刻まれし呪い
今回は少し書き方が変わっています。
「では改めてアキシマよ。何から聞きたいのじゃ? やはりお主自身についてか?」
「いや、お前は私については知らないと言っていた。これ以上追求した所で新しい情報を得られるとは思えない。よって後回しだ」
アキシマが何者なのか。ミヤは知らないと言い切った。その言葉は真実であろう。
亜人の長であるミヤが知らないとなれば、必然的にその他の亜人が詳しい事情を持っているとは考えにくい。
アキシマについて最も有力な情報を持っているだろう存在は、やはりゼロだ。
自分を知りたい気持ちはある。とは言え話す気の無いゼロを問いただしたところで時間の無駄でしかない。その情報については今後ゆっくり進めていけばいいとアキシマは結論付けた。
となれば。
「単刀直入に聞こう。何故、こんな状況になっている?」
「と言うと?」
「お前達は何故、人間に狙われている? 単純な立場や力関係による争いにしては、奴等の瞳は狂気に支配されていたように思うが」
そう、思い返せば人間達の亜人達へ向ける殺意はとにかく異常だった。
殺意を向けるからには何かしらの理由がある筈。怒り、憎悪、はたまた第三者による指示か。
しかし人間達がその目に宿していた色は、どれにも当てはまらない。
そこにあったのは正しく、楽しんでいる色。ただ殺し、奪う事への快楽。反吐が出そうな程の身勝手な破壊衝動だ。
人間の中には地下で葬ったニールのような比較的マトモな思考を持つ者も居たが、やはりその大半は何かに取り憑かれているかのようだった。
そんな狂気の中に垣間見えた執着心。人間達の狙いとは何なのか?
「話せば、長くなるのぅ」
「無理にとは言わないが?」
「よい。散々助けられてきたのじゃ。ここでお預けではお主も納得いくまい?」
「ふむ」
「……昔話をしよう。遠い昔の、儂がまだ幼子じゃった数百年前の話を」
悲しげに目を伏せて、ミヤがぽつりぽつりと語り始める。
始まりの物語。それは亜人が亜人であった頃、大昔の悲しいお話だ。
――……。
まず初めに、当時は儂等亜人と人間の立場はまったくの逆じゃった。儂等こそが強者であり、知性のある種族の中でも人間達は最弱と言ってもよかろう。
今でこそあのような下劣極まる行いをするようになってしまったがの。昔はどんな種族にも協力的で、争いは極力避ける。まさしく平和を愛する者達じゃった。
「信じ難いな」
カカカッ、まぁあの惨状を見てしまっては信じられぬのも無理はあるまい。じゃが事実じゃ。
あの頃は儂にも人間の友がおったくらいじゃからの。
……人間達に特別な力は無い。魔法も、特異も、度を越えた残虐性も。あったとすれば、様々な知識を吸収し学ぶ頭の良さくらいじゃ。
故に、いざ魔物といった存在に襲われてしまうと、ひとたまりもない種族での。一応は剣や鎧等で武装した組織も居たには居たが、それも付け焼き刃に過ぎん。
彼奴等が解決できるのは、同じ人間の間で起きたいざこざ程度のものじゃ。
「矛盾しているな。奴等は力を行使していた」
今は、の。あの頃は本当に何の力も持ち合わせてはおらんかったのじゃよ。
じゃからこそ、彼奴等は身を守る術を得ねばならんかった。そこで儂等の出番という訳じゃ。
自分で言うのも何じゃが、儂等亜人も非常に協力的な種族でのぅ。魔物に怯えるばかりの人間達に手を差し伸べ、魔物達から守護してやっておったのじゃ。
無償というわけではなかったがの。
「一種の契約か」
うむ。魔物の驚異から守る代わりに、人間達からは食料、衣服といった物を受け取っておった。
「食糧難にでもなっていたのか?」
そんな訳なかろう。むしろ儂等は恵まれておったし、飢餓とは無縁の生活じゃったよ。
しかしじゃな、いくら儂等が心からの善意で手を差し伸べたとしても、急に別種族から「無償で守ってやろう」などと言われたところで人間達からして見れば胡散臭いだけじゃろう?
