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モノクロの世界で、愛を語る  作者: 一色 サラ


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06

陽菜に『昨日は、あの後、紺来くんとはどうだった?』と打った。いつものことだけど、”昨日は、紺来と一緒に居たの?” ”ちゃんと1人で家に帰れた"とも書けなかった。どこか曖昧なニュアンスになってしまう。

 

「なんかあったら、連絡して」

そう言って、8時を少し過ぎて蒼馬は美術教師として勤める高校に向かって行った。

 杏子も、来年の4月からは音楽教師として、高校に勤める予定だ。時計とみると、もうすぐ9時になる。10時くらいに大学に出て行かないといけない。陽菜に連絡して1時間は経つが、既読すらなっていなかった。昼過ぎに『来週の18日の夜って、空いてる?』と陽菜からLINEが届いていた。小学生に教えているピアノ教室のバイトもないので、『了解』と返答を送った。


「お帰り。陽菜ちゃんから連絡きた?」

「来たよ。18日に会うことになった」

「そうなんだ。」

何か腑に落ちない様子の蒼馬。

「どうしたの?何かあった?」

「紺来から『あの女、使えない』って連絡が来たわ。ひどいよな。」

 ため息が漏らした。

「なにそれ」

「さあね…たぶん、何かあったのだろうけど、わざわざ聞く必要性あるかな」

 なぜか声のトーンが下がっていく。27歳にもなって、何を言っているのだろう。でも陽菜のことを使えない女っていうのは酷いけど、都合のいい女にはならなかったことは凄いと思う。男で痛い目には合ってほしくない。

「本当に、陽菜に謝ってほしいわ」

「俺が紺来に言った方がいいってこと?」

 直接、言えないことは分かっている。けど、そんなに紺来の目を気にしてることも不思議だ。

「蒼馬、女々しいよ。」

「ごめん、着替えてくるわ」

 蒼馬は寝室へと消えて行った。紺来との縁を切ってほしいなと最近、特に思うが、蒼馬は紺来から連絡が来るとすぐに返事をしてる。何か弱みでも握られているのだろうか。利用されたくないくせに、気にもしている蒼馬に苛立ちが募る。


12月半ばを過ぎた18日は、さらに心まで冷えてくる。今日は2人で食事して、結婚のことも言う。また、蒼馬を連れてくると、なぜか紺来が来そうな気がして、2人で会うと蒼馬に言った。

「お疲れ」

 軽快に陽菜がやって来た。駅前にあるイタリアンに入った。

「先週のあと、また紺来くんと会ってるの?」と単刀直入に聞いてみた。気になってしまって、あれこれ話すより早かった。

「ああ、紺来くん??碓井さんのことね。うん、まあ、ねえ」

「そうなんだ」

「告白されただけど、それを断りに行った。もう会わない」

「告白って付き合ってほしいって紺来くんに言われたの?」

「そう、その日初めて会った人間に言うかなとは思ったし その日、家に連れ込むは風呂に入るわで、思ったよ。この男って、セフレがほしいだなって。なんか謎めいているし、女性にはモテるのだろうけど、どこか誘い方が安ぽい感じがしたんだよね。メッセージとかで断れてばいいと思っただけど、会って断りたかったんだよね」

「会ってて危険だよ。男の人って力強いし」

「知ってる。でも碓井さんって本当に面倒だよね。『家まで来て』って言われて、さすがに杏子の言うと通り危ないと思ったから、向こうの仕事帰りに会うことにして、駅のカフェで断った。断られると思っていなかったのか、すごい顔してた」

 陽菜が嬉しい顔になってよかった。紺来に利用されなくてよかったし、少し強くなった気もした。その話を聞くと、紺来はどこか人を利用したがる性質があるのは分かる気がする。女性を思い通りに動かせたいのだろう。杏子に言い寄ったのは紺来が蒼馬の恋人である杏子を使って、蒼馬を困らせたいんだと最初は思っていたけど、実際は話しかけられる女性すべてに言い寄っているだろう。本人は上手く行っている気がしているのだろうが、陽菜が言う安ぽさは本当にある気がする。蒼馬も利用されているのだろうけど、女性と違って気づかないものなのかな。

「あのさ、陽菜、私、蒼馬と結婚することになったんだ」

「えっそうなんだ」

「どうしたの?」

「2人が結婚すること碓井さんから聞いた」

「紺来くんが言ったの?」

「うん」

 紺来って人は本当に不愉快。

「おめでとう。2月14日に入籍するんでしょう!?」

「なんで2月14日って知ってんの?」

「ああ、碓井さんが『誕生日と一緒だから』って言ってよ。」

「ふ~ん」

「結婚式はいつにするの?」

「うん、その2月15日にするつもり、また招待状送るね」

「うん、待ってる」

 陽菜が話を逸らしてくれてよかったと思った。杏子と蒼馬の結婚に嫌な思いがないことだけが救いだ。たぶん紺来くんから聞いた感じは私たちが非があるようなニュアンスだったのだろうが、それについて追及しても言い訳になりそうだ。陽菜にも幸せになってほしい。ただ、私たちの関係をギクシャクさせる紺来に苛立ちが募って、仕方がない。


「お帰り」

蒼馬はソファで、不機嫌そうにこちらを見た。

「ただいま、何?」

「紺来がキレてるんだよね」

「ねえ、今さらなんだけど、紺来くんとの関係終わらせるつもりとかないの?」

「なんで急に?」

「今日、陽菜から結婚のこと紺来くんから聞いたって言われたのちょっと、引いただよね」

「でも、あいつには俺が必要んで」

 蒼馬はスマホに目をやった。

「ねえ、蒼馬にとって紺来くんってどんな人?」

「えー、ただの友達だよ。なんでいまさら、聞くの?」

「蒼馬が必要って言うから。でも紺来くんって、あちらこちらにお金を貸してって言い振り回して

貸してくれる人を探しているだけで、その人は蒼馬でじゃなくてもいいでしょう」

「えっ、それは違う」

 そう言いながら、蒼馬の声は落ちていく。

「そういうこと、私以外にも他の人からもそんなこと言われたんでしょう。」

「ああ」

 蒼馬はさらに落ち込んでいく。誰かに必要とされるのは大切でけど、利用されることではない。そこに思いやりはない。紺来がなんて居なくてもいい、杏子は蒼馬を失いたくない。白黒が混ざるように、困らせたくない人を困らせて、杏子は自分の愛を押し付けて、相手の気持ちを確かめたくなる。

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