29.ジェロニモの苦悩
夜明け前の薄暗い町の中を 溜息を吐きながら歩く1人の男がいる。
「良かった、まだ飲んでてくれた」
ジェロニモは、アルス達がまだ酒盛りを続けているのを確認するとホッと胸をなでおろした。
アルスとシンの騒動を止め、その足で「親父」に騒音の原因を伝えるとともに、アルスと「アスペルデウス」との経緯について報告をしたのたが、、
「よくわからん!と、言うよりもだな。どうせ飲んどるなら此処へ連れて飲んかぃアホんだらめぃ、ちきしょー」
「親父」こと国王代理補佐のジョルジ・フリーマンに一喝されてしまい、その言葉を受けジェロニモはすぐさまアルス達を呼びに行こうとしたのだが、そうは問屋がおろさなかった。
「大体おまえはのぅ〜、、、、」
「から、こぅでのぅ、、、、、、、、、」
延々と、愚痴でも嫌味でも無いのだが酔っ払い特有の退屈な長話を延々と聞かされていたのだ。
「まぁ、このまま連れてくる話が流れりゃそれがいいか」などと考えたジェロニモは、ジョルジの話を真剣に聞いているフリをしながら華麗に聞き流している。
店のオーナーが間も無く閉店の時間という事を告げると、ようやくジョルジの独演会が終了し、ジェロニモは形式上の反省の弁を述べてその場を後にしようとした。
が、これまたそうは上手くいかない。
「じゃあ、宮殿で待っとるからよろしくのぅ」
ジェロニモが口を挟む間も無くジョルジは豪快な笑い声を上げて店を出て行った。
事の経緯を全て見ていたオーナーはジェロニモの肩をポンと叩き、ドンマイ。と言うような顔をし、すぐに店の片付けを始めている。
ジェロニモは観念した様子で肩を落としながら店を出て、アルス達がまだ飲み続けている事を祈りながら、アスペルデウスのアジトがあった場所へと向かうのであった。
「あー!ジェロニモさんらぁ、一緒にろもぉよぉ」
ジェロニモをいち早く発見したリナは、ヘベレケの酔っ払いですオーラ全開でジェロニモに声をかける。
「ったく、飲まなきゃやってられねーわ」
ジェロニモは頭をボリボリ掻きながらぽつりと呟き、一息ついたのち手を振ってアルス達に近づいて行く。
「しかし元気だな」
「いやー楽しくてついつい。あれ?また苦情でもきたか?」
「いや、苦情はきてない。まぁむしろまだ飲んでてくれてありがたい」
ジェロニモは席に着きアルスと言葉を交わす
「ありがたい?なんでだ?」
「まぁとりあえず一杯くれ」
ジェロニモはアルスが差し出した酒をグィッと飲み干し、コップを前に出し二杯目を要求する。
「お?いけるクチだな」
アルスが笑顔で酒を注いでいると
「実はな、親父が今から一緒に飲むぞって言い出しやがったんで、できればこれからきて欲しい」
言い終わると同時に酒も注ぎ終わったのでジェロニモは二杯目の酒も一気に飲み干した。
「おいおいおいおい!ちょっと待てよ!!今からって今からか!?」
アルスが返事をする間も無くシンが割って入る。
そりゃ呼び出されるとは思っていたけども、まさか今すぐと言われると思っていなかったシンは思わず動揺の色を見せる。
「そうだ。宮殿で待ってるってよ」
ジェロニモはそんなシンには目もくれずにアルスを真っ直ぐに見据えて答えた。
「まあ、、飲もうってんだから一緒に飲みゃいーんじゃん? 」
アルスはもはや何も考えてはいない。むしろ改めて呼び出されるより、飲みの席で話が住んだ方が楽だし、なるようになるだろう。と、のほほんとしたものである。
「え〜。はほ(楽)しいのに〜、うろ(動)くのー?、めんろう(面倒)だよぉ〜」
「あー、確かに遠いのは嫌だな。近いの?」
空気を今度は読まずにリナが口を挟み。
リナの発言を受けアルスも近くなきゃ嫌だ!と言う顔をしてしまっている。
「徒歩で15分てところだ」
ジェロニモにしてみれば、と、いうかこの世界の基準で言えばそう遠い距離ではないし、普通に歩いてくれる距離だろうと考えたジェロニモは正直に答えた。
、、、、のだが。
「え〜!!!」
「ちょっとたるいなぁ」
リナとアルスからは予想外の反応が返ってきたのだ。
「え?」
ジェロニモは思わず素でキョトンとしてしまった。
「諦めな、俺がこのちょっとの時間で感じたのは、この旦那は半端じゃなく面倒臭がりって事だ」
いつまでも動揺していてもしょうがないので、どうにでもなれと割り切ったシンが笑いながら答えた。
「あ、じゃあアレやってみるか?さっき話しに出てた空間転移魔法」
「は?」
キョトンとしているジェロニモに追い打ちをかけるようは発言がアルスから飛び出る。
こいつは何を言っているんだ。と思うジェロニモを置いて、アルスとリナは当然として、シンまでも一緒になって「いいねぇ」とはしゃいでいる。
「もう、、どうにでもしてくれ」
ジェロニモは考えることを放棄し、ボトルのまま酒を煽り始めるのであった。