「なるほど、警戒されない為に形だけの契約を交わしたという訳か」
うむ。まぁ形だけとは言え、見返りによって儂等も大いに助けられておったのも事実じゃ。
おかげで結果的に良好な関係を築く事にも成功した。持ちつ持たれつというやつじゃな。
「それがどうしてこんな事になっている?」
そこが最大の謎じゃ。
……ある日、儂等を束ねておった当時の長が数人の亜人達と共に人間の街へ足を運んでの。目的は、もっと他の種族とも交流を持ち、更に生活面を改善してはどうじゃろう? という提案をしに行ったのじゃ。
友好的な別種族との繋がりが増えれば、それだけ彼等の助けにもなる。そう考えての行動じゃった。
集落の留守は儂の姉上に任された。あ、ちなみに儂の姉上は亜人の中でも随一の実力者での! こと戦闘面においてはウルカを遥かに超える強さであり、儂をも超える器の大きさの持ち主じゃ! 姉上の方が長に向いていると何度も言っておったのに、当の本人は謙遜するばかりで頷こうとせんでなぁ。まぁそこが姉上の良いところで――。
「おいミヤ、話が脱線してるぞ。姉史上主義はエルディオにも見習って欲しいところだが」
「一生見習わないから安心しろ姉貴」
んんっ、すまぬ。姉上の事となると、ついのぅ。
「お前の姉がどのような人物だったのかは理解した。続けてくれ」
えーっと、どこまで話したかのう……ああ、そうじゃった。
予定では長が帰ってくるのは3日後。姉上はそれまでの間、仮の長として集落をまとめておったのじゃが……待てど暮らせど、長が帰ってくる事はなかった。
1日2日程度ならば、何らかの事情で戻るのが遅れているだけだろうと思えたのじゃがな。10日が過ぎても帰ってくる気配が無いのは異常じゃった。
何か起きたと考えた姉上が、翌日様子を見に行こうと言い出したのは今でもよく覚えておる。
その夜、誰もが寝静まる深夜に儂等の家へ転がり込んできた者が居った。
あまりにも激しい物音を立てて入ってきたものじゃから、魔物でも入り込んだかと武器を手に取り警戒したものじゃ。
じゃが、そこに居ったのは魔物ではなく、あの日長と共に人間の街へ行ったはずの者達の1人じゃった。
身体中傷だらけで、ろくに目も見えていない程に頭からの流血。左腕はあらぬ方向へ折れ曲がっておった。
ただ事ではない様子に姉上が駆け寄った。
何があった。そんな言葉を投げ掛ける暇もなく、その者は叫んだのじゃ。
〖逃げろっ!!!!〗
儂等はしばらくその言葉の意味を理解できんかった。
あの頃は儂等亜人こそが頂点に立つ種族。如何に強力な魔物が相手でも、結束した亜人達が負ける事はまず有り得ん。その儂等に逃げろと、彼奴は言った。
呆気に取られる儂等を正気に戻したのは、集落中に響き渡った悲鳴。慌てて外に出た瞬間、今の今まで儂等が居た家が轟音と共に吹き飛んだ。
姉上が咄嗟に儂を庇ってくれはしたが、呆気なく吹っ飛ばされての。儂はその衝撃で意識を手放してしもうた。
「奇襲、ですか?」
その通りじゃと言っておこう、ナガレ。
誰がとは言うまでもなかろう?
