二十七話目
「俺たちは旅先でたまにかち合うことがある。
ほんとにたまたま、偶然だけどな。
で、その時は連絡先を交換したりするんだ。
まぁ、だいたいは掲示板での情報交換するからあんまり個人同士で連絡をとりあうことは少ないんだが。
なんかあった時に繋がってた方が安心だからさ」
まぁ、わかる気はする。
旅先で同郷の人をみると、安心するみたいなものだろう。
「で、これまた偶然にも今から二千年前の、この世界に来てたやつがいてな。
連絡がとれて、いろいろ話を聞けたんだ」
?????
その人何才??
「えっと、その知り合いの人も不老不死ってやつ??」
「違う違う。
俺たちと世界の時間の流れに差があるだけだ。
前にもスレのどっかで話題にしてたとおもうけど」
そういや、そんなこともあった気がする。
まぁ、とにかくスレ民や渡航者は不老不死ではないらしい。
しかしその理屈が通るなら、
「思ったんだけど、教祖も【渡航者】なんじゃ??」
思ったことをそのまま口に出した。
呆気なくスネークに否定されてしまう。
「それは無いな」
「なんで?」
「わかるから」
そういうものらしい。
渡航者は渡航者同士で通じ合うものがあるらしく、わかるらしいのだ。
それなら教祖は、スレ民でも渡航者でも無いのだろう。
では、なんなのだ??
「この世界って、エルフっていたよな?」
エルフは長命種族の代表格だ。
「まさかスネークは、教祖はエルフだったかもっていいたいのか??」
「いや?
エルフの血が入ってたら、ワンチャンめっちゃ長生きな人間種族もいそうだなーって思っただけ」
「いるけど、それは不老長寿で不死ではないだろ」
俺のツッコミにスネークは首肯する。
「でも、寿命が短いほかの種族からすれば、歳とらずに長生きしてるやつなんて長寿か不死かなんて見分けつかないだろ」
それはたしかにそうだ。
「で、この話題はどこに行き着くんだ??」
正直なところ、火事で教祖と一部ではあるが幹部が死亡したのならこれ以上俺が頑張る必要はないのだ。
「スレ主、お前さ」
「うん?」
「まさか教祖も死んだし、これで終わりー、なんて思ってないだろうな??」
「思ってるけど」
おそらく、黒幕だったであろう教祖が火事で死んだのなら、俺のループ生活はこれでおしまい。
あとはノア殿下がグレたりしないように、しっかり手綱を握って天寿を全うするだけだ。
「いやいやいや?
んなわけないだろ」
「へ?」
「不老不死とまで言われてる黒幕が、こんなんで本当に死んだと思うか?
そもそも火事の原因は??
火事のタイミングの良さはどう説明するんだよ??」
「それはそうだけど、でも遺体があったのなら死んだんだろ」
「その遺体、どうして教祖のものだとわかったとおもう??」
言われて、気づく。
そういやどうしてわかったのだろう??
焼死体なのだから、よほど生焼けでもない限り本人かどうかなんてわからないはずだ。
「え、なにか本人ってわかる特徴があったとか??」
「まぁ、そんなとこだ」
詳しく聞くと、なんでも教祖だけ身につける装飾品があるらしい。
それを身につけていた遺体があったので、教祖だと断定したようだ。
「まぁ、この世界に【鑑定】魔法とかあれば良かったんだろうが。
無いみたいだしな」
ほかの世界では、見ただけで対象の情報を見抜く魔法があるらしい。
なにそれ便利すぎ。
そこまで会話して、ふと気づく。
「そういえばリリってどうなったか知ってるか??」
「死んだ」
「火事で??」
「いや、違う」
昨日、リリだけは皇太子に薬物を盛った疑いですぐに捕まったとのこと。
しかし、昨夜の火事がおこったと見られる時間に彼女は自らの歯に仕込んでいた毒を飲んで死亡したとのことだ。
時間帯が時間帯だったこともあり、取り調べを翌日に予定していたことが仇となったのだ。
歴史に名を残せる、と喜んでいた少女のあっけない最期だ。
歴史の表舞台に立つことすらできずに終わるとは。
けれど、だ。
よくわからない記述の再現という、馬鹿げたことをとりあえず防げてはいるはずだ。
「しかし、なんで教祖は【神聖書】の記述の再現にこだわってるんだろうか?」
教祖の不老不死のこともだが、行動も不思議だ。
なぜ、そんなことにこだわってるのか?
