14話 冷徹で残酷で自己中心的な王
「なぜ戦争にラウラを巻き込んだ!!」
「この国のためだ。」
「ラウラを閉じ込めたのは!!」
「この国のためだ!」
「なぜラウラにひどいことをするんだ!」
「この国のためだ!!無知な若造がっ!!」
「ラウラをちゃんと愛してやれよ!!」
「っ───!お前に、・・・何が分かるっ!!覇気突!」
初めて垣間見える王の怒りの表情が俺の身体を凍り付かせ、重たい一撃をもろに喰らう。
静かなる激怒、その瞳に宿る鋭い執念の正体が分からない。
「グッ──!!」
吹っ飛ばされた俺に、間髪入れずに連撃を叩き込んでくる。
「私が何のためらいもなく娘に嫌がらせをしていると、・・・そう思うのか!!!」
怒涛の連撃が速さを増していく。守るだけで精一杯だ。少しでも気を抜けば、即やられてしまう。
(一体何なんだ・・・このっ、重みは!!)
「違うならなんで!優しくしてやらないんだ!!」
その場で取り繕った言葉を、自分でも醜く感じる。俺のやっていることは、的外れなんじゃないのか・・・?
だが、俺は今止まる訳にはいかないはずなんだ・・・!ブレる切先に無念を乗せ、我武者羅に剣を振る───
「・・・浅く、軽いっ!!」
─────!!
「──ぐぅぅっ!!」
「・・・娘を頼むと、娘が好むこの国を頼むと、死にゆく妻が言ったのだ・・・最愛の妻が、そう言ったのだ!!戦火で娘の命が果てないように、剣の稽古をつけた!兵士長バラク=スラストと協力して、屈強な国を造った!ラウラが父のことで傷つかぬように、これからも私は父ではなく、冷徹で残酷で自己中心的な王でい続けるのだ・・・!!」
アデル王の闘志が輪郭を現す。その想いは俺が想像していたより遥かに重く、そして強いものだった。
「なん、だと・・・!自分の本心を殺して、ラウラのためだってのか・・・!」
「ラウラの閃光を使えば、犠牲を出さずに戦争に勝てるのだ。形だけで婚約すれば、娘を傷つけずに国を強くできるのだ。あの子にしてみれば、憎むべき王が勝手に動いているだけだからな!!!」
「・・・・・・・・・。」
「苦渋の剣!!」
剣で防ぎきれず、物凄い勢いで吹っ飛ばされる。
「──────がはっ!グッ、がああぁぁあ!」
国王の剣から放たれる気のようなものが心を蝕み、頭が割れそうだ。
「・・・・・・自らの苦悩の大きさに応じて相手の精神を攻撃する剣技だ。半端な思いでは立っていることもできんだろう。」
「くっっ、・・・あんたのこと、少し誤解してたよ。あんたはちゃんと王様やってんのかもしれない。・・・
・・・でも!だからこそ俺はあんたを倒す!!!犠牲強化!!」
自らの精神を削って、身体能力を高める。ちぎれそうな頭に更に負荷が掛かるが・・・
(知ったことかよ・・・!!)
「魔法だと!?それに、この状態でさらに精神自傷して、なぜおまえは立っていられる!!」
「助けになりたいと思った。ラウラと・・・あんたの!!行くぞ。風歩!!」
「なんだと!?」
吹っ飛びそうになる意識を強引に押しとどめ、無我夢中で剣を振る。
「ラウラは・・・あんたを愛している!!だから、あんたがとる行動一つ一つで、思い悩んで、傷ついているんだ!!」
「そんなはずはない!!」
「いやある!!彼女は、人を嫌いになれない奴なんだよ!そのうえ苦しくても自分一人で抱え込む、そういうやつなんだよ・・・!」
親子揃って、本当に不器用な人たちだ。
「だとしても、娘の身と国を守るために───」
「ラウラの母さんが何を欲しているのか、もう一度考えろよ!!ラウラの幸せを願ったんだろ!ラウラを傷つけてまで、あんたは何をやってるんだよ!!」
「だが私は、国を護らなければならないんだ!!」
本当に、頑固で自分勝手だ・・・・・・!
「こんのっ───分からず屋!!あんたが全責任を負えって、誰が言ったんだ!もうこの国は、あんたが護ってきたこの国は、住民みんなで支えていけるんだよ!!ラウラが好んだ人々は、自力でやっていけるんだよ!!あんたは黙って、父親やってりゃいいんだよおおおおお!!」
剣に意識を集中させながら、手当たり次第に魔法を放つ。
「おおおおらああああああ!!」
「ぐぬぅっ!」
アデルの最後の攻撃に備え、イメージした魔法を片っ端から剣に纏わせる。
「なんだ・・・その剣に・・・その目は!!」
複数の魔法が混ざり合って輝く剣と、光を捨てたような黒さを纏う剣が相対し、最後の一撃が交差した。
「剣技:苦しみの剣!!」
「我流!迷いを断ち切る魔法の剣ーーー!!!」
「「───ああああああっっ!!!」」
──────!!
・・・
・・・
「おまえは・・・何者なんだ。」
「通りすがりの・・・魔導剣士だ。」
俺はそう言って笑い、
「そうか。魔導剣士か。」
アデル王の優しい目を見てから、部屋を出た。