次に儂が目を覚ました時、儂は集落ではなく業火に包まれる森の中に居った。血濡れになった姉上の腕に抱かれた状態での。
みっともなく泣き喚く儂に、姉上は優しく微笑みかけてくれた。いつも力強く笑っていた姉上が、今にも消え入りそうな笑みを浮かべていたのじゃ。
忘れたくても忘れられん。あんな顔をした姉上を見たのは初めてじゃった。
「ミヤ様の姉君……確か名前は、シオナ・シャーリウス様」
そうじゃ。当時はシー姉と呼び慕っておった。
シー姉は儂に愛用のコートと戦士の証である赤削を託して、あろう事か自らは集落に戻ろうとしたのじゃ。
「何と無謀な。然れど勇敢とも言えますな」
そうじゃな。亜人の中でも最強と名高い姉上が手酷くやられているというのに、まったくもって無謀じゃ、大馬鹿者じゃ。
じゃが、それでこその姉上。そういう生き方しか出来ぬ不器用な姉じゃった。
無論、行こうとする姉上を儂は必死になって止めた。他の亜人などどうでもよい。儂と姉上だけでも逃げるべきじゃと……。
「ミヤ様の姉ちゃん、逃げなかったのか?」
逃げぬよ。分かっておった……儂がどれだけ泣き縋ろうと、姉上が信念を曲げる事は無いと。
泣きじゃくる儂に姉上は言った。
〖貴女に最後の言葉を残すわ。よく聞きなさい。
私達は外道ではない。仲間は絶対に見捨てない。矛となり盾となれ。我等と道を同じくする同志を救え。
約束してミヤ。私の意思を継いでほしい。これからは貴女が亜人達を導くの〗
〖無理だよシー姉! 私シー姉みたいに強くないもん! 行かないでよシー姉!!〗
〖いいえ、貴女は強いわ。なんたってお姉ちゃんの妹だもの〗
〖やだぁ! やだよ……!〗
〖ね、ミヤ。約束して?〗
儂を見つめる姉上の瞳は覚悟を決めた者のそれじゃった。
もはやどれだけ言葉を投げかけたところで姉上を止める事はできないじゃろう。幼いながらも儂はそれを察した。
嫌だと叫びたい、力ずくでも引き止めたい。そんな本音を押し殺して、涙で顔をグシャグシャにしながら、儂は姉上と約束を交わした。
〖やっぱり、貴女は自慢の妹だわ〗
〖し、ぃ……姉……!〗
〖生き延びてね、私の可愛いミヤ〗
それが儂の聞いた姉上の最後の言葉となった。
遠ざかっていく背に声を上げたかった。じゃが、それをしては姉上の覚悟を否定する事と同義。じゃから必死に耐えた。
その背が見えなくなるまで……ああ、すまぬ。この話をするとどうしても涙がのぅ。
「ミヤちゃん。キツそうなら――」
いや、大丈夫じゃ。
その後、儂は必死に逃げた。燃え広がり続ける火の中を脇目も振らずに走り続けた。姉上との約束じゃ、とにかく生きねばと休むことなくの。
そうしてどれくらいの時間が経ったのか。気付けば辺りは明るくなり始めておってな。
それでも儂は赤削を引き摺りながら走り続け、やがて別の集落へと辿り着いたのじゃ。
逃げ延びた先で保護され、自分の身に起きた事を事細かに説明した。とは言え儂は気を失ってしまっておったから、詳しい事は分からなかったがの。
その後の調査で、儂等の集落を襲ったのが人間だという事が判明した。信じられぬ思いじゃったよ。
「ふむ……人間達が襲ってきた理由は?」
分からぬ。問い質しても儂等亜人こそが悪と断じ、彼奴等は蹂躙の限りを尽くした。無論、儂等とてやられるばかりではない。
各地の亜人達と協力し、向かってくる人間達と殺し合いの戦争状態。そうして幾度も彼奴等とぶつかり合う中で、違和感だけが大きくなっていった。
「違和感?」
変わり過ぎなんじゃよ。確かに人間の中には儂等亜人との共存に異を唱える者も居った。じゃがそれはごく僅かであり、間違っても人間全体に影響を及ぼすような規模ではなかった。
にも関わらず、当時の人間は誰もが豹変したように儂等に敵意を向けてきた。大人も子供も、相手が亜人というだけで目の敵じゃ。普通ではない。
仲良くしておった人間の友も、まるで儂など知らんと言わんばかりに噛み付いて来おったよ。
何より解せなかったのが、力を持たぬ筈の人間達が急激に強くなった事じゃ。何か理由がある事は明白。
故に儂等は調査に乗り出した。上手く行けば地獄絵図のようなこの状況を打開できる筈と信じてのう。
「強くなった、か。そういえば集落を襲っていた人間達の1人が、加護がどうのと言っていたな」
む、何じゃ既に知っておったか。
まさしく人間達の強さの秘密はその加護とやらにある。
「ふん、何が加護だ。奪い取った力を我が物顔で行使しているだけのコソ泥風情が」
「どういう事だ?」
詳しくは分からぬが、どうやら人間達には儂等の力を奪い取り己の物とする術があるようなのじゃ。
故に彼奴等は定期的に亜人を狩っておる。亜人狩りなどと表し、まるで祭りのようにの。
殺し、或いは生け捕りにした亜人を連れ帰り、何らかの方法で亜人の持つ力や特異を奪い取る。それを加護と銘打ち人間達へ譲渡しておるのじゃ。
あの時、姉上に集落の留守を任せた長も同じように力を奪われ殺されたのじゃろう。
「力を持たない人間達は亜人から搾取する事によって強くなった。急激に強くなった理由はそれか。
……特異についてはある程度の理解はできている。しかし力とは?」
「そのまんまの意味だな。体力だったり筋力だったり、身体的能力全般」
「付け加えるなら容姿もだな。そうだろう? ミヤ」
「容姿?」
うむ。聞くがアキシマ、儂の容姿をどう思う?
