22話 国王ってそんなに簡単に変わるものだったか
「もうすぐ始まるぞ・・・バラク王の戴冠式がな。」
「ん?」
「ああ、言ってなかったか?バラクが王になって、私がその部下になる。」
「んんん!?」
耳を疑った他、自分やアデルさんの頭も疑ったが、どうやら本当のことらしい。
「国王ってそんなに簡単に変わるものだったか・・・?この国の王制どうなってるんだ。」
「ウィルグランドだけ特別な仕組みを採用している。内容はシンプルだがな。強くて国民に認められた者が王になる。簡単だろう?」
「どうなんだよ、色々と・・・あ!じゃあラウラが第一王女とか言ってたのは!!?」
「王の娘なんだから王女に決まっているだろう?なあ?」
「それはそうっスよね!」
・・・なんか俺が変な子みたいな感じになってるんだが・・・
「じゃあ隣国の王子と婚約ーとか言ってたのは───」
「細かいことは気にするな。さっさと会場に入れ。」
思いっきり誤魔化したが、結構やばめなことやってるよな?
と思いつつ会場に移動する。
豪快に装飾が施された屋外のパーティー会場は、はたから見れば結婚式場のそれだ。長い白テーブルにはご馳走たちが並べられ、タキシードをきた男性がワイングラスなんか持っている。
とはいえ、皮装備を身に着けた冒険者などもいることから、俺たちが場違いという訳でもないだろう。
「シオト!!アリスちゃん!」
やけに通りの良い声で、一瞬でラウラだと分かった。
「ララさーん!!お久しぶりっス!!」
「あんまり久しぶりでもないような?・・・で、シオトは黙り込んでどうしたの?」
「・・・今日はドレスじゃないんだなと思って。」
俊敏性のために極限まで軽量化された装備もいいが、もう一度あの姿を目に納めたい自分がいる。
「あ、あんなの滅多に着ないよ!無理やり着せられたし、恥ずかしいんだからね!」
「嘘だな。実はお姫様っぽくてテンション上がってたんだろ。そういう感じの顔してるぞ。」
「なっ!・・・ていうかほんとにお姫様・・・じゃなくなるんだった!!ばかシオト!」
恥ずかしがったり悔しがったり、表情がコロコロ変わるラウラは、やはり見ていて飽きない。
というよりは、とても可愛いと思う。とてもそう思う。
という目をしていると、アリスに頬をつねられた。
「ニヤニヤしないでシャキッとしてください!!ほら!司会の人が喋ってるっスよ!!」
司会の合図で、正面のステージにバラクさんが上がってくる。大きなその身体からは、細身だが鋭い威圧感を放っていたアデルさんとはまた違う、おおらかな威厳が感じられる。
「バラクめ、かなり緊張しているな。図体も態度もでかいのに情けない奴だ。・・・だが、豪快なくせに恐れや恥を知っているところが奴の長所だったりする。」
俺とラウラの間に割り込むように入ってきたアデルさんは表情を緩め、澄み切った目をしている。
「あれ、緊張してるんですか!?気づきませんでした。」
「父さまとバラクさんはとっても仲良しなんだよ。王政についても二人で相談して決めてたみたいだし、王様の地位が変わっても大差ないんだって。」
ならどうして変えたんだ?っと、バラクさんが話し出すみたいだ。
「はっはっは!!皆様、今回は形だけの戴冠式に突き合わせてしまって申し訳ない!いやはや、アデルの奴が王様辞めたいなんて言い出すもんだから、私も驚きましたな!はっはっは!!」
年中笑ってるな、あの人。──────
───アデルさんが退位を望んだことで開かれた式は滞りなく進み、王位はバラクさんに移った。リュークとバラクさんが合流し、ご馳走を存分に頂きながら楽しい時間を過ごしていると、いつの間にか日は暮れて、町の灯りがいい感じになっていた。小休憩で夜風にあたっていると、狭い石階段をのぼってラウラが近づいてくる。
「あーあ。シオトのせいで王女じゃなくなっちゃった。」
「え、俺のせいなの!?」
「そうだよ。シオトのお説教聞いたから、立派なパパになるとか言って、王様の地位を簡単に譲っちゃった。人生ゲームじゃないのにね。」
「そうだったのか。バラクさんにはご祝儀五千ゴルドあげないとな。」
「ふふっなにそれっ。」
この数日間でいろんなことを話して、ラウラとアデルさんは、もうすっかり仲良し親子に戻ったみたいだ。
「それにしても、ラウラのために王位まで捨てれるんだ。もう立派な父親だろ。」
「そうだけど、ちょっと過保護じゃない?シオトたちと旅したいって口走っちゃったとき、お前より強くないとダメーって聞かなくって」
「・・・そうでなくっちゃな。・・・ラウラ、明日勝負しないか?闘って俺が勝ったら、君を連れて旅に出たい」
「・・・いいよ。でも私、手加減しないからね。」
「ああ!!」──────
───
「元国王様がなんの用だい。」
「国王じゃなくなったからヤケ酒しに来た。」
「うちは飲み屋じゃないんだがね。・・・今回だけだよ。」
「・・・・・・娘の事だが・・・今まで───」
「野暮ったいこと言うんじゃないよ。陰でうちを支援してたことも、あの子をずっと大切にしていることも、こちとら大体分かってんのさ。」
「・・・そうか。・・・うちのラウラが世話になったな。」
「あたしのところにいた時間の方が長いんだから、うちの子だろうよ。」
「・・・なんだと?」
「最近まで、カリンさーん!って甘えてきてたんだからね。」
「下手な真似をするな。あの子はもうちょっと口角がだな。こういう感じだ」
「いい年して何やってんだか。おじさんのくせに。」
「同い年くらいだろう。」
「ともあれ、あの子のことは私が一番詳しいんだからね。」
「ふんっありえんな。あの子はかくかくしかじかであんなにいい子なんだ。知らなかっただろう。」
「あんたこそ知らないでしょうよ。あの子はかくかくしかじかでねぇ」
カリンとアデルは、夜明けまでラウラの魅力を語り合ったのだった。
──────
「クシュンッ!!なんか生暖かい寒気が・・・。」
「生暖かい寒気・・・!?」




