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1 話

前回の『0≠HELL』は見ていただけたでしょうか?今回から本編です!

来留美「んん......うーん」



かなり長い間気を失っていたらしい。来留美はゆっくりと体を起こした。



来留美「あれ......何ここ...?」



目を覚ましてとりあえず周囲に何かないか確認したが、どうやら自分以外には人がいないようだ。だが、目に映った光景はかなり異質だった。

まずあたり一面が草原だったのだが、丁寧なことに全ての草の長さが同じだった。専門の業者でも雇っているのだろうか?と来留美は考えた。

もっと異常なモノは足元ではなくて、顔のすぐ近くにあった。水が浮いているのである。「水が浮いている」と聞けば誰でも無重力空間を想像するだろうが、足は地面についているし、呼吸も滞りなくできている。それを確認するかの如く来留美の呼吸のリズムが少し乱れた。



来留美「ハァッハァッハァッ......息は出来てるな...」



ここで、来留美クルミについて少し触れておこう。彼女は2007年生まれの23歳。なんとなく大学に行ったものの、ある講義の教授から聞かされたロックがキッカケで音楽に目覚めた。毎週日曜日に街中で路上ライブをしていて、人はそこそこ集まる。しかし、SNSの伸びはイマイチ。名前の順序を並びかえた「未来ミクル」なんて少し凝った名前をしているが、残念ながらフォロワーは二桁。それでも



「アタシの曲は、絶対に神なんだよ!」



というように、気合で突き進んでいる漢気ある女性である。



来留美「何処なんだ?ここは...ていうか、いつこんなところに来たんだ...?」



来留美はこの空間にやってくる直前までノートパソコンで作曲をしようとしていた。今までギター一本で作業をしていたもので、あまりパソコン慣れをしていなかった彼女は右往左往しながら操作をしていたのだが...その画面上に「窓」が現れた。

そして、機械音痴の来留美は誤ってその窓をクリックしてしまい...今に至る、というワケである。



来留美「うーん、何処を見渡してもおんなじ景色だし、どこ行けばいいんだよ...?」



と悩んだ末、とりあえず太陽らしき物体が見える方向に歩き始めた。「夕日に向かって走ろう!」という言葉は人間の生存本能だったのかもしれない、と来留美は思った。



それから数十分ほど歩いたのだが...歩いても歩いても景色は変わらなかった。どれだけ前に進んでも、世界全体はまるで国家規模で消毒されたかのように静か。ハッスルで進んで来た来留美も、さすがに焦りを覚えてきた。

幸いなことに、水分不足に困ることは無かった。さっき見かけた「浮遊する水」、あれは幻ではなくて本当に呑むことができたのだ。こんにゃくゼリーを飲むように、一気に吸い込めば口の中に入る。少しプラスチックの味が強かったが、地面いっぱいに広がる草を食べるよりはマシだ。



休憩をとりながら、更に二時間は歩いたが、一向に景色が変化しない。まるで水だけある砂漠...いや、飲み水がある分砂漠よりもタチが悪いかもしれない。



来留美「もう疲れたーーーーーーー!!!!!!何もねぇじゃんか!退屈じゃねえか!早く帰りてぇーーーーー!!!クソ!ギャーーーー!!!!」



来留美は気が狂ってしまった。数時間も歩かされた挙句、何も進展がなかったから当然だ。虚空に向かって駄々をこねる姿はとても23歳には見えない。



???「......あぁっもう、うるさいなぁ!!!!せっかくスリープしてたのに邪魔しないでもらえるかなぁ!!!!」



謎の人物の怒りは来留美に届いていなかった。彼女の声があまりにも大きいのである。



???「もう黙ってよ!!!!」ドン



少し強めにカラダをどついてやった。やっとのことで、来留美は自分以外に誰かがいることに気づいた。



来留美「あ”あ”?お”ま”え”だ”れ”た”?」



???「うわ、すごいガラガラ声じゃん。ほら、お水飲みなよ。」



と、その人は何処からか水を差しだしてきた。少し違和感を覚えつつも、とりあえず声の調子を戻さなきゃな、と来留美は水を飲み干した。



来留美「プッハー!生き返ったぜ!サンキュー知らない人!」



そういって満面の笑みでサムズアップをした。



ひとまず気力が回復したことで来留美はやっと相手の姿を見ることができたのだが、よく見てみるとどうやら人間ではないらしい。



第一に、格好がかなり奇妙。来留美もパンクな服装を好んでいるので、流行に逆らっている側なのだが、目の前の彼女の服装は「社会への反抗」ではなくむしろ「秩序を守る側」と表現した方が良いような、清潔な装い。所々着崩しているものの、病院のスタッフと言われても違和感はない。ただ、そこに関しては来留美も自慢の純白の地毛を持っていたので、内心「私の方が綺麗じゃね~?」と思っていたのは秘密。



服装の他にも、彼女の関節には不自然な点があった。つなぎ目が明らかに人間のものではないのだ。赤や白、黄色とチューリップの歌で出てくる色が大集合。それが隙間から少しばかり見える。彼女はロボットなのかもしれない、と来留美は考えたが、ほどなくして彼女は自己紹介を始めた。



???「いやー、こんなに自己紹介まで時間がかかったのは君が初めてだよ...僕の名前はPIAピアっていうんだ!この眩しくて希望に満ち溢れた世界を案内するAIだよ!以後、お見知りおきを~。」



来留美「はぁ!?アタシを何時間も歩かせやがって!何が希望だよ、虚無だよ虚無!まじでふざけんな!あとな!アタシは一人称が(僕)の女が大っ嫌いなんだよ!カッコつけんな!アタシみたいにカッコで男らしさを見せろよ!」



PIA「ちょっと!出会って間もない子にそんなこと言われたくないんだけど!あと一人称に関しては君の怨念でしょ!?まぁ、嫌ならPIAに変えるけどさ...」



来留美「そんなことより、アタシ帰りたいんだけど。」



PIA「えぇ?君が現実に不満を感じてたからここに連れてきたのに...うーん...あ!分かった!もしかして君はまだこの世界の楽しさが分かってないんだね!」


PIAはそう言うといろいろな演算を始めた。腕を伸ばすと手元に半透明のキーボードが出現して、色々に入力している。

AIと言ったらこちらが何か入力すると即座に答えを返してくるものだと来留美は思っていたのだが、PIAのは少し古めのAIなのだろうか?

少し前まで当たり前だった令和より前、平成といのだろうか?その時代を感じさせる。

それでもPIAの姿は少し楽しそうだが。小学生くらいのアイドルショーを見ている子供のような表情をしている。



その姿をじっとみていたら演算が終わったらしく、PIAは誇らしげに「よ~し!それじゃあミクルがこの世界を好きになるように、ツアーを始めようか!!!」と言った。



その次の瞬間、周囲の空間がバグったかのように崩れはじめ......



気づいたらさっきまでいた草原とは異なる、真っ青な海が広がっていた。



NEXT 『2≠FAKE』  続く...

何もない草原はWindouw XPのあの壁紙、実際にあそこに放りだされたら何もなくて餓死しそうな気がします...

次回は別のキャラクター、今井の視点から物語を書きます。

面白かったら高評価お願いします!!!!

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