疑問をそのまま口にしてみたが、答えは出ない。
「考察厨にでも聞いてみればいいんじゃね??」
俺の疑問への答えではなかったが、スネークはそう言った。
たしかに、それはその通りだ。
俺は掲示板へ書き込みを行う。
はたして考察厨から返ってきた書き込みはというと、
――――――
111:考察厨
いや、知らんがな
俺、青タヌキでも
チャッピーでもないし
――――――
青タヌキ??
チャッピー??
なんの事だろう??
と、情報が浮かんできた。
うん、なんとなくわかった。
――――――
112:考察厨
現状、教祖は死んだならいいんじゃないか??
不老不死らしいしなぁ
仮に生きてたとしても、だ
わざわざ死の偽装と、活動拠点まで燃やしてるんだ
これ、調べられたらなにか不味いことがあったからだろ?
言わば、証拠隠滅だよ
そこまでのことしたんだ、他国に行くか
少なくともしばらくは大人しくしてるんじゃね?
113:スレ主
でも、なんで【神聖書】とやらの記述の再現なんてしてたんだろ??
114:考察厨
>>113
それこそ【知らんがな】だ
なにか本人にだけ、こだわる理由があるんだろ
めっちゃ闇を感じるが
115:名無しの転生者
>>114
>めっちゃ闇を感じるが
それな( ´-ω-)σ
116:考察厨
まぁ、一区切り着いたってことでいいんでないか?
油断はできないだろうが
――――――
一区切り、か。
本当についたのだろうか??
――――――
120:スレ主
区切り、本当についたとおもうか??
121:考察厨
さてね
ただ、さっきも書き込んだように
カルト教団の拠点だった施設は燃えたんだ
教祖の死が偽装だったとしても
再起するには、さすがにすぐには動かないとおもうけどなぁ
122:スレ主
>>121
質問を変える
もし、教祖が次、動くとしたらいつだと思う??
123:考察厨
知るか
124:スレ主
そこをなんとか、もう一声!!
125:考察厨
>>124
ガチレスすると
マジでわからんのよ
だって、【神聖書】読んだことないし、俺
【神聖書】に載ってる話を教祖が再現してるのなら
まず、【神聖書】を読んでみないことには
……いや、まてよ??
もしかして、そういうことか??
126:スレ主
???
どしたの??
127:考察厨
教会に火をつけたの、もしかして【神聖書】を燃やすためだったのかもな
128:スレ主
は??
129:名無しの転生者
どゆこと??
130:考察厨
証拠隠滅のひとつで【神聖書】を燃やしたかもってこと
なにせ、ガチで千年単位で【神聖書】の記述を再現してるんだ
証拠隠滅するほどの何かが書かれているのかもな
131:スレ主
証拠隠滅するほどのなにかって、なに??
132:考察厨
さて、そこまでは┐(´д`)┌
――――――
結局、結論は『教祖はしばらく大人しくしてんじゃね??』となった。
まぁ、動き出したらすぐにわかるだろう。
教祖の目的は、【神聖書】の記述を再現して、ノア殿下に大陸を統一させ魔王にすることなのだから。
彼のそばにいれば、そのうちまた【死】というちょっかいが俺や周囲に降り掛かってくるはずだ。
いつか来るだろう、その時に備えよう。
「明日から鍛錬と勉強時間、増やすかぁ」
そんな俺の呟きを横で聞いていたスネークが、少し呆れているように見えた。
ふと気づいて、スネークへ言葉を投げる。
「そういえば、スネークは【神聖書】読んでたよな??
なんか、重要そうな記載とかそういうのなかったかわからん??」
「えー??
そんな1字1句丹念に読んだ訳じゃないし。
あったとしても気づかなかったなぁ」
まぁ、そうだろう。
とりあえず、スネークは来年の【建国祭】まではこの国にいるらしい。
事が起こるまでは、あちこちブラブラしてると言って去っていった。