「子供だな。或いは幼女か」
喧嘩売っとんのか。
そうではなくじゃな……儂だけではない。ナガレやガラハ、イヅツを見て何か気付く事はないか?
「…………ふむ。亜人と人間、別種族同士という割には、お前達の姿は人間とほとんど変わらないように思うが」
カカッ、聡いのぅ。その通り、儂等の姿は人間に似過ぎておる。
じゃがこれは本来の姿ではなくての。力を奪われてしまう前は、人間とは決定的に違う部分があった。
「えっ、何それ初耳」
「ああ。俺も初めて聞いた」
ナガレとイヅツが知らぬのは当然じゃ。お主達は今の姿の方が馴染み深いじゃろう? じゃが、この世に産まれ落ちた瞬間までは本来の姿じゃったよ。
「えええ? つまりどういう事だよミヤ様?」
「矛盾だな。お前達は人間に捕まってはいないのだろう? では何故、力や容姿を奪われている」
「その点についての疑問は解消してる。
私とエルディオは昔からミヤと共同して情報を集めていてな。何年も調べていくうちに奴等のとんでもない手の内を知る事ができた」
「この世に産まれた瞬間に、亜人は本来持つ力のほとんどを奪われちまう。捕まらずとも、この世界に存在しているなら距離なんて関係ない。無条件でごっそりだ」
「はぁ?! 何だよそれ反則じゃね!?」
うむ。仮ではあるが、儂等はそれを呪いと呼称しておる。
亜人と人間が対立して数年後にはこの現象が起きた事を考えるに、その頃から既に呪いは完成しておったのじゃろう。
捕まれば力の全てと特異、そして命を奪われ、例え捕まらずとも大幅な弱体化を受ける。故に儂等は本来の実力を発揮できない。
儂等がすぐにバテてしまうのもそれが原因じゃ。
「呪い、か」
「聞いといてあれだけど、実感湧かないっつーか」
じゃろうな。儂とて最初は信じられなかったくらいじゃ、無理もない。
……ナガレ、イヅツ。お主達の体には赤黒い痣があるじゃろ?
「……! は、はい。俺は背中に」
「俺は足の付け根――ハッ!? ミヤ様何でそんなこと知ってんだ!? さては俺の入浴を覗いたなー!?」
「黙っていろイヅツ・カー。話が進まん」
「はいすみません」
その痣は亜人特有の物ではない。それこそが儂等が呪いを受けているという証そのもの。
この世に産まれ落ち、力を奪われるその瞬間にそれは刻まれる。耐え難い苦痛と共にじゃ。
それに耐えられぬ赤子はそのまま命を落としてしまうのじゃよ。
「命を、落とす……? み、ミヤ様! 亜人の子は遺伝故に場合によっては産まれて直ぐに命を落とすと、そう仰られていたのは!」
無論、嘘じゃ。そうでも言わねば、産まれても結局は死ぬのだと誰も子を作ろうとはせんじゃろう?
