無い。
「鑑定してみるか」
まずは少年を鑑定する。
ーー種族 人間
名前 ラッツ・ミルガー
スキル 森人
ステータス
HP52/52
MP5/5
TP56/41
攻撃力 10
魔法力 3
防御力 12
魔法防御力 8
敏捷性 18
命中率 43%
回避力 3
幸運 55
状態 興奮ーー
「なるほどな」
まんまレベル1って感じの数値だ。
だか今までを考えれば、駆け出し冒険者ならこの程度の数値だろう。
次に、人形を鑑定してみる。
ーー訓練用木人 耐久性155ーー
「意外と多いな」
少年が人形に斬りかかる。
ーー訓練用木人 耐久性140ー
もう一度斬りかかる。
ーー訓練用木人 耐久性124ーー
「大体15ずつ減ってるな」
攻撃力が10だから、残りは武器の性能か。
分かりやすいな。
少年は制限時間までに、三体の人形を倒した。
ーー
ーー
その後、続々と試験者たちが人形に向かっていったが、結果は似たような物だった。
「これはやり過ぎたら完全に浮くな。いや気にする事は無いか」
最初に力を示せば、それだけ有利に立ち回れるだろう。
自由に生きる為には、それなりの立場が必要になるはずだ。
「次! 19番の方、どうぞ」
俺の番か。
人形が出現する。
まずは先頭にある一体目を蹴り倒した。
「あいつ、すげーな」
「ああ、さっきの新人じゃねーか?」
これだと、まだ大丈夫みたいだな。
続けて二体、三体は拳で殴り倒していく。
集中していたので、いつの間にか全て倒し終わっていた。
「なあ、そろそろ時間だと思うんだが」
制限時間を過ぎたはずだが、ギルド職員が固まったまま動かない。
「おーい」
「え、あ、はい! 次の方、どうぞ!」
目の前で呼び掛けてようやく気が付いてくれた。
取りあえず、合格は間違いないだろうな。
ーー
ーー
「さて、体力試験は全ての方が終わりましたので、次は魔力試験に移りたいと思います」
どう言うことだ、まだあるのか!?
「先程と同じように、制限時間内に人形を倒して下さい。では一番の方……始め!」
その掛け声とともに、先程のラッツ少年が右手を構える。
「はあ!!」
決められた立ち位置から気合いをいれると、ラッツ少年の右手から光が現れる。
"パスンッ"
その光は人形まで正確に飛んでいき、軽い音を残して弾けた。
何度かそれを繰り返す。
「そこまで!」
少年は人形を一体も倒す事が出来なかった。
「次! 二番の方どうぞ!」
その後、一人だけ三体の人形を倒したが、それ以外の人は全て人形を倒せなかった。
だが、俺はそんなことを気にする余裕もなく、立ち尽くしていた。
「俺は……魔法を使ったことがないぞ……!」
使い方も分からないんだ。
このままでは合格すら危ういかもしれない。
「次、19番の方をどうぞ!」
とうとう順番が来てしまった。
どうする!?
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