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地の文「なんか私が見える小娘が主役みたいですよ?」  作者: 咏柩
第二章『咎人と断罪者』
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第二章第六十七話「世界政府と漆黒の支配種族」


「はい♪ 受付のお姉さんです」



 そうして、黄昏は、自身が昨日会った役所神社の受付のお姉さんである事を肯定するが……、明らかに昨日接した時とは雰囲気が違っている。


 というのは、その目の前にいる彼女は、確かに見た目は同じでも、機械的だった挙動がどれも初めから生気を帯びているのである。……それも、美少女妄執倒錯者である瑠璃が、初見では彼女を識別出来ない程に。


 だが、そうした疑問とは別に、常夜は二人と黄昏の関係性を知って、その二人の疑問に結び付く、不思議な事を話し出す。


「ん? あぁ、そうか。緋煉で身分登録したのなら黄昏の事は知ってて当然ね」



 その言葉は、先程の黄昏の自己紹介の際にも少し気になった部分ではあったが、言葉の意味がわからない為、瑠璃と紅葉は「「えっと……?」」と首を傾げる。


 それに対して常夜は、その疑問に加え先の疑問の答えの一端ともなるヴィールドの仕組みを教えてくれる。


「貴女達が役所神社で見たのはこの子の分身体よ。身分登録の関係上、ヴィールドが承認した国の市民課は全てヴィールドからの監察官が担当する事になってるの。それで、緋煉とその傘下国の担当はこの子だから、緋煉の役所神社を訪れていれば、何処の役所神社でも黄昏には遭遇するわ」


 そうして得られた答えは、この世界の根本的支配構造を構築するシステムの一端情報であり、それによれば、どうやら緋煉の役所神社には何処にでも彼女、黄昏が常駐しているらしい。


 そしてそれは、この世界での身分証はヴィールドが発行しており、その身分証は世界共通である代わり、ヴィールドによって強制的に介入や剥奪が行われるという、黎明学園に移動する最中にライベリーから聞いていた情報とも合致する。


(この世界で諸王や貴族が悪徳を働けない理由でもある、って話だったけど……、なるほど、発行場所そのものが押さえられてるのか……。しかも民間と行政を繋ぐ窓口でもある市民課に軍服着た監査官がいるって……、それ民間に異変が在ったら即座に軍隊派遣される奴じゃん……)



 そうした仕組みを理解した紅葉は、「あぁ、それで。いや、でも昨日と雰囲気が全然違ってぱっと見わかんなかった。見た目おんなじなのに……」と、残る疑問を口に出すが、それに関しては黄昏自身が元の糸目に戻りながら答える。


「あぁ、それはすいません……。役所にいる私は分身体の中でもかなり機能を制限した簡易版ですので、普段はオートモードなんですよ」


「! オートモードとかあるんだ……」


「はい……。たぶんなんとなく動きがぎこちなかったでしょう? あの状態の私はほとんど自我がありませんので……。基本的には同じ質問に同じ答えを返すだけの状態なんです」


「あぁ、役所とか同じ質問ばっかり繰り返されそうですもんね」


「そういう事ですね」



 そうして、彼女の自己紹介が終わり、自己紹介は最後の常夜へ移る。



「それじゃ、次は私ね。名前は紀愁常夜。所属は同じく『世界政府ヴィールド』。地位的には軍の最高司令官をしているわ。とはいえ、私についてはそこまで話す事は無いかしらね?」


 そして、常夜は自身の自己紹介を簡潔に終えるが、その色々とツッコミ処のある自己紹介に対し、まずは常夜がヴィールド軍の最高司令官である事を知らなかった瑠璃が、かなり大袈裟に驚く。



「ヴィールド軍の、……って、世界政府の最高司令官だったんですか!? それに苗字が黄昏さんと同じなのは、つまり……」


「あれ……、言ってなかったかしら……。まぁそうなのよ、実は。後、苗字が同じなのは黄昏が私の妹だからね。といっても、私達ルリィーアは分裂で殖える同核体かヤィヴュミ自身が創造した始源体の二種類しか無くて、ルリィーアは全員姉妹関係なんだけどね」



 そしてその時、同じ始源体から分裂した同核体は同じ苗字になり、黄昏は始源体である常夜から分裂で生まれた同核体である為、分類定義上は妹だが、それと同時に娘であり同一人物でもあるという無性体ならではの特殊な関係になるらしい。


「と、そういえばさっきレルゥシャさんがヴィールドはルリィーアっていう種族が構成してるって話してたけど、やっぱり常夜さんと黄昏さんが、そのルリィーアっていう種族な感じ? 説明されたみたいな漆黒の流動体には見えないけど……」