「なんて事だ……」
一部の亜人はこの事実を知っておる。黙っていた事は謝ろう。じゃが皆の為じゃ、理解してくれると助かる。
「ミヤ・シャーリウス。その痣とはどんな物だ?」
む、まぁ見せた方が早かろうな。儂のは他の者に比べて規模が大きくてのぅ。見ての通り首から下はほぼ――と、ウルカよ。
「ん? ……あぁ。おいアキシマを除く男共、死にたくなければ視線を外せ。特にイヅツ、もし見たら色々と抉るからそのつもりでいろ」
「俺だけ辛辣っ! 旦那はいいのかよ!?」
「当然だ前科持ち。私の水浴びを覗いて死にかけた事をもう忘れたか?
それにアキシマは生身ではないからな。見たところでおっ立てる物も無いし無害と判断した。そもそも話の流れ的にアキシマが見ないでどうする」
「ちぇ〜、ミヤ様の貴重な裸体を拝む機会だってのに」
「どこまでも平坦な乳房を見て何が面白い。いいから後ろを向いてろ」
お主等、後でとっちめてやるからそのつもりで居るように。
ではアキシマ、よく見ておくといい。これが儂等亜人にかけられた呪いの証じゃ。
「……ふむ。上半身はほとんど痣に侵されていると見ていいのか?」
下半身もじゃ。かろうじて首より上、手先と足先には達しておらんから、服を着てしまえば目立たぬがの。
「痛みは?」
これを刻まれる時だけじゃ。今は何ともない。
「全身に痣が出来ているのはお前だけか?」
うむ。それぞれ痣の大きさにバラつきはあるが、ここまで大きいのは儂だけじゃろうな。
「それには理由があるのか?」
うむ。調べた結果、特に力の強い者にのみ大規模な侵食が現れる事が分かっておる。これでも当時の儂は最前線に立つくらいには実力があったからのぅ。
「なるほど。では少し触るが我慢しろ」
うむ。…………ん???
「聞こえなかったか? 触るから我慢しろ」
い、いや聞こえておったが、何じゃ突然。物珍しさだけで女性の体に触れるのは感心せんぞアキシマ。
「悪いが必要な事だ」
ちょっ……! うひゃん!? こ、これアキシマ! 触るにしてももっとゆっくりにせんか! お主の指先は冷たいのじゃ! そのようにいきなり!
「我慢しろと言った筈だ。ゼロ、痣をスキャンしてくれ」
『必要とは思えませんが、了解しました』
聞けい! 理不尽じゃろう!? んあっ、じ、じゃから! というか何処を触って……! これっ! あっ……!
「ぐう゛ぅぅぅぅっ!!! 見たい!! 今振り向けば絶対素晴らしい光景が広がっている筈!!!
ナガレさん! 俺は振り向くからな! 欲望全開で!」
「止めはしない。だがお前は死ぬ事になるぞ。主にウルカさんの手によって」
「構うものか! いざ行かん幸福の園へぶへらぁっ!!!?」
「残念。手ではなく足によってだ」
う、ウルカ! アキシマを止めい! エルディオでもよい!
「嫌だ。そいつが絡むとミヤは面白い事になるからな。私は傍観者に徹する。もっと私に娯楽を提供しろ」
「悪いミヤちゃん。俺も男だから見る訳にいかないし、自力でガンバだぜ」
薄情者がぁぁぁぁぁ!!! ひうっ!? おらぁアキシマぁ!! 何をどさくさに紛れて下半身にまで手を突っ込んどんじゃー!!!
「ふむ、身体的異常は特に無しか。ゼロ、そちらはどうだ?」
『問題はありません。仮に何らかの力が働いているとしても、銃骨格にとっては未知の技術。よって解析は不可能でしょう』
「言われてみれば確かにそうか。特異だの魔法だの呪いだのと。まったく次から次へと」
『ですが情報は得られました。その点については褒めておきます』
「ふむ? 礼を言うべきか?」
目の前で淡々と語らうでないわ!! こっちは股をまさぐられとるんじゃぞ!? 他に何か言う事があろうがー!!!
「股っ!!? ミヤ様の股だとっ!!? 退いてくれウルカちゃん! やはり俺は――」
「ちゃんを付けるなと言っただろうが変態野郎!!」
「かぺっ?!」
「強く生きろよイヅツ……」
誰ぞ、誰ぞ儂を助けーーーーいっ!!!