11話 魔導剣士っス
「先輩は魔導士適性で、それ以外の職業にはなれないはずだったんス。」
え、ええええええええええええええええ!!??
「え、ええええええええええええええええ!!??」
思ったままに口が動いた。
「く、詳しく聞きたいところだが、今日は風呂はいって寝るか。疲れただろ」
「覗かないでくださいよ?」
「覗かないけど。・・・大丈夫か?」
「え、あ、すみません。あっでも!どっちが先入りますか!?そこは重要っスよ!」
「いや二つ作るけど。・・・え。もしかして嫌じゃないの?一緒に入ってもいい?」
「い、嫌っスよ!!」
「そ、そうか。嫌か。いやまあ、知ってたけどな。ハハ、ハ。」
大声での「嫌っスよ!!」が胸を刺し、俺は立っているのがやっとだった。
なんやかんやで寝る支度を済ませた俺たちはテントに入る。
「やっぱ、狭いな。」
「そう、っスね」
外でいいと言うと、アリスは「氷点下を下回るんスよ!?」と怒りながら中に入れてくれた。
展開的にはドキドキ必須なんだろうが、眠気と疲れで、アリスが寝やすいように端によることぐらいしか考えられなかった。
が、なぜかアリスがすり寄ってくる。努力が台無しじゃないか。背中同士がピッタリくっついている。
「先輩、お腹すいた。」
「明日のあさいっぱい作ってやるから。寝ろ」
「先輩、眠いっス。」
「いや寝ろよ。あと、場所余ってるならもうちょいそっち寄ってくれ。流石に寝れない」
流石にドキドキする、というのもある。
テントの天井(暗くてなんにも見えないが)をしばらく見つめる。
俺、少しだけ、強くなったよ───
俺は瞼を閉じた。
───で朝。
アリスが俺に抱き着いている。
確かに寒かったけど、これは倫理的にどうなんだ。
ぼんやりとそんなことを考えていると、彼女の眼が開く。
「「あ」」
お互いバッと離れようとしたが、俺は壁際だったので、アリスが飛びのいただけだった。
「ふぇ!?ふぁ、なんで私、あ、ああ!うああああ・・・」
顔を真っ赤にした彼女を見てから、再び目を閉じる。整理がつくまでそっとしておいてやろう。
・・・
「・・・先輩、お腹すきました!」
なかったことにする作戦のようだ。
「あ、ああ。言っとくが、上品なものは出せないからな。」
身支度をして、テントを出る。
「魔物を狩りに行く。肉は牛肉でいいか?」
「はい!付いていくっすよー!」
付いていくと言って引っ付いてきたアリスは、俺の顔を見て距離の近さを認識し、飛びのいて恥ずかしがっている。じゃあ最初からくっつくなよ。と照れ気味に思った。
「アリス、ちょっと無防備すぎないか?俺が悪い奴って可能性もあるだろ?」
「それはないっスよ。先輩のまわりの精霊見たら信頼できる人って一目でわかるっス。」
「そうなの?俺精霊に嫌われてると思ってたんだけど、ただのツンデレだったのか。ってか見えんの!?」
「見えるっス。マナの最大量でどのくらい見えるか変わるんスけど、私ほどの天才なら表情みたいなのも分かるっス。あ、剣の精霊多分キレてるっス。ツンデレなんて言うからっスよ。」
マナは生まれた瞬間から少しも変わらないので、俺にはずっと見えないのか。少し寂しいな。
「剣の精霊がなんかいやみたい。」と言っていたラウラも、結構マナ量が多いんだろう。
「天才って、主観的な方の?」
「客観的な方の天才っス!最大マナ量は魔術師ギルドで一番だったっス。すごいっスか?」
彼女は胸を張りフッと笑う。ドヤ顔というやつか。だが、彼女の実力は本物だ。
「マナ量がすごいのはわかったけど、それでもいっぱい練習したんだよな?生まれつきの才能に溺れないで頑張った所のほうが、すごいって思うよ、俺は。」
そう言うと、アリスは急に黙り込んで、下を向いてしまった。耳がすごい赤くなっている。
「そ、そういうこと、急に言わないでください・・・照れるっス。」
彼女がうつむいたままこぼす。すごいか聞かれてすごいって言っただけなんだが・・・。
にしてもアリスはすごいと思う。俺は才能を伸ばしもせず、惰眠を貪るように生きてきた。彼女には、俺にはない強さを感じる。
「あの牛を倒す。肉の部位を調節したいから、俺にやらせてくれ。」
俺は剣を構え、一度大きく振ってみる。
ブォンッと剣が空を切った。
できた!!剣が振れたぞ!!
振った時の感覚を思い出しつつ、何度も振って確認する。
「いける!!」
巨大牛に駆け寄り、わざと眼前に顔を出す。
「モオオオオオ!!」
「さあ、解体の時間だ!」
暴れだした牛に連撃を仕掛ける!
─ザシュッ──!─そこぉ!──!──モオオオオオ!!─、─おらあああ!!──!
いける!斬れる!倒せる!!
俺は体を縛っていた鎖から解き放たれたような感覚で、巨大牛を一方的にねじ伏せることに成功した。
「やった・・・やったぞ!!剣が振れるようになった!!アリス!君のおかげだ!!本当にありがとう!!!」
「うわぁああちょっと先輩!血まみれで近寄らないでください!あと興奮しすぎっス!」
「すぐに消えるから大丈夫だ!そんなことより剣!使えるようになったの!!いやー長かった。一年もたってないが結構ハードだったからな!」
「分かりましたって!・・・でも、ほんとに剣が使えるなんて。剣の精霊さんに怒られながら感覚でごり押すとか、滅茶苦茶っスよ……。」
牛肉を集め、拠点に戻る。今日の朝食はソラカムの実を使ったチリコンカンだ。アリスを木のスツールに座らせ、ナイフを取り出す。で、俺が料理しているのを意外そうに見ている彼女に声をかける。
「とにかくよかった。これで打倒王様一歩前進だ。あ、そういや、魔法って俺にも使えるの?」
「使えるっスよ。というか、魔導士の方は結構な逸材っス。感覚の鋭さは精霊とのコンタクトに直結するっスから。」
「でも俺、精霊とか全く見えないよ。」
「見えなくて普通っス。あ、自分が魔法お教えするっスよ!そしたら先輩は、史上初の『魔導剣士』っス!」
「ありがとう、よろしく頼む!」
アリスと握手をした俺は、日々の鍛錬に拍車をかけた。