「あぁ、ルリィーアの基礎外観は人型だからね。流動体なのは中身よ。ルリィーアには霊体、気体、液体、固体の四形態があるから、流動体はその総称表現でもあるわね。ほら、こんな感じで……」


 そうして、常夜は自身の片手を指先から順に、まるで光を吸収しているかの様に輪郭に極彩色の虹を輝かせながら黒く光る霊体、同じく輪郭がプリズムの様に七色に輝いた黒い気体、表面に油の様な虹色を滲ませたタールの様な液体へと、指、掌から手首、前腕から肘まで、と場所を分けて変化させていく。


 そして、その変化によって表面に浮き出ている虹色の極彩色は、よく見れば固体である肌の表面にも、普段から虹彩として薄っすらと浮き出て見えるものであり、それがルリィーアの特徴である事も理解出来る。


「はぁー、四形態同時に変化出来るんだ……」

「凄い……、きれー……」


「それはどうも? まぁ、私達ルリィーアは割と何処にでもいるし、ヴィールドに至っては関わらないで生きる方が難しいでしょうから、どちらも詳しい事は後々に知れば良いし、今はただヴィールドがこの世界の統括世界政府である事だけ知ってれば良いと思うわ。それじゃ、私の自己紹介はこれで終わりね」



 そうして、常夜は自身の自己紹介をさっくり締め括り、その場にいる全員が自己紹介を終えた所で、黄泉は瑠璃と紅葉に「だいたい誰が誰かわかった?」と、理解の程の確認を取る。


 それに対し、紅葉はなんとなくという風に、瑠璃の方は自信満々に答える。



「一応……」


「私は全員覚えましたよ♪ 黄泉さんから順に、黄泉さん、怨嗟さん、レルゥシャさん、セラフィリアさん、命さん、聖成伽さん、アリシアさん、レティアさん、黄昏さん、常夜さんの10人ですよね? 私は美少女の事は絶対に忘れません!!」



 ……そうして、瑠璃は何故か誇らしげに胸を張るが、少なくともレルゥシャと聖成伽は女ではなかった筈である。


 また、無性別などの男女に括られない分類がある以上は、他のメンバーも本当に女かどうかは怪しいが、瑠璃の区分的には「見た目が」美少女であればそれで良いのだろう。


 とはいえ、もしも誰が誰かわからなくなったら、その時は瑠璃に聞けば良いとも言える。


「美少女……、少女……? この中に女性別の相手は一人もいない筈だけど……、まぁ、とりあえず陣営だけ覚えてれば、会議の内容はわかるだろうから別に良いわ。それぞれの陣営は覚えてる?」


 まさかの一人もいなかった。その事に少し驚きつつも、陣営についてはちゃんと覚えていた紅葉は、その陣営について復唱する。


「ん、陣営は私が覚えてる。『冥府』の『黄泉國』、始龍の国『龍国アルージェ』、天上界『高天原』の『天津神國』、軍事世界企業『ネットワーク・クライシス』、そして『世界政府ヴィールド』。この五つの陣営が会議に出席してる」


 その内、『龍国アルージェ』と『ネットワーク・クライシス』にはRが二人いるが、それぞれセラフィリアとレティアは配下と従者の立場である為、代表としてはレルゥシャとアリシアが会議を進める筈なので、やはり陣営は五つである。


 そして、それらを紅葉がスラスラと話すのを見た黄泉は「ん、正解」とだけ簡単に告げて、ようやく会議の本題に入る。


「そう、まぁ陣営さえ覚えててくれればだいたいの内容は理解出来るでしょうから、それで良いわ。それじゃ、会議の本題に入りましょうか」


 そうして、瑠璃と紅葉を傍聴者に、黄泉が会議を本格的に始めようとするが……、


「待った、黄泉。まだ自己紹介してない奴がいる」


 そこで常夜から待ったの声が入る。


 その常夜の声に、黄泉を含め、その人物を認識していなかった半数の者は常夜の方を見るが、逆に、常夜を含め、その人物を認識していた、アリシア、レティア、聖成伽、黄昏の五人は、一斉に紅葉の頭上に視点を集める。


「え、えっと……?」


「あ、紅葉の事ではないわ。貴女は座ってて」


 その視線の集中を見た紅葉は、それが自分に向けられたものではないとわかりつつも、つい驚いて仰け反るが、それに対しては、常夜が「あぁ」と、軽く笑いながら手を下に振って制した後、


 そのまま常夜は立ち上がって移動して―


///////---!!---error! error!!------error!!!!---///////


 えっ! ちょっ!? なんでこっちくんの!?!? ちょっ!? 待っ!?


「あだだだだだだ!?!?!?!?!?」


「「!?」」


 紅葉の「後ろにいた奴」の頬を摘まみ上げる。


「何してんのよ、クァイティリア。貴女をこの会議に呼んだ覚えは無いけど?」


